1 長期間登記手続をしていない会社を国が解散させる整理作業とは?
今年11月から行われる休眠会社の整理作業について紹介します。会社登記を放置している方は要チェックです。
2 検索サイトに検索結果の削除を命じた裁判例の紹介
検索サイトで自分の名前を検索すると犯罪に関わっているかのような検索結果が表示されることがプライバシー侵害にあたるとして、検索結果の削除を請求した仮処分申立が認められた裁判例(東京地裁平成26年10月9日決定)を紹介します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 長期間登記手続をしていない会社を国が解散させる整理作業とは?
「休眠会社」については、法律上一定の手続により、国が職権で解散させることができます(会社法472条)が、今年11月、12年ぶりに休眠会社のみなし解散手続(休眠会社の整理作業)が行われるため、その概要を紹介します。
(1)「休眠会社」とは
最後の登記から12年を経過している株式会社をいいます。有限会社は含まれません。今回は、平成14年11月17日以降に登記がされていない会社が対象になります。なお、税務上いわれる「休眠」とは意味が異なります。
以下の点にご注意ください。
・期間中、実際に営業活動をしていたか否かは無関係です。
・期間中、会社の登記事項証明書や印鑑証明書の交付を受けていたか否かも無関係です。
(2)官報公告及び登記所からの通知
平成26年11月17日、官報にて、休眠会社は2か月以内に届出等をしなければ解散したものとみなされる旨の公告が行われます。
そして、休眠会社に対しては、管轄登記所から通知が送られます。
実際は本店を移転しているが登記をしていなかったこと等により、この通知を受け取れない場合がありますが、この場合でもみなし解散の手続が進みますので、ご注意ください。
(3)「まだ事業を廃止していない」旨の届出等をする必要
事業継続を望む会社は、平成27年1月19日までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を郵送または持参にて登記所に提出する必要があります。
届出に記載する事項は以下のとおりです。管轄登記所からの通知を参考にしてください。
・会社の名称及び本店住所、代表者の氏名及び住所
・代表者印
・まだ事業を廃止していない旨
・届出年月日
・登記所の表示
なお、届出ではなく、休眠会社について役員変更等の登記を行うことによっても、みなし解散を回避できます。
(4)みなし解散及び後の継続手続について
休眠会社が(3)の届出等を行わなかった場合、平成27年1月20日付で解散したものとみなされ、登記官が職権で解散登記をすることとなります。
ただし、みなし解散の登記後3年以内(平成30年1月19日まで)に限り、株主総会の特別決議によって、会社を継続することができます。この場合、決議から2週間以内に、継続登記の申請をする必要があります。
"眠っている会社"をお持ちの方は、ご注意ください(柳田)。
※なお、休眠一般法人(一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人)についても同様に、整理作業が実施されます(一般法人法149条、203条)。
参考:
「休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施について」(法務省HP)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00082.html
2 検索サイトに検索結果の削除を命じた裁判例の紹介
本件は、ある男性がインターネット検索サイトGoogleで自己の名前を検索したところ、自己が犯罪に関わっているかのような検索結果が表示されたことから、その検索結果の削除を求めた事件です。男性は、そのような検索結果が表示されることにより自己の現在の生活が脅かされると主張し、Google社に対して検索結果に表示されるウェブページの表題と、その下に表示されるウェブページの内容の要旨部分の削除を求めました。
Google社側は検索結果の削除義務はないと争いましたが、東京地裁は、「検索結果から『男性は素行が不適切な人物』との印象を与え、実害も受けた」と認定し、検索結果の一部について削除を命じる仮処分決定を出しました。
個人の名誉を毀損するような情報がウェブページ上に掲載されている場合に、個々のウェブページの管理者の責任とは別に、検索サイトが検索結果表示の差止義務や削除義務を負うかという問題は、近年、多くの訴訟にて争点となっています。申立人らが検索サイトに削除請求を行う背景には、ウェブページの管理者が不明、サーバーが国外にあるといった理由でウェブページ管理者に対し削除請求ができないという事情や、膨大な数の記事が掲載されているためにひとつずつ対処していったのでは手間がかかりすぎるといった事情があります。本件は、検索サイトに対して削除義務を認めた国内初の決定とみられ、インターネット上での名誉毀損に対する新たな対策となりえます。
国内の過去の裁判例は、検索サイトに対し、検索結果の削除義務を認めることに否定的でした。東京地裁平成22年2月18日判決は、ウェブページ上に重大な名誉毀損表現が掲載されている場合で、かつ検索サイト側がそれを認識し放置している場合に限って、削除義務が生じると判示しました。また東京地裁平成23年12月21日判決は、ウェブページ上の「表示の違法性の程度が強度で社会通念上到底容認できないものであることが当該ウェブページ自体から明らかである場合に限」って削除請求が認められると判示しました。削除が認められる場合を極めて限定的に解釈しており、結論としていずれも削除請求は棄却されています。検索サイトが現代社会において重要な機能を有していること、検索サイトのリンクを削除させることが情報発信・受領の機会を相当狭めてしまうことなど、表現の自由に配慮した判決理由となっています。
一方、欧州連合(EU)の最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は、平成26年5月13日、検索サイトに対し、名前の検索結果の一部を削除するよう命じる判決を出しました。これは、申立人が過去に差押えを受けた事実に関する情報の削除を認めたもので、「忘れられる権利」を認めた判決として注目を集めましたが、同時にこの判決は、ウェブページの管理者のみならず、検索サイト自体が削除義務を負うことを判示している点でも注目されます。同裁判所は、検索サイトがインターネット上の個人情報をつなぎ合わせ検索結果として表示することにより深刻なプライバシー侵害を引き起こす可能性があることから、他のインターネットユーザーが情報にアクセスすることによって得られる利益に配慮しつつも、検索サイト自体に削除義務を負わせています。
欧州司法裁判所の判決が本決定に影響を与えた可能性はあると思われます。しかし、同じく欧州司法裁判所の判決後に出された京都地裁平成26年8月7日判決は、自己の名前を検索して表示される検索結果に過去の犯罪に関する事実が含まれるとして検索結果の表示差止めを求めた事案において、そもそも機械的に表示される検索結果の表示は名誉毀損にあたらないと判示して請求を棄却しています。検索サイトの表示差止め・削除請求をめぐる問題については、今後も下級審での判断が分かれることが予想されます(木村)。
参考:
東京地裁平成22年2月18日判決
東京地裁平成23年12月21日判決
欧州司法裁判所平成26年5月13日判決
京都地裁平成26年8月7日判決
東京地裁平成26年10月9日決定
3 弁護士Blog情報
ブランディングとマーケティング(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/10/post-56.html
記事に関するご意見やご質問がありましたら、Blogの「Comments」欄 https://www.clairlaw.jp/newsletter/ にご記入下さい。当事務所の弁護士がコメントさせて頂きます。みなさんのご意見・ご質問をお待ちしています。