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今回は、スタートアップを目指す起業家にとって重要なスキルとなる「ピッチ」について、グローバルに展開するスタートアップ・アクセラレータFounder Instituteが紹介する方法論を紹介します。
Founder Institute(FI)は2009年にシリコンバレーで立ち上げられた、起業家のスタートアップ立ち上げを支援するグローバルなアクセラレータです。古田弁護士がディレクターを務めるFI東京チャプターは、現在2015春セメスターを開講中です。
≪今回の紹介テーマ≫
1 「お手軽1分間スタートアップ・ピッチ・フォーミュラ」の紹介
テキサス州ダラスの弁護士であるJoe Garzaが、"Mindchemy"というブログで示された1分間ピッチのテンプレートを紹介しています。1分間で自分の会社をアピールする方にとって有益なものと思われますので、紹介します(柳田)。
2 スタートアップ・ピッチに使える「SMARTメソッド」ストーリーテリングの紹介
FIディレクターのBen Larsonが考案したスタートアップ・ピッチに使えるストーリーテリングの方法「SMARTメソッド」を紹介します(木村)。
1 「お手軽1分間スタートアップ・ピッチ・フォーミュラ」の紹介
以下の「お手軽1分間スタートアップ・ピッチ・フォーミュラ」は、もとは"Mindchemy"というブログで公表されたものです。これは多くの優れたピッチから技術を盗み、またエレベーターピッチにおける知恵を集めて定式化したものだということです。
スタートアップ・ピッチは、大多数の起業家にとって、難しいタスクと思われるかもしれません。しかし有効にピッチを行うことは実はシンプルなことだと、筆者は指摘しています。
FIのディレクターも、このフォーミュラは「どんな起業家でも、自社をクリアにかつインパクトをもって表現できる単純な方法論」であると評しています。
以下「お手軽1分間スタートアップ・ピッチ・フォーミュラ」を紹介します。
※【 】内は適宜自社にあてはめて補充して下さい。
あなたは【あるカテゴリーの顧客】が【大きな苦労】を経験していることについて知っていましたか?これは、国内だけでも【市場規模(数十億ドル)】の機会損失(ビジネスチャンス)となります。
【製品・サービス名】は【ある価値提案】のための【あるカテゴリーの製品・サービス】です。他の製品・サービスと異なり、私たちは、【カギとなる差別化要因】を持っています。
当チームは【信頼できる経歴を持つチームメンバー】が参加しています。
そして、私たちは【ビジネスモデル】によって利益を生みます。
本質として、私たちは【類似の製品・サービスカテゴリー】における【類似の有名なもの】です。
そして私たちのビジョンは、【どのように世界を変えていくか?なぜ変えたいのか?】ということです。
私たちは既に【実行済みのマイルストーン】を実行しています。
そして【誘い文句!】ですので、あなたにも関係するに違いありません。
記事では、このフォーミュラを使ったピッチとして2つの具体例が挙げられています。
1つは「Startups on Global Stage」という世界的規模のスタートアップを志す者と投資者・協力者を結びつけるマッチングサービスについてです。もう1つは「Clearshore」というプエルトリコ沿岸にある研究開発のアウトソーシング企業についてです。どのようにフォーミュラを活用するのか、参考になります。
このフォーミュラの重要なポイントは、以下のとおりです。
・そのビジネスを追求するためにぴったりのチームであることを説明すること
・スピード感をもってマイルストーンを達成できると信じさせること
・ピッチを印象付けるキャッチフレーズを使うこと(例「ファウンダーにとってのアメリカン・アイドル」、「プエルトリコを、アメリカの研究開発市場におけるインドに」)
・聴衆一人ひとりに訴えかけ、ビジョンに共感してもらうよう誘うこと
この「お手軽1分間スタートアップ・ピッチ・フォーミュラ」を用いて、あなたの1分ピッチを磨いてみて下さい。
〈参考〉
The One Minute Startup Pitch Template
http://fi.co/posts/16281
2 スタートアップ・ピッチに使える「SMARTメソッド」ストーリーテリングの紹介
FIディレクターのBen Larsonが、"Startuptelling:Startup Storytelling the SMART Way"の記事の中で、スタートアップ・ピッチに使えるストーリーテリングの方法「SMARTメソッド」を提唱しています。
世界各国の起業家育成に取り組んできた彼は、アーリーステージの起業家の多くが、起業家にとって必要な「ストーリーを語る能力」が欠けていると指摘します。ビジネスピッチでは、起業家は「自分がどんなビジネスをしているか」を話すだけでは足りないのです。
起業家はどのようにして、自身のストーリーを真に伝えることができるのでしょうか?そのヒントとなるフレームワークが、彼の提唱するSMARTメソッドによるストーリーテリングです。
S:SET THE STAGE (舞台をセッティングせよ)
M:MANAGE EXPECTATIONS (予想をコントロールせよ)
A:ANSWER YOUR QUESTIONS (問いに答えよ)
R:REPEAT THE PROCESS (繰り返せ)
T:TAKE THE ADVANTAGE (アドバンテージを生かせ)
S:SET THE STAGE (舞台をセッティングせよ)
まず、聴衆に、あなたのストーリーを聞く準備をさせることが大切です。あなたが想定している状況、困難な課題を抱えている者の立場、提案するサービスの市場規模。これから語るストーリーの前提となる舞台をセッティングし、そこに聴衆を没入させ、感情移入させ、共感させます。
M:MANAGE EXPECTATIONS (予想をコントロールせよ)
次に、あなたが聴衆に投げかける情報は、聴衆の予想をコントロールするものでなければなりません。例えば、ピッチで用いるスライドは、問題提起→解決策→達成手段(プロダクト)の順に並べるべきです。つまり現在のスライド内容から聴衆が抱くだろう疑問に対して、次のスライド内容が回答を与えているように、聴衆に与える情報を適切に配置して、聴衆の疑問をリードするのです。
A:ANSWER YOUR QUESTIONS (問いに答えよ)
聴衆に抱かせた疑問に対して答えを提示します。答えは、できるかぎりシンプルなものにすべきです。
R:REPEAT THE PROCESS (繰り返せ)
情報を示し、疑問を埋め込み、そして疑問に答える。このプロセスを繰り返してください。
T:TAKE THE ADVANTAGE (アドバンテージを生かせ)
ここまでのメソッドが功を奏していれば、この時点であなたは聴衆との関係で有利な地位を獲得できていると思います。ピッチの結論は、シンプルに、自信たっぷりに、力強く締めましょう。
そして聴衆を巻き込んでいきましょう。投資家には投資を求めましょう。顧客にはプロダクトを購入してもらいましょう。共感してくれた人をチームメンバーに誘いましょう。
以上が、SMARTメソッドによるストーリーテリングです。次回のビジネスピッチに向けて、参考にされてみてはいかがでしょうか。
〈参考〉
Startuptelling:
Startup Storytelling the SMART Way