ファウンダー・インスティテュート起業支援イベントのご案内
起業しようと考えている皆さん!今月は、古田弁護士が東京支部のデレクターを務めているイベントを体験しませんか?スピーカーは、次のお二人です。
・ 鈴木清幸アドバンストメディアCEO
京大、カーネギーメロン大、2006年アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー受賞、同社は1997年設立、2005年マザース上場の音声認識技術ベンチャー。
・ 米岡 和希 Founder、Memom Pte Ltd(シンガポール)
津田塾大学卒、INSEAD MBA
監査法人勤務から起業を決意し、2013年9月 Founder Institute (Singapore)を卒業。子供のいる親を対象とした写真サービスに取り組む。
詳細とお申込みは以下から↓
http://eventregist.com/e/awdqpIWerDMu
「早稲田大学アプリケーションプログラムコンテスト」最終発表会のご案内
「位置情報を活用した、新しいサービスの開発」をテーマにしたコンテストの最終発表会。学内審査を勝ち抜いた若き精鋭たちの斬新なアイデアが炸裂します!
詳細は以下から↓
http://www.waseda.jp/rps/incubation/apc/apc_presentation.pdf
今回は、意匠権侵害の損害額の認定についての裁判例と、任期付執行役員の解任等をめぐる問題について紹介します。
≪今回の紹介テーマ≫
1 意匠権侵害の損害額の認定についての裁判例の紹介
意匠権侵害を認めつつ被告による類似製品の販売以外にも原告製品の売上が減少した理由があるとして、その損害額の9割を控除した東京地裁平成24年6月29日判決を紹介します。
2 任期付執行役員の解任等をめぐる問題
執行役員と会社との関係によって、「任期満了前の解任」「任期満了時の不更新」における取扱いがどのように異なるかについて紹介します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 意匠権侵害の損害額の認定についての裁判例の紹介
今回紹介する裁判例は、ACアダプタに関する意匠権を有する原告が、それと類似する製品を製造・販売する被告に対して、製造販売の差止めと約820万円の損害賠償請求等を行った事案です。
まず、裁判所は、被告が原告の意匠権を侵害しているかどうかについては、特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で、両意匠が全体的な美感を共通するか否かにより判断するとしました。つまり、両製品を見た者の注意を最も引きやすい部分を観察して、一般の需要者が両製品を誤認・混同するかどうかを判断するということです。本件では、原告製品と被告製品の両意匠は類似していると判示し、製造販売の差止請求は認められました。
次に、損害賠償の額についてです。
被告が意匠の類似する製品を販売したことで、本来原告製品を購入するはずだった需要者が被告製品を購入してしまったために、原告製品の売上は減少していると考えられます。そこで意匠法は、被告の販売した類似製品の数量をもとに原告の損害額を算定することとしています(意匠法39条1項)。
しかし、被告が意匠の類似する製品を販売したこと以外の理由(意匠以外の部分の形態の違い、原告の販売力や販売方法、代替品の有無など)によって、原告製品の売上が減少した可能性もあります。そこで、被告が販売した類似製品の数量のうち、どの程度を原告の損害額算定の基礎とすべきかが争われました。
本件で原告製品と被告製品とは、重さ、価格帯の点では共通するものでした。しかし、原告製品は充電器本体とは別売りの接続ケーブルが必要となるタイプで、携帯電話のほかオーディオプレイヤー、ゲーム機の充電にも利用できるものだったのに対し、被告製品は本体と接続ケーブルが一体のタイプで、携帯電話の充電のみに利用できるものでした。
裁判所は、被告製品の代替品として、より安価で本体・ケーブル一体型の携帯電話専用充電器があり、被告製品の購入者の一部は原告製品ではなくこれらの代替品を選択した可能性が高いと認められること(代替品の存在)、充電器のデザインを気に入って購入する需要者は多いところ、原告製品は本体とケーブルが色違いになる可能性があり、見た目を嫌う需要者がいると考えられること(意匠以外の購入動機の存在)などから、被告が意匠の類似する製品を販売したこと以外にも原告製品の売上が減少した理由があると認めました。そこで被告が販売した類似製品の数量のうち1割のみを損害額算定の基礎とし、約72万円を損害額と判断しました。
損害額の控除割合の根拠自体は曖昧なところもありますが、意匠法39条1項により認められる損害額から大幅に控除した事例であり、参考になるものとしてご紹介いたしました(鈴木俊)。
参考:意匠法24条2項、同39条1項
東京地方裁判所平成24年6月29日判決
2 任期付執行役員の解任等をめぐる問題
執行役員制度は、取締役の減員による意思決定の迅速化、および執行と監督の分離による合理的な業務遂行を目的として、日本ではソニーが初めて導入し、現在では多くの企業が導入しています。
「執行役員」とは、一般的には、取締役でないものの、業務執行に関して相当の裁量権限を有する者をいいます。会社では「専務」「常務」等の肩書きが付されることが多いですが、会社法上「執行役員」の規定はなく、一種の「重要な使用人」(会社法362条4項3号)にあたると考えられています。なお、委員会設置会社の「執行役」(会社法416条3項、418条)とは異なりますので、注意してください。
では、執行役員は会社とどのような関係にあるのでしょうか。具体的には、「雇用」か「委任」かが問題となります。
一般論として、代表取締役等の指揮命令下で業務執行に従事していれば「雇用」、そうでなければ「委任」と考えられています。
この違いは、任期付きの執行役員を辞めさせる際にも現れます。
「委任」の場合、任期満了時に更新しないことは通常問題なく、任期満了前に解任することも損害(任期満了までの報酬分等)を賠償すれば可能です(民法651条2項参照)。
他方、「雇用」型の執行役員は、法律上「有期契約労働者」と取り扱われます(※)。そのため、任期途中の解任は「有期労働契約の中途解約」、任期満了時の不更新は「雇止め」にあたり、厳格な要件をみたさないと無効とされてしまいます(労働契約法17条1項、19条)。会社は「雇用」型執行役員との関係では、このような厳しい規制を守らないといけません。
そこで会社としては、「雇用」型の執行役員と判断されないような制度設計をした方が、柔軟に対応できます。
たとえば、執行役員規程に「この規定に定めのない事項は、就業規則の定めるところによる」「代表取締役社長は、執行役員の職務の執行を統括する」といった定めを置かないことや、正社員から執行役員になる場合には退職慰労金を支給するなど、形式上雇用と同様の扱いとしないように注意しましょう。また、実質的にも執行役員に取締役と同等の業務と権限を与えて「委任」関係を築くのがよいでしょう(柳田)。
※ただし、執行役員を正社員の役職の一つとしている場合は、その任期は役職の担当期間にすぎないので、これにあてはまりません。
参考:労働契約法17条1項、同19条
3 弁護士Blog情報
株主総会で、「動議! 議長! 議長は不要です!」(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/02/post-40.html
Aさんのスピーチ(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2014/02/a.html
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