横浜DeNAベイスターズが発足することになりました。色々と議論もありますが、地域に愛される球団になって欲しいですね。
さて、今回は、事業者における内部通報制度の導入状況や導入の際に注意すべき点、区分所有者の共同利益を侵害する者の有する区分所有権の競売を求める訴えの口頭弁論(裁判所での主張立証手続)が終了した後に、対象となった区分所有権などが譲渡されたときは、その譲受人に対しては競売を申し立てられないとした最高裁決定をご紹介します。
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1 内部通報制度について
事業者における内部通報制度の導入状況及び導入の際に注意すべき点をご紹介します。
2 裁判例紹介―最高裁平成23年10月11日決定
区分所有者の共同利益を侵害する者の有する区分所有権の競売を求める訴え(建物区分所有法59条1項)の口頭弁論(裁判所での主張立証手続)終結後、被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないとした最高裁決定をご紹介します
1 内部通報制度について
今回は、事業者における内部通報制度の導入状況及び導入の際に注意すべき点について説明します。
平成18年4月に公益通報者保護法(以下、「法」といいます。)が施行されてから、3年半が経過しましたが、消費者庁の調査によると、内部通報制度を導入している事業者は全体の約46%だそうです。
公益通報者保護法は、会社が通報者に対し公益通報をしたことを理由として解雇したり、降格、減給等の不利益な取り扱いを行うことを禁止することで、会社従業員等からの情報提供を行いやすくし、会社の不祥事予防や問題への速やかな対応ができるようにし、ひいては国民生活の安定や社会経済の健全な発展に資することを目的として制定されました。
法が保護対象としているのは、一定の法律に規定される犯罪行為についての通報者ですが、内部通報制度を導入している会社では、保護対象の通報内容の範囲を広げているところが多いようです(通報内容を法令違反行為全般や内規違反、倫理違反等まで拡張している規程が見受けられます)。
ただ、内部通報制度を導入し、内部通報窓口を設置していても、ほとんど通報が行われていない会社が多いと聞きます。通報することにより、何らかの不利益な取り扱いがなされるのではないかという不安を従業員等が持っているのではないでしょうか。
そこで、従業員等と会社との間の信頼関係を構築するために、制度を導入する際に、必要となるのは、内部通報制度についての十分なトレーニングです。
まず、通報窓口となる部署や会社のマネージメントに対するトレーニングとして、内部通報制度の目的、会社のコンプライアンスを考えるにあたって有用なツールとして位置づけていること、また、通報された情報をいかに取り扱うか等々についてのトレーニングが必要となります。そして、通報を受ける側だけでなく、従業員に対してのトレーニングとして、内部通報制度が会社や会社従業員の犯罪事実だけではなく、もっと広く会社のコンプライアンスという観点からの活用をも予定しているということを十分に伝える必要があります。
このようなトレーニングを行うことで、会社の活動に従事し、実態をよりよく知る従業員等からの情報収集に、内部通報制度を活用していくことができるようになると思われます。
また、教育だけでなく、通報は匿名で構わないとしたり、通報窓口を外部に設置し、外部窓口に連絡する際は実名通報とするが、外部窓口から会社に対して報告する際は匿名とするなど通報の仕組みを工夫することで、従業員等による内部通報制度の活用を促進することが可能です。
匿名通報を受け入れると、噂のレベルで通報がなされ、調査に時間がかかってしまったり、混乱が生じたりなど問題が生じる恐れがないわけでもありませんが、寄せられた情報を取捨選択する能力を高めていく努力も企業としてはしていく必要があります。有用な情報が埋没してしまうことの方が、企業にとって不利益であるとの意識を持つ必要があるのではないでしょうか。
ちなみに、消費者庁が取りまとめた規程集のうち75規程で、通報窓口の設置場所の規程を設けており、内部窓口のみの設置が46規程、外部窓口のみの設置は4規程、内部及び外部の両方の窓口を設置しているのは25規程だそうです。また、53規程で、実名又は匿名通報の取扱いについての規程がなされており、実名通報のみを受け付けるとしている規程が6規程、原則は実名通報のみであるが、一定の条件や前提のもと匿名通報も受け付けるとしている規程が27規程、いずれでも受け付けるとしている規程が20規程だそうです。
当事務所でも、内部通報の外部窓口を行っており、いくつかの顧問先から実際に委託を受けています。サポートが必要であればご相談いただければと思います(吉田南海子)。吉田南海子のなるほど
参考:消費者庁HP(民間事業者における内部通報制度に係る規程集)
2 最高裁平成23年10月11日決定
建物区分所有法(いわゆるマンション法)は、区分所有者に対して、区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止し、禁止された行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいときは、区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができるとしています。
この区分所有者の共同利益に反する行為には、建物の不当損壊・不当使用、騒音・悪臭、プライバシー侵害等だけでなく管理費の滞納も場合によってはこれに該当するとされています。
本件も、未払管理費が原因となって、マンションの区分所有権の競売請求がされた事案です。
本件では、管理組合は裁判に勝訴したものの、判決が確定する前に被告が共有持分を譲渡していました。
裁判所は、「競売の請求は、特定の区分所有者が、区分所有者の共同の利益に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから、同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである」と判示して、このように持分が譲渡されたときは、これを譲り受けた相手方に対して法的手続を進めることができないと判断しました。
建物区分所有法59条1項に基づく競売請求に滞納管理費の回収手段としての機能が期待されることも少なくありませんが、本決定はその機能を発揮できない場面もあることを示した点で実務上意義があると思い紹介した次第です(佐藤亮)。佐藤亮のなるほど
参考:最高裁平成23年10月11日決定