今回は、会社と取締役との間で裁判をする場合の会社の代表者に関する問題と、ある人の銀行預金が差し押さえされたが、それは友人4人が海外旅行目的で積み立ててきたものであったというケースに関する裁判例を紹介します。
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1 会社と取締役との間で裁判をする場合の会社の代表者に関する問題
監査役設置会社で取締役が会社を訴えた場合、監査役が会社を代表して訴訟を進めることになりますが、取締役と監査役が馴れ合って会社の利益が害される可能性があるとき、会社が取り得る方法のひとつを紹介します。
2 裁判例紹介―東京地判平成24年6月15日
ある人の銀行預金が差し押さえされたが、それは友人4人が海外旅行目的で積み立ててきたものであったというケースについて、友人が積み立てた部分は信託財産であるとして差押は許されないとした裁判例を紹介します。
3 弁護士法人クレア法律事務所 セミナー情報
当事務所の古田弁護士による、セミナー「金融円滑化法3月終了への対応」と菅沼弁護士による「IPO(証券取引所への株式公開)セミナー」のお知らせをさせて頂きます。
4 弁護士Blog情報
弊事務所所属弁護士の最近のBlog記事を紹介します。
1 会社と取締役との間で裁判をする場合の会社の代表者に関する問題
会社が訴えを提起し、または提起される場合、代表取締役が会社を代表するのが原則です(会社法349条4項)。
しかし、会社が取締役(取締役であった者を含みます。)に対し、または取締役が会社に対し訴えを提起する場合、取締役同士である代表取締役が会社を代表すると、相手方である取締役に不当に有利な内容で和解がなされるかもしれません。
そこで、取締役間の馴れ合いを防止し、会社の利益を確保するため、会社と取締役との間の訴えについては、監査役設置会社では、監査役が会社を代表することになっています(会社法386条1項)。
しかし、監査役設置会社でも、監査役全員が相手方である取締役の協力者だった場合、会社はどのような手段を取るとよいでしょうか。
今回紹介する新株発行差止仮処分命令申立事件(※)は、会社の元取締役である筆頭株主が、当該新株発行は「著しく不公正な方法により行われる場合(会社法210条2号)に該当するとして、会社に対し、当該新株発行を仮に差し止めることを求めた事件です。
本件では監査役が会社を代表したのですが、監査役3名全員が申し立てを行った元取締役に賛成する立場であり、元取締役の主張が認められる可能性がありました。
そこで、本件新株発行の割当先とされた従業員持株会支援会は、「訴訟の結果によって権利が害される者」に該当すると主張して独立当事者参加(民事訴訟法47条1項)の申出をし、会社の代表取締役は、会社のために補助参加をし、従業員持株会支援会及び代表取締役いずれも本事件への参加を認められました。
監査役設置会社で会社と取締役との間で訴えが起きたものの、監査役を会社の代表とすると馴れ合い訴訟等により会社の利益が害される危険があるという場合、独立当事者参加や補助参加の活用を検討するとよいでしょう(佐藤未央)。佐藤未央のなるほど
参考:(※)新株発行差止仮処分命令申立事件(東京地裁平成24年7月9日決定)
同抗告事件(東京高裁平成24年7月12日決定)
会社法210条2号、349条4項、353条、364条、386条1項
民事保全法23条2項
民事訴訟法47条1項
2 裁判例紹介―東京地判平成24年6月15日
X1とその友人であるX2~X4の4名は、海外旅行の費用として毎月5000円を積み立て、その海外旅行に行く会のことを「A会」と呼び、X1が代表者として「A会 代表者X1」という口座を開設していました。
X1に対して債権を有していたYは、この口座にあった241万円を差し押さえました。
預金全額を差し押さえられたX1ら4名及びA会は、この口座はX1の個人口座ではなく「A会」という団体の口座であるとを主張し、YやZ銀行に対して預金の返還を求めたのが本件訴訟です。
東京地裁は、まず「A会」という独立した社団があるとは認められないとして、この預金口座は、X1個人のものであると認定しました。
次に、本件預金口座はX1のその他の一般財産とは分別して管理されている上、X2~X4が預けた金銭について各別に計算を明らかにすることができる状態で管理されていたとして、信託財産としての分別管理の実質は備えているといってよいと判断し、本件預金のうち4分の3については差し押さえることは許されず(信託法23条1項)、Yは差し押さえた約241万円のうちの4分の3に該当する約181万円をX1に返還するよう命じました。
信託は、財産権の移転その他の処分、及び、当該財産につき他人をして一定の目的に従い管理又は処分させることが認められれば成立するとされており(同法1条)、信託契約を締結したことを明示することまでは要求されていません。本件でも、X1~X4の間で信託契約を締結するなどという明確な認識はないまま各自が積み立てをしていたと思われます。本件は信託法を適用して銀行預金への差押えを否定した裁判例の1つであり、実務上参考になるものと思われます(鈴木俊)。鈴木俊のなるほど
3 弁護士法人クレア法律事務所 セミナー情報
・金融円滑化法3月終了への対応
講師:代表弁護士 古田 利雄
日時:2月19日(火) 18:00~20:00
場所:当事務所会議室
費用:10,500円(税込) 但し、顧問先企業は無料です。
定員:18名(受け付け順)
・IPO(証券取引所への株式公開)セミナー
講師:弁護士 菅沼 匠
日時:第2回 2月18日(月) 15:00~18:00
審査上の問題点と対処方法①
第3回 3月18日(月) 15:00~18:00
審査上の問題点と対処方法②
場所:当事務所会議室
費用:10,500円(税込)/1回
詳細は https://www.clairlaw.jp/news/2012/12/news1109.html をご覧ください。
4 弁護士Blog情報
クレア法律事務所 講演&新年会(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2013/01/20130117.html
最近考えたこと 「外交のスタンス」(古田利雄)
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2013/01/post-22.html
アリコ税務訴訟を見る(菅沼匠)
https://www.clairlaw.jp/blog/takumisuganuma/2013/01/post.html
医薬品ネット販売の最高裁判決を見る(菅沼匠)
https://www.clairlaw.jp/blog/takumisuganuma/2013/01/post-1.html