1 株主総会の「議題」と「議案」とは?
株主総会に取締役解任を諮る場合、招集通知には目的事項として解任対象者の氏名の記載が必要だとした裁判例について紹介します。
2 グループ会社間融資に関する貸金業規制の緩和について
平成26年4月1日に施行された改正貸金業法施行令等により、グループ会社間や合弁会社に対する融資が一定の範囲で自由化されています。グループ内の資金調達コストの削減に寄与する内容ですので、その概要について説明します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 株主総会の「議題」と「議案」とは?
会社法は、株主総会の招集通知には「総会の目的である事項」を定めなければならないとしており(298条1項2号)、「総会の目的である事項」とは「議題」であると解されています。
取締役選任を株主総会の目的とする場合、招集通知には「議題」として、「取締役〇名選任の件」と記載し、候補者となる個々の取締役の氏名の記載は「議案」と解されています。
このように解釈されているので、「議題」として、「取締役〇名選任の件」として「候補者A、B、C」が上程されていれば、株主は「候補者甲、乙、丙」の選任議案の動議をだすことができ(304条)、事前に少数株主権に基づいて議題を提案しておく必要はありません(302条)(注)。
それでは解任のときも「取締役〇名解任の件」という記載で足りるでしょうか?
裁判所は、解任取締役の氏名の記載のない株主総会招集通知は目的事項の記載を欠くか否かが争われたケースにおいて、「取締役の解任は、必然的に、特定の取締役についての決議となるから(たとえ取締役全員を解任する場合であっても、解任対象となる取締役が特定されていることは変わりがない。)、特段の事情がない限り、あらかじめ対象となる取締役を明示しておく必要があるというべきである」と述べ、招集手続の法令違反があると判断しました。
何が「議題」で何が「議案」なのか?は細かいことのように思われるかもしれませんが、実務的には総会決議の取消に繋がる可能性もある論点であることは覚えておきましょう(古田)。
注:議決権行使書面を利用する場合などでは議案の概要の記載が求められます(会社法298条1項5号、325条、会社法施行規則63条7号、95条1号)。
参考:名古屋高裁平成25年6月10日決定
(株主総会決議効力停止仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件)
2 グループ会社間融資に関する貸金業規制の緩和について
近年、会社グループ等における資金管理の一元化(いわゆる、キャッシュマネジメントシステム)が進む中、貸金業法がその促進の妨げとなっていました。すなわち、貸金業法2条1項は「貸金業」を「金銭の貸付け・・・で業として行うもの」としていますが、グループ会社間の融資でも、反復継続して融資を行う場合には「貸金業」の実施にあたる可能性があるため、一定の範囲でしかそのような融資を行うことが出来ませんでした。無登録での貸金業の実施には、行為者に10年以下の懲役または3000万円以下の罰金、法人にも1億円以下の罰金が科せられることがあります。
平成26年4月1日に施行された改正貸金業法施行令および改正貸金業法施行規則では、この内容が大幅に見直され、グループ企業間および合弁会社への融資がしやすくなっています。
本件の改正がなされるまでの規制は、運用上、以下のとおりとされていました。
A グループ親子会社間の融資
(1)議決権の過半数を有する親子会社間の融資→貸金業非該当(融資可能)
(2)上記以外の融資→貸金業該当(融資不可)
B グループ兄弟会社間の融資(親会社が同一である子会社間での融資)
(1)親会社が議決権の全てを有する子会社同士間での融資→貸金業非該当(融資可能)
(2)上記以外の融資→貸金業該当(融資不可)
C 出資者による合弁会社への融資
(1)共同出資者間において、合弁会社に対する貸付行為の一体性および合弁会社を支配する上での一体性を備えていると認められる場合→貸金業非該当(融資可能)
(2)上記以外の融資→貸金業該当(融資不可)
以上のような規制が、今回の改正によって、以下のように変更されます。
上記AおよびB(親子会社間、兄弟会社間を含むグループ会社間の融資)については、ある会社グループ内にある会社間の融資であれば、貸金業に該当しない(融資可能)こととされました。この会社グループの範囲は、(a)親会社が子会社の議決権の過半数を有している場合や(b)親会社が子会社の議決権の40%以上50%以下を保有し、かつ、財務および事業の方針の決定を支配している場合における、当該親子会社間を含むグループ全体とされています。そのため、一つの会社を頂点として、上記(a)または(b)の要件を満たす子会社が連なる限り、その範囲は会社グループとなりますので、例えば、親会社から孫会社への融資等も自由化されることになります。
また、上記Cに関しては、ある合弁会社の共同出資者が、株主間契約等に基づいて当該合弁会社の議決権の20%以上を保有し共同支配している場合で、かつ、総出資者の同意に基づいている場合には、貸金業に該当しない(融資可能)とされています。複数の企業でジョイントベンチャー企業を立ち上げているような場合には、共同出資者の同意は要求されるものの、20%以上の議決権保有で融資が自由化されることが明記されましたので、基準が明確となり、使いやすくなったといえます(藤武)。ナスダックに上場しよう(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/08/post-52.html
記事に関するご意見やご質問がありましたら、Blogの「Comments」欄 https://www.clairlaw.jp/newsletter/ にご記入下さい。当事務所の弁護士がコメントさせて頂きます。みなさんのご意見・ご質問をお待ちしています。