今回は、デザイナーズ戸建賃貸住宅の商標を別工法の建物請負で使用した業者に損害賠償責任が認められた裁判例と、助成金・補助金制度のサポートサービスについて紹介します。
≪今回の紹介テーマ≫
1 デザイナーズ戸建賃貸住宅の商標を別工法の建物請負で使用した業者に損害賠償責任が認められた裁判例
デザイナーズ戸建賃貸住宅の建築請負業者が、別工法の建物建築請負の際にそのブランドの商標を使用したとして、販売業者が商標権侵害による損害賠償を請求し、一部が認められた裁判例(大阪地裁平成24年12月13日判決)を紹介します。
2 助成金・補助金制度のサポートサービスのご案内
当事務所では、中小企業事業主による従業員雇用に関する助成金や補助金の制度利用のサポートを行います。ご興味があれば、当事務所(info@clairlaw.jp)までご連絡ください。
1 デザイナーズ戸建賃貸住宅の商標を別工法の建物請負で使用した業者に損害賠償責任が認められた裁判例
あるブランドのパッケージ販売に伴い、商標使用の許諾をすることがあります。しかし相手方が商標を類似製品に用いていたとしたら、権利者は商標権を侵害されたとして損害賠償責任を問えるでしょうか。今回はこの点に関連した問題についての裁判例を紹介します。
安成工務店(X社)らは、キューブ型外観とX社の子会社の特許であるデコスドライ工法(特定工法)による無結露20年保証を売りとする「ユニキューブ」というデザイナーズ戸建賃貸住宅のブランドを開発しました。そしてX社は、その設計・施工・営業ノウハウ等を、建物建築工事等を行うスズケン&コミュニケーション(Y社)に販売し、それに伴いブランド商標の使用許諾(ライセンス)契約を締結しました。しかし、Y社は、施主に特定工法について説明することなく、他の工法によるキューブ型外観の建物建築工事請負をいくつも行い、その際、関連書類にX社のブランド商標を使用しました。
そこでX社は、Y社の商標使用は契約の範囲外のものであるとして、商標権侵害に基づき、約4億円の損害賠償請求訴訟を提起しました。
本件の主な争点は、(1)商標登録の際に指定した役務「建物の売買」と、Y社の行った建物建築工事請負が類似するか(商標法37条1号に該当するか)、(2)Y社の行為はライセンス契約の範囲内の行為か、(3)Y社の商標権侵害によるX社の損害はいくらか、でした。
大阪地裁は、まず争点(1)について、建物の売買と密接な関係がある建築工事請負に商標が使用された場合、誤認混同が生じるとして、類似すると判断しました。
次に争点(2)について、「特定工法を標準採用した建物」というライセンス契約書の定義を、特定工法を説明したが施主との交渉の結果不採用となった場合も含むと解釈した上で、Y社はその説明を行わずに他の工法を使用していたため、ライセンス契約の範囲外の行為であるとして、商標権侵害を認めました。
争点(3)については、まずY社の利益を損害額と推定する規定(商標法38条2項)の適用が問題となりましたが、過去の判例(参考)の考え方を参考にして、X社(福岡県・山口県が中心)とY社(徳島県内)の商圏が競合しているとはいえないとして、損害額を推定できないと判断しました。そして、商標の使用料相当額を損害額とできる規定(商標法38条3項)により、商標の使用料相当額として1棟あたり10万円(計760万円)と弁護士費用の損害賠償請求が認められました。
本件は、役務の類否、ライセンス契約逸脱による商標権侵害、商標法38条の適用等、商標権侵害につき実務上参考となる事例であるため、紹介しました(柳田)。
参考:
商標法37条1号、38条2項、3項
大阪地裁平成24年12月13日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121228155002.pdf
最高裁平成9年3月11日判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52791&hanreiKbn=02
2 助成金・補助金制度のサポートサービスのご案内
当事務所では、中小企業事業主による従業員雇用に関する助成金や補助金の制度利用のサポートを行います。
以下の制度について、ご興味があれば、当事務所(info@clairlaw.jp)までご連絡ください。
(1)創業時・・・「創設補助金」
新たに創業(第二創業を含む)を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部について助成が行われる制度です。
