セミナー「会社を守る契約書の作り方」12月18日開催
契約書に関して実務上問題になりやすい論点を解説し、皆様の疑問点に答えます。
申込および詳細 http://www.seminars.jp/s/119687
1 IT技術者派遣会社における労働者派遣法改正の対応について
来年の通常国会において成立が予想される改正労働者派遣法について、IT技術者(プログラマー等)派遣元企業における影響と、改正法への対応について解説します。
2 ジェフグルメカード対ぐるなびの裁判例の紹介
「全国共通お食事券」という語のみでは自他識別標識としての機能を果たし得ないと判断した裁判例(知財高裁平成26年10月30日判決)を紹介します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 IT技術者派遣会社における労働者派遣法改正の対応について
今秋の臨時国会での成立および平成27年4月1日の施行が予定されていた労働者派遣法改正案は、平成26年11月21日、衆議院の解散により廃案になりましたが、引き続き来年の通常国会における成立が予想されます。そこで、今回は改正法により大きな影響を受けることが予想されるIT技術者(プログラマー等)派遣元企業にフォーカスを当て、その対応を含め解説します。
(1)改正労働者派遣法によるIT技術者派遣元企業への影響
労働者派遣法改正案のポイントは大きく2点あり、1点目は特定労働者派遣事業(届出制)を廃止して全て許可制とすること、2点目はいわゆる専門26業務の期間制限の例外を廃止して個人単位(上限3年)および事業所単位(原則3年。更新可)の期間制限を設けることです。
中小規模のIT技術者派遣元企業は、特定派遣として届出のみを行い、かついわゆる専門26業務にあたることから、改正により上記2点に対応すべきことになりそうです。
具体的には、1点目の許可基準については、特に以下の財産的基礎に関する許可基準をクリアする必要が生じます。
・基準資産額(≒純資産)が、2000万円×派遣先の事業所数の額以上であること
・基準資産額が、負債総額の1/7以上であること
・自己名義の現金・預金の額が、1500万円×派遣先の事業所数の額以上であること
また、改正により、派遣労働者のキャリアアップ推進のための措置を講じることが義務付けられると見込みです。
2点目の期間制限については、システムの開発・保守が派遣労働者に依存するような場合に対応が困難となること、派遣労働者にノウハウが蓄積されなくなることが想定されます。
(2)改正労働者派遣法への対応
改正労働者派遣法には、経過措置がとられることが想定されます。具体的には、特定派遣については、3年間はこれまで通りの運用を認め、小規模派遣会社には一定期間の配慮措置(財産的基礎に関する許可基準の緩和など)を講じることが想定されます。また、派遣期間制限については、施行日前の派遣労働者の当該派遣には適用されないことが想定されます。
これにより、IT技術者派遣元企業が直ちに改正法の義務を果たさなければならないという事態は生じないと思われますが、早くとも3年後には上記改正点に対応しなければならないことを意識した体制整備が必要となりそうです。
たとえば、労働者派遣法の適用が及ばないようにするため、これまでの派遣先会社との間の契約を、派遣契約から(準)委任型の業務委託契約に切り替え、これに伴い適切な指揮命令体制を整えておくことが考えられます。
また、財産的基礎に関する許可基準をクリアするために、同業他社との経営統合が増加するという見方もあります。
派遣受入期間制限については、「無期雇用の派遣労働者」「有期プロジェクト業務」などについては例外があるため、このような派遣形態で業務継続・移行が可能かを検討することが考えられます(柳田)。
参考:
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(平成26年9月29日提出)(厚労省HP)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/187.html
労働者派遣制度の見直し案に関するQ&A(厚労省HP)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000040625.html
「労働者派遣事業を適正に実施するために―許可・更新等手続マニュアル―」(厚労省HP)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai06/dl/manual_all.pdf
2 ジェフグルメカード対ぐるなびの裁判例の紹介
原告である株式会社ジェフグルメカードは外食産業の業界団体である一般社団法人日本フードサービス協会などにより平成4年8月に設立された会社で、設立以後19年間にわたって、日本で唯一「全国共通お食事券」を名乗る食事券「ジェフグルメカード 全国共通お食事券」を発行してきました。株式会社ぐるなびが平成23年9月に「ぐるなびギフトカード 全国共通お食事券」を販売開始したところ、ジェフ社がぐるなびに対して「全国共通お食事券」という標章それ自体に識別力があり、ぐるなび発行の食事券により混同が生じているものであるから、不正競争防止法2条1項1号、2号又は13号の不正競争行為があると主張して、1000万円の損害賠償請求及び差止請求を求めたのが本件です。
第一審も控訴審も概ね似たような理由でジェフ社の請求を棄却しました。知財高裁によれば、「全国共通」は「全国で共通して」程度の意味と解されるし、「お食事券」も社会通念上「取扱店で利用できる食事券」程度の意味と解されるから、「全国共通お食事券」は取引者及び需要者からみると「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」程度の意味で認識される語であり、その商品の自他識別標識としての機能を果たし得ないとしています。そして、「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」が併記されている表示を見たときには「全国共通お食事券」とは原告商品の記述的、説明的な表示であり、「ジェフグルメカード」の方が原告商品の出所を示すものと認識すると認められると判示しました。そうだとすれば、原告の商品等表示は「ジェフグルメカード 全国共通お食事券」と考えるべきであり、被告の商品等表示である「ぐるなびギフトカード 全国共通お食事券」と対比しても、外観・称呼・観念において全て異なり、類似しているとは言えないとして、ジェフ社の請求を退けました。
本件は「食事券名称まね事件」として話題になっていました。「全国共通お食事券」に似た名称を使用している金券として「全国共通商品券」とか「全国共通ゆうえんち券」などがありますが、このような一般的な名称のみで、どこの会社が発行していると一般消費者等の多くが認識するケースは稀なのだろうと思われますので、裁判所の判断は常識的な判断であったと思われます(鈴木俊)。
参考:
不正競争防止法2条1項1号、2号、13号
知財高裁平成26年10月30日判決(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/594/084594_hanrei.pdf
東京地裁平成26年1月24日判決(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/965/083965_hanrei.pdf
3 弁護士Blog情報
行動観察からのヒント(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/11/post-61.html
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