今回は、ウェブサイトの利用規約を契約へ組み入れるための説明と、行政機関が法律に基づかない不当な政令等を制定した場合の争い方に関する判例を紹介します。
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1 ウェブサイトの利用規約を契約へ組み入れるためには
平成24年11月20日に改訂された「電子商取引及び情報財取引に関する準則」のうち、ウェブサイトの利用規約の契約への組み入れと有効性について説明します。
2 行政機関が法律に基づかない不当な政令等を制定した場合の争い方について
行政機関が法律に基づかず、国民の権利を不当に制限するような政令等を制定した場合の争い方について、判例をもとに紹介します。
3 弁護士Blog情報
弊事務所所属弁護士の最近のBlog記事を紹介します。
1 ウェブサイトの利用規約を契約へ組み入れるためには
平成24年11月20日に改訂された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」は、経産省が、電子商取引等の法的問題について、民法等の関係法令がどのように適用されるのかを明らかにするために策定したものです。
本準則では、サイト利用規約が契約に組み入れられるための要件として、(1)利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるように適切にウェブサイトに掲載して開示されていること、(2)利用者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに同意していると認定できることが必要であるとしています。
具体的には、ウェブサイト上に、申込や購入ボタンとともに利用規約へのリンクが明瞭に表示され、しかも、利用者が取引を開始する前に、利用規約への同意クリックが求められているような場合、サイト利用規約は契約に組み入れられることになります。
ただし、利用規約への同意クリックは必須ではなく、取引の申込画面に利用規約へのリンクが設けられている等、利用規約が取引条件になっていることが利用者に明確に分かり、いつでも簡単に利用規約を閲覧できる状態になっていた上で、申込を行ったような場合には、利用規約への同意があったとみなすことができると考えられます。
次に、サイト利用規約を変更した場合、変更前から継続的に利用をしている利用者に対して変更後の利用規約を適用するためには、利用規約の変更は契約の変更と同じであるため、利用者からの同意が必要となります。
本準則では、この同意についても、先ほど述べた要件と同様の要件を求めています。つまり、具体的な同意クリックがなくても、事業者が利用者に対し利用規約の変更について十分な告知を行い、当該告知後も利用者が引き続きサイトを利用した場合は、利用規約の変更に同意したとみなすことができると考えられます。
本準則は、経産省の解釈をまとめたものであり、法的拘束力はありませんが、自己チェックのためには参考になりますので,電子商取引等を行う前には確認しておくと良いと思います(吉田南海子)。吉田南海子のなるほど
参考:
経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/121120jyunsoku.pdf
2 行政機関が法律に基づかない不当な政令等を制定した場合の争い方について
最高裁は平成25年1月11日、医薬品のネット販売を一律に禁止した厚労省の省令は違法なものであり、無効であるという判決を行いました。
本判決は、厚労省の制定した「命令」にあたる薬事法施行規則がネット販売を一律に規制していた点について、憲法22条1項により保障した国民の職業活動の自由を制約していることを認めた上で、同規則による規制は、その新薬事法に委任された範囲を超えているから、違法であり無効としました。
日本は、三権分立のもと、国民に義務を課したり、権利を制約するには、国会により定めた「法律」に基づかなければなりません。国民主権の原理からは、国民の権利の制約は、国民より選ばれた国会のみの権限であるべきだからです。しかし、細目にわたる事項まで法律で定めることは現実的でないので、行政府は法律を実施するために政令を定めることができるとされています。行政府の定める政令は、あくまでも元となる法律を実施するためにあるので、その法律が政令に委任した範囲を逸脱することは許されません。ビジネスを行うにあたって、規制によって参入を阻まれることがあると思います。本事例のように、行政部が定めた省令等であっても、法律による委任の範囲を超えて、不当に国民に義務を課したり、権利を制約している場合には、かかる規定は無効であると争うことができます(菅沼匠)。菅沼匠のなるほど
参考:
医薬品ネット販売の権利確認等請求事件(平成25年1月11日最高裁判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130111150859.pdf
3 弁護士Blog情報
1月25日講演ベンチャー企業法務【中小企業法務専門講座 東京弁護士会】(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2013/01/1.html
インディペンデンツクラブにて講演を行いました(菅沼匠)
https://www.clairlaw.jp/blog/takumisuganuma/2013/02/post-2.html
武士道と日本人(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2013/02/post-23.html