1 会社間での他人物売買契約の解除期間に関する裁判例の紹介
商人間での売買契約の目的物が他人物であった場合に、商人間での売買契約の解除期間を6か月以内に限定する商法526条が適用されないとした裁判例(東京地裁平成25年6月6日判決)を紹介します。
2 機械の製造委託契約において独占的委託条項の効力が争われた裁判例の紹介
洗浄機の製造委託契約に関して、注文者が再受託業者と直接取引を行ったことから、受託業者が独占的委託条項違反を主張した裁判例(知財高裁平成25年11月14日判決)を紹介します。
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1 会社間での他人物売買契約の解除期間に関する裁判例の紹介
商法526条は、商人間の売買においては、買主が売買の目的物を受領したときには遅滞なくその物を検査しなければならないこと、その結果、目的物に瑕疵(品質不良など)や数量不足があることを発見した時には遅滞なく売主に通知しなければ契約の解除、代金減額または損害賠償請求をすることができないこと、目的物に直ちに発見できない瑕疵があるときでも瑕疵担保責任を追及できる期間は6か月であることなどと定めています。
本件では、中古車の売買契約から6か月経過後の契約解除および損害賠償請求がこの規定により制限されるのかが問題となりました。Y社はX社に対して、平成16年8月、中古車(BMW)を610万円で売却しましたが、その後、転々売買され、平成21年8月ころにこの中古車の車台番号が改ざんされているとのクレームがあり、平成23年2月ころには盗難車であることが判明しました。そこで、X社は売主であるY社に対して売買契約を解除し、売買代金および損害金の計約960万円を支払うよう請求しました。
Y社は、中古車をX社が受領した平成16年8月から6か月経過後は契約解除できないと主張したところ、X社は本件のような目的物が他人物(盗難車)であるという場合には、解除期間は制限されないと反論しました。
東京地裁は、商法526条2項の「瑕疵」とは、売買の目的物自体の物の瑕疵を指すのであって、売主に所有権がないなどの権利の瑕疵は含まれないと判示しました。つまり、X社は6か月経過後であっても本件中古車売買契約を解除し、損害賠償請求することが認められました。
もっとも、この中古車の所有者とされていた者が持ち込んだ印鑑証明書などが偽造であり、X社としてもこの中古車が何かしら法的問題を抱えた車輛であることは認識していたというべきであるから、X社にもそれなりの過失があったということで、賠償すべき損害全体から1割過失相殺を行いました。
商法526条が解除期間等を6か月に限定しているのは、一般に商取引の契約関係は迅速に確定される必要があるということや、契約当事者が取引に精通し専門的知識を有しているであろうという理由からですが、本判決のとおり、その適用範囲は物の瑕疵や数量不足などの場合に限られ、権利の瑕疵には及ばないと考えてよいと思われます。なお、他人の所有する物を売却した者の責任については民法561条に定めがあり、他人の所有物であるという事情を知らない買主はその売買契約を解除することも損害賠償請求することもできるとなっており(他人物であることを知っている買主でも解除はできます。)、その権利行使期間についても特則はありません(鈴木俊)。
参考:
東京地裁平成25年6月6日判決
2 機械の製造委託契約において独占的委託条項の効力が争われた裁判例
洗浄機製造業者であったX社は、Y社から委託を受け設計・考案した洗浄機の製造をZ社に再委託していました。X社は、Y社とZ社が直接取引をしないよう、それぞれ、XY間契約において「Y社は、X社が考案した機械をX社以外のものに製造を依頼してはならない」、XZ間契約において「Z社は、(X社の考えに基づく機械と)同じ目的に使用する類似した機械を第三者から依頼されて製作販売してはならない」という、独占的委託条項(本条項)を含む契約を締結していました。それにもかかわらずY社とZ社が直接取引を行ったことから、X社がY・Z社を提訴したのが本件訴訟です。本件訴訟では本条項の有効性と制限の範囲が問題となりました。
まず、本条項の有効性についてです。Y・Z社は、本条項がY・Z社に一方的に不利かつ強力な独占的委託義務を負わせるもので無効であると争いました。しかし知財高裁は、本条項について、X社が確実に利益を得られるようにするだけでなく、Y・Z社にも洗浄機の製造・販売を確保するという意味合いがあったと認められることから、必ずしもY・Z社に一方的に不利とはいえないなどとして、本条項は有効であると判断しました。
次に、本条項によって制限される取引の範囲が争われました。知財高裁は、XZ間契約にいう「同じ目的に使用する類似した機械」という契約書の文言を、X社が考案しZ社に再委託した機械と同じ目的で使用され、かつ、同じ技術が利用されている機械と解釈し、制限される取引の範囲を限定しました。その結果、X社が自ら設計・考案した洗浄機で、X社がZ社に製造を再委託した洗浄機(型番MBT-30)の取引は制限対象と判断されましたが、Y・Z社考案にかかる洗浄機で、XZ間に再委託関係のなかった洗浄機(型番MST-30XL)の取引は制限対象外と判断されました。
本件は、当事者らが独占的委託契約を結ぶにあたり、「考案した機械」「同じ目的に使用する類似した機械」といった曖昧な契約文言を用いたために、その効力や、制限される取引の範囲に関して紛争が生じたというものです。そして知財高裁は、本条項の有効性は認めたものの、その文言解釈、契約書全体の構成、当事者間の過去の契約関係等の事情を考慮して、制限される取引の範囲を狭く解釈しました。
本判決は、自社の開発技術保護のため契約書中に独占的委託条項を盛り込むにあたって注意すべき事項を示しており、実務の参考になるものと考え紹介しました(木村)。
参考:
知財高裁平成25年11月14日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131120150854.pdf
東京地判平成25年4月12日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130521184707.pdf
3 弁護士Blog情報
就業規則を考えた 給与とは何か?(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/03/post-44.html
テニス強化アプリ作りました!(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/04/post-45.html
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