1 スタートアップ・アイディア・ブートキャンプ
10月2日に開催した、ファウンダー・インスティテュート(FI)のスタートアップ・アイディア・ブートキャンプを紹介します。
2 MBOにおける取締役の適正情報開示義務について
MBOにあたって取締役に情報開示に関する善管注意義務違反があるとした裁判例を紹介します。
3 弁護士Blog情報
所属弁護士による最近のBlog情報を紹介します。
1 スタートアップ・アイディア・ブートキャンプ
10月2日19時からマイクロソフト社31階会議室で、ファウンダー・インスティテュート(FI)のスタートアップ・アイディア・ブートキャンプを開催しました。
http://fi.co/courses/3184
FIは、2009年シリコンバレー発で、現在はグローバルに活動している創業者(ファウンダー)支援の団体です。
流れは以下の通りです。ブートキャンプも2回目となったので、私も参加者も、マイクロソフトからアテンドしていただいている馬田さんも、メンターも、他のディレクターもかなり楽しめたと思います。
・小泉文明さんのキーノート
まず、元ミクシーCFOの小泉文明さんから、ビジネス・アイディアの作り方に関して、経験を踏まえたスピーチをして頂きました。
「解決すべき問題(課題)や、成し遂げたい未来があるか?」
「ユーザーの利用シーンと支払のモチベーションが一致しているか。」
「今後、様々なものがコミュニケーション化し、新しい価値が付加されていくところにビジネスチャンスがある。」
「ビジネスのネタが出尽くしたと思われたころに、全く新しいサービスを提供する企業が現れる。」
「大企業も最初は一台のPCから始まっている。起業は難しくありません。」
「短所を補完しあえるような仲間と起業すると良い。」
等々とても示唆に富むお話しでした。
・FI流のビジネス・アイディア作りのフレーム
次に、私から、FIのビジネス・アイディアの作り方を説明しました。FIでは、次のようにしています。
「情熱」「好奇心」「怒り(困りごと)」の対象となる課題を25考えます。
↓
その中から、何年も飽きずに追及できないと思うものは外します。
↓
社会から本当に必要とされていないと思うものは外します。
↓
マーケットがあるかどうかヒアリングします。
↓
残ったもののうち、一つだけに絞ります。
この中で、自分のビジネス・アイディアを様々な人に聞いてもらい、評価してもらうことはとても重要です。
多くの創業者が可能性の低いアイディアに惚れ込んで苦労します。
また、ビジネス・アイディアを人に話しても、それが横取りされるリスクはほとんどありません。
更に、絞られたアイディアについて、以下のチェックをします。
1 そのアイディアの実現に情熱を傾けられるか
2 シンプルか
3 説明が容易か
4 収入源は一つか
5 売上までのステップは少ないか
6 典型的な顧客のイメージは明確か
7 マーケットの将来像は
8 マーケットの規模は
9 ユニークな/スペシャルなポイントは
・FI流のビジネス・プレゼン作りのフレーム
Co director の奥田さんから、プレゼンテーション(ピッチ)の作り方について説明しました。
ピッチのポイント
1 自信を持って! 姿勢が大切
2 言い訳無用
3 誇張は禁物 抽象的な表現でなく数字を示す
4 フィニッシュは鮮やかに
5 もう少し聞きたいと思わせる
エレベータ・ピッチ(30秒~1分)の要素
1 私の会社名は××です。
2 開発している製品/サービスは、××です。
3 ターゲットとなる顧客は、××です。
4 ××という課題(問題)を解決します。
5 4ができるのは、××というユニーク/スペシャルな技術etcがあるからです。
・15分のブレーク
この間に、参加者はビジネス・アイディアを考え、スタートアップ・マドリブズというシートに書き込みます。
・ ワークショップ
参加者二人一組となって1分ずつのピッチを行い。相手からフィードバックを得ます。
これを4回転行いました。4回自分のアイディアを違う相手にピッチすることによって、アイディアが洗練され、プレゼンも上手になります。
・ ピッチの実施
全員の前でピッチして、質疑を受けます。
・ ネットワーク
マイクロソフト社から提供されるドリンクを頂きながら、名刺交換やビジネスに関する情報交換を行います。
次回は、10月9日(水)19時から、 21Cafe(渋谷区道玄坂1-14-6, 渋谷ヒューマックスビル3F)でFIインフォメーションセッションを行います。
また、16日(水)にもマイクロソフト(品川本社)で同様に行います。
起業を考えている皆さんは是非ご参加ください。参加する前に以下から登録をお願いしますm(__)m(古田利雄)。
http://fi.co/courses/3183
2 MBOにおける取締役の適正情報開示義務について
経営陣が出資して会社の株式を購入するマネジメント・バイアウト(MBO)には、本来は企業価値を向上すべき取締役が、自分が買い付けるときの株価は押し下げたいと考えるおそれがあることや、買主である取締役は会社の情報を握っている一方で、売主である株主は会社に関する情報が乏しいことから、本当の企業価値を分からずに売ってしまうおそれがあることなど問題点が指摘されています。
今回ご紹介する東京高判平成25年4月17日の事案も、MBOの際の公開買付(TOB)に応じた株主らが、当時の役員らに対して、適切な情報を株主に提供する注意義務等の違反があるとして損害賠償を求めた事案です。
この会社は、平成18年5月には楽観的な業績予想のプレス・リリースを行っていたにもかかわらず、同年8月に特別損失の発生及び業績下方修正を行う旨のプレス・リリースを行いました。この8月プレス・リリース直前の株価は約30万円でしたが、プレス・リリース直後に大幅に下落し、平成18年9月26日には約14万円にまで落ち込みました。他方で、この平成18年8月ころにはMBOは既に検討されていましたが、その情報は開示されていませんでした。そして、公開買付価格は1株当たり23万円、買付期間は平成18年11月11日から12月12日と設定されました。
裁判所は、8月プレス・リリースはMBOのための株価操作と疑われても当然と言えるだけの理由があり、仮に8月プレス・リリースの段階でMBOの準備が具体的に進められているという情報を知った場合には、TOBを受け入れない株主も少なかったと推認され、この情報が開示されていなければMBOに係る適正な買収価格を判断し得ないと判示しました。そして、MBOの準備が8月プレス・リリースの段階で具体的に進められていたことや、なぜ5月プレス・リリースから僅か3か月で全く異なる内容のプレス・リリースになったのか等、株価操作の疑いを払拭する情報を開示しなかったという点については、適正情報開示義務違反があったと認めました。
ただし、東証マザーズ指数終値等の株価指標や、実際に会社が8月プレス・リリース以上の損失を出したことなどに鑑みると、仮に株式を保有し続けていても買付価格23万円を下回る株価になったことが推測されるということで、TOBに応じた株主らに損害はないとし、当時の取締役等に対する損害賠償請求までは認めませんでした。
このMBO後の平成19年9月4日に、経済産業省が「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」を発表しました。この指針では、「業績の下方修正後にMBOを行うような場合等において、MBOが成立しやすくなるように意図的に市場価格を引き下げているとの疑義を招く可能性がある場合には、当該時期にMBOを行うことを選択した背景・目的等につき、より充実した説明が求められる。」と明記されています。本件のように株価を引き下げるような情報を開示した後のMBOを行う場合には、会社の取締役等は株主に対して納得のいく説明を行う必要があると言えます(鈴木俊)。
3 弁護士Blog情報
クレアカップヨットレース(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2013/10/post-35.html
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