1 社員による不正行為に関する社内調査の初動対応について
社内から、ホットラインなどを通じて、社員の不正行為についてのリーク情報があった際、調査対象社員の上司に調査を命じていませんか?社内調査の初動対応で留意すべき点について説明します。
2 3Dプリンターを巡るビジネスと知的財産権侵害リスクについて
3Dプリンターを用いたビジネスを行うにあたって知的財産権侵害となるおそれのある行為について解説します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 社員による不正行為に関する社内調査の初動対応について
社内から、ホットラインなどを通じて、社員の不正行為についてのリーク情報があった際、調査対象社員の上司に調査を命じていませんか?不正行為に関する調査の初動対応を誤ると、その後の調査対応が後手に回ってしまうことがあります。そこで、社内調査において初動対応で留意すべき点について説明します。
そもそも、社員による不正行為の情報が寄せられた場合、必ずしも調査をしなければならないわけではありません。特定の社員の誹謗中傷を目的としたものであることもありえますので、調査対象とするかどうかの見極めが必要です。
社内調査を行う方針が確定した場合に、留意すべき点はどのようなことでしょうか。
まず、調査の初動で最もやってはならないことは、いきなり嫌疑のある従業員本人を呼んで事情を聴くことです。被害の額が大きいほど素直に不正行為を認めないでしょうし、証拠を固めないままヒアリングを実施すると、攻め手を欠いてシラを切られた挙句、証拠隠滅の機会や言い訳を考える時間をみすみす与えてしまうことになりかねません。
また、本人ではなく、直属の上司からヒアリングしたり、調査を命じたりする例がありますが、これも控えた方が良いとされています。上司が共犯者である可能性も否定できませんし、積極的に関与していないとしても、なんらかの形で恩恵に与っているといった引け目があると、予測不可能な行動に出かねないからです。また、たとえ全く関与が疑われないとしても、部下の不正行為は上司の管理監督責任事項であることから、上司にとっては気が気ではありません。自ら周りの従業員を通じて秘密裏に事実確認しようとするなどの行動に出る可能性が高くなります。そのようなことから、本人に調査開始を勘付かれてしまい、秘密裏に調査を行うことが出来なくなってしまうことがあります。
調査方針を確定したら、一定の時点までは最小限の人数での極秘の行動を心掛けましょう。
不正を起こさせない社内環境整備が最も重要ですが、常日頃から緊急事態が発生した場合の備えも必要と考え、社内調査における初動対応についての重要な点を簡単に説明しました(藤武)。
2 3Dプリンターを巡るビジネスと知的財産権侵害リスクについて
3Dプリンターで自作した銃を所持していたとして、大学職員が銃刀法違反の疑いで逮捕された事件に驚いた人も多かったことと思います。
廉価な3Dプリンターが販売されるようになり、立体物の複製の取り扱いは今後益々増えそうです。
3Dプリンターを用いた新ビジネスを始める際には知的財産権侵害リスクに注意する必要があります。以下では、A フィギュア等の著作物、B 意匠登録されたデザインの物品、C 登録商標を含む物について、権利者の許諾なく(1)物から3Dデータを作成する行為、(2)3Dデータを他人に譲渡する行為、(3)3Dデータから立体物を製造する行為の3つの行為が、知的財産権侵害となるかを検討していきます。
A 著作権侵害
(1)物から3Dデータを作成する行為
この行為は、著作物の再製にあたるので複製権侵害となります。
(2)3Dデータを他人に譲渡する行為
たとえば、3Dデータを記録媒体に記録させて第三者に渡す行為は、譲渡権侵害となります。他方、3Dデータをインターネット上のサイトを通じて交換・共有等する行為は、公衆送信権侵害となります。
(3)3Dデータから立体物を製造する行為
当該行為は、複製権侵害となります。
B 意匠権侵害
(1)物から3Dデータを作成する行為
この行為は、あくまでデータの作成であって、「物品」の製造にはあたらないため、通常は意匠権侵害とはなりません。
もっとも、当該3Dデータが、そのデザインの物品の製造にのみ用いられるものである場合には、作成自体が意匠権侵害の準備・幇助的行為であるとして、意匠権侵害とみなされる場合があり得ます。
(2)3Dデータを他人に譲渡する行為
この場合も同様に、通常は意匠権侵害とはなりません。
(3)3Dデータから立体物を製造する行為
この行為は、意匠にかかる物品自体の製造にあたるので、意匠権侵害となります。
C 商標権侵害
(1)物から3Dデータを作成する行為
この行為は、作成された3Dデータ自体は「商標」にはあたらないため、通常は商標権侵害とはなりません。もっとも、意匠権の場合と同様、作成自体が商標権侵害の準備・幇助的行為であるとして、商標権侵害とみなされる場合があり得ます。
(2)3Dデータを他人に譲渡する行為
この場合も同様に、通常は商標権侵害とはなりません。
(3)3Dデータから立体物を製造する行為
製造した立体物を商品とした場合には、商標の使用にあたるため、商標権侵害となります。
これらの行為は、3Dプリンターの利用者が個人で楽しむためであれば、知的財産権侵害となりません。しかしながら、会社が3Dプリンターを利用できるサービスを提供しているような場合、過去の裁判例等の傾向では、個々の利用者ではなく3Dプリントサービス提供会社が、事業として、知的財産権侵害を行っていると認定されてしまう可能性が高いでしょう。3Dプリンターを巡るビジネスに対する法規制については今後進められるルールづくりや裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、現在ではそのようなリスクがあることを理解しておく必要があります(木村)。
3 弁護士Blog情報
業務改善ミーティング 服務規程について考えた(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/04/post-46.html
今年6月の株主総会に備える(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/05/post-47.html
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