今回は、ライフログ活用サービスにおける事業者の留意点と、根保証契約の元本確定期日前に、その根保証によって担保されている債権を譲り受けた者が、保証債務の履行を求めることができるかについて判断した裁判例を紹介します。
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1 ライフログ活用サービスにおける事業者の留意点について
数年前から「ライフログ」という言葉が話題になり、最近は定着してきましたが、行動ターゲティング広告等のライフログ活用サービスにおける事業者の法的な留意点をまとめてみました。
2 裁判例紹介―最高裁平成24年12月14日判決
根保証契約の元本確定期日前に被保証債権を譲り受けた者であっても、保証人に対して保証債務の履行を求めることができるとした裁判例を紹介します。
3 弁護士Blog情報
弊事務所所属弁護士の最近のBlog記事を紹介します。
1 ライフログ活用サービスにおける事業者の留意点について
「ライフログ」とは、パソコンや携帯端末等を通じて取得・蓄積された利用者のネット内外の活動記録です。事業者は、消費者のライフログを取得・蓄積することで、その消費者の興味にマッチした情報を提供したり、位置情報を利用して適切な行動支援を行ったりすることが可能になります。
消費者の側からすれば、ネットで何を検索したか、何を購入したか、どこにいるか等の情報が事業者に蓄積されていくことに薄気味悪さを覚えます。事業者としては個人情報保護法違反やプライバシー権侵害にならないよう留意する必要性があります。
まず、個人情報保護法違反についてですが、これは個人識別性を有するかどうか(要するに、特定の個人と紐付けできるかどうか)がポイントです。クッキーを利用した行動ターゲティング広告などは、一般的には、個人識別性を有しない情報を利用しているはずなので、個人情報保護法違反が問題となることは少ないと思われます。もっとも、他の情報(契約者情報等)を照合することで容易に特定の個人を識別できる場合や長期間かつ大量の情報収集によって個人を特定できてしまう場合などには、個人情報保護法の適用を受けることになります。個人情報保護法の適用を受けることになれば、利用目的の特定・明示等様々なルールを遵守しなければなりません。
次に、プライバシー権を侵害しないかが問題となります。通常、プライバシー権の侵害というと、そのプライバシー情報が公開されることが前提となっているようにも考えられますが、ライフログ活用サービスでは収集された情報は公開されないことが一般的です。しかしながら、裁判例などに鑑みると、プライバシー情報は収集、保管又は使用により侵害され得ると解されています。このため、ライフログ活用サービスにおいてもプライバシー権侵害は問題となり、情報収集方法、収集目的や保管について適切であったかどうか問題となります。
なお、収集された情報が、匿名性を有している場合にはプライバシー権侵害とならないのが原則ですが、相当長期間に収集された情報が転々流通することでその個人を特定することが可能になることもありますから、匿名性を有しているからといってプライバシー権侵害の可能性がないとは言えません。
また、情報公開法5条が、個人識別性を有しないが公にすることによりなお個人の権利利益の害するおそれがある場合を想定していることからすれば、個人の人格と密接に関係する情報(病気の状況等)については、匿名性を有していてもなおプライバシー権侵害の可能性を有すると考えられます。
ライフログ活用サービスを利用する事業者としては、「一般社団法人 インターネット広告推進協議会(JIAA)」のガイドラインなどを参考にして、情報取得について利用者に通知する等の方法で透明性を確保し、利用者自身による情報収集停止の手段を提供するなど利用者関与の機会を確保し、苦情窓口を設ける等の体制を構築し、一定期間経過した情報は完全消去するといった形で無駄な情報まで蓄積しない等の内部ルールを策定し、遵守することが望ましいでしょう(鈴木俊)。鈴木俊のなるほど
2 裁判例紹介―最高裁平成24年12月14日判決
通常の保証契約であれば保証の対象になる債権(被保証債権)が譲渡されれば、これに随伴して保証人に対する保証債権も被保証債権の譲受人に移転することになりますが、根保証契約の元本が確定する期日の前に被保証債権が譲渡された場合、保証人に対する保証債務履行請求権(保証債権)が被保証債権の譲受人に移転するかについて、解釈上の争いがありました。この争点について、最高裁としてはじめて判断を下したのが本件です。
本件において、Yは、Bの債権者となるAとの間で、平成16年6月、Bの債務を被保証債務とする根保証契約を、保証期間5年間、極度額48億3000万円として締結しました。
Aは、Bに対して平成20年8月に7億9900万円を貸付けましたが、元本確定期日の前である平成20年9月、この貸付けによって生じた貸金債権をXに譲渡しました。
本判決は、根保証契約を締結した当事者は、通常、元本確定期日前に被保証債権が譲渡された場合であっても、保証人に対する保証債権がこれに随伴して移転することを前提に契約を締結していると判示しました。その上で、本判決は、別段の合意があれば被保証債権の譲受人に保証債権が移転しないことを認めつつ、本件ではそのような別段の合意が伺われないとして、XのYに対する請求を認容しました(佐藤亮)。佐藤亮のなるほど
参考:最高裁平成24年12月14日判決(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121214114813.pdf
3 弁護士Blog情報
NHK スペシャル 「日本国債」を見て(古田利雄)古田利雄のなるほど
https://www.clairlaw.jp/blog/toshiofuruta/2012/12/nhk.html