地域の需要や雇用を支える事業や海外市場の獲得を念頭とした事業を新たに行う者、業務転換や新事業・新分野に進出する中小企業の後継者等に対して、創業及び販路開拓に必要な経費(弁護士、税理士等の専門家との顧問契約のための費用や広告費等)について上限200万円の補助金が支給されます。
(2)採用時・・・「トライアル雇用奨励金」「特定求職者雇用開発助成金」
「トライアル雇用奨励金」
未経験者等、職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワーク等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成が行われる制度です。
事業主が、支給対象者をトライアル雇用した場合に、1人1か月につき上限4万円(最長3か月間)の助成金が支給されます。
「特定求職者雇用開発助成金」
就職困難者(高年齢者や障害者等)を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対し、賃金相当額の一部について助成が行われる制度です。
中小企業事業主が、高年齢者、母子家庭の母等を雇用する場合には上限90万円、重度障害者等を雇用する場合には上限240万円、重度障害者以外の障害者を雇用する場合には上限135万円の助成金が支給されます。
(3)非正規雇用者の正規雇用転換時ほか・・・「キャリアアップ助成金」
管轄の労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画に基づき、非正規雇用の労働者(有期契約労働者、パート・アルバイト、派遣社員等)の正規雇用への転換や処遇改善等の取組みを実施した事業主に対して助成が行われる制度です。
A.正規雇用等転換コース
有期契約労働者等を正規雇用に転換した場合等には上限50万円の助成金が支給されます。
B.人材育成コース
有期契約労働者等に一般職業訓練や有期実習訓練を行った場合には、OFF-JTの賃金助成として1人1時間あたり800円、訓練経費助成として1人あたり上限30万円、OJTの訓練実施助成として1人1時間あたり700円の助成が支給されます。
C.処遇改善コース
すべての有期契約労働者等の賃金テーブルを2%以上増額改定させる等した場合には、1人あたり1万円、職務評価を活用して処遇改善を行う等した場合には、職務評価加算として1事業所当たり20万円の助成金が支給されます。
D.健康管理コース
有期契約労働者等を対象とする法定外の健康診断制度を規定し、延べ4人以上実施した場合等には、1事業所あたり40万円の助成金が支給されます。
E.短時間正社員コース
管轄の労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画に基づき、雇用する労働者を短時間正社員に転換し、または短時間正社員を新規で雇い入れた場合等には、1人あたり30万円の助成金が支給されます。
F.短時間労働者の週所定労働時間延長コース
週所定労働時間25時間未満の有期契約労働者等を週所定労働時間30時間以上に延長した場合等には、1人あたり10万円の助成金が支給されます。
(4)労働環境改善時・・・「中小企業労働環境向上助成金」
A.評価・処遇制導入
評価・キャリアパス制度、昇進・昇格基準、賃金体系制度等の規程を作成し、初めて導入する企業に40万円の助成金が支給されます。
B.研修体系制度
新入社員研修、新任担当者研修、管理職研修、マーケティング技能研修等の教育研修制度を規程作成の上、初めて導入する企業に30万円の助成金が支給されます。
C.健康づくり制度
介護提供事業主が、法定健康診断以外の健康づくり(腰痛健康診断、インフルエンザ予防接種、メンタルヘルス相談他)制度を規程作成の上、初めて導入する場合等に30万円の助成金が支給されます。
D.介護福祉機器等導入
介護提供事業主が、移動用リフト、ストレッチャー等労働者の身体的負担を軽減できる機器購入する場合等について、導入費用、保守契約費用、導入研修費の合計額(税込)の1/2(上限300万円)の助成金が支給されます。
※その他、正社員向け教育研修実施時や障害者雇用対策の助成金もございます。
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