- 取締役会に参加できない特別利害関係取締役とは?
どのような場合に、取締役は、特別利害関係人として取締役会に参加できないのでしょうか。 - 特許権の消尽が否定された裁判例の紹介特許製品の一部の再利用行為について、
特許権の消尽が否定されたために特許権侵害の主張が認められた大阪地判平成26年1月16日を紹介します。 - 弁護士Blog情報
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1.取締役会に参加できない特別利害関係取締役とは?
取締役会で決議事項を審議する際に、特定の取締役が特別利害関係に該当するかどうか?議決に参加してよいかどうか?が問題になることがあります。
特別利害関係取締役は、議長になれず、これが参加した取締役会決議は無効です。反対に、特別利害関係人でないとすれば、取締役会に正当な理由なく出席しないのは任務懈怠となるので、悩むところです。
総論的にいうと、「特別の利害関係を有する取締役」とは、当該決議事項について、公正な議決権の行使が期待できない程度の個人的な利害関係を有する場合をいいます。
次のような場合には、原則として特別利害関係取締役に該当します。
- 利益相反取引の承認但し、付合契約(保険契約、預金契約など、あらかじめ定型的な条項により契約内容が規定され、包括的に合意するか否かの選択しかできない契約)や通例的な内容の取引は除かれます。
- 競業の承認
- 株式の譲渡承認における譲受人または譲渡人たる取締役
- 取締役が募集株式の割当を受ける場合の、募集事項の決定、および割当
- 前項と同様に新株予約権の付与
- 会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表者を定めること
- 取締役の責任の一部免除
- 代表取締役の解職
これに対して、次のような場合には特別利害関係取締役に該当しないと考えられます。
- 株主総会が定めた報酬総額の配分を取締役会で決定する場合
- 取締役に対するストックオプションの割当て
- 代表取締役の選定
- 100%親子関係にある会社間の取引
- 取引相手となる会社が取締役の個人経営企業であるとき
特別利害関係取締役には様々なバリエーションが考えられますが、上記のような類型を参考に、その都度、「公正な議決権の行使が期待できない程度の個人的な利害関係を有するか?」を検討することになります(古田)。
参考:会社法369条2項
2.特許権の消尽が否定された裁判例の紹介
特許権者は、特許製品の生産、使用、譲渡などを独占的に行うことができ、第三者が特許製品につきこれらの行為を行うためには特許権者の許諾が必要となります。しかし、特許製品に関する一切の使用、譲渡につき特許権者の許諾が必要であるとすると、特許製品の流通は滞り、せっかくの発明が世の中で活かされないことになってしまいます。そこで、特許権者がその意思で特許製品を譲渡した場合には、もはや特許権の効力は当該特許製品の使用、譲渡などには及ばず、第三者は自由に特許製品の使用、譲渡を行うことができるものとされています。これが、特許権の消尽という考え方です。
ただし、特許権の消尽は特許権者が譲渡した特許製品そのものに限られるので、第三者が特許製品の加工や部材の交換を行い、もともとの特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたと認められるときは、特許権者は特許権を行使することができます。
本件は、原告の特許製品である薬剤分包用ロールペーパ(原告製品)について、その芯管を回収し、分包紙を新たに巻き直した製品を販売していた被告の行為が特許権侵害にあたるかが問題となりました。具体的な争点は、被告が芯管に分包紙を巻き直して再利用する行為について、もともとの原告製品と同一性を欠く製品が新たに製造されたと認められるかどうかという点です。
大阪地裁は、同一性を欠く製品が新たに製造されたとして特許権者が特許権を行使できるかどうかは「当該特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様のほか、取引の実情等も総合考慮して判断すべき」とするインクカートリッジ事件最高裁判決を引用し、本件事実関係を検討しました。本件では、原告製品は芯管に巻かれた分包紙の部分の価値が高いことや、芯管に分包紙を巻くためには工場設備が必要であり顧客が自ら巻き直すことはできず、顧客にとって芯管自体には価値がないことから、原告製品は分包紙を一度使い切った時点でその本来の効用を終えてしまうものと認定し、分包紙を巻き直して製品化する行為は、原告製品と同一性を欠く特許製品を新たに製造する行為にあたると判断しています。よって、原告の特許権侵害の主張は認められました。
本件は平成19年のインクカートリッジ事件最高裁判決で示された特許権消尽のルールに従って詳細に事実を検討している点で、特許権の消尽を判断する上で参考になるものと考え紹介しました(木村)。
参考:
大阪地判平成26年1月16日 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140121112242.pdf
最判平成19年11月8日―インクカートリッジ事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080111155502.pdf
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