赤く色づいたポインセチアを最近頂き、すっかりクリスマスな気分になってしまいました。ポインセチアは9月下旬ごろから一定の期間、日を当てる時間を調整しないと赤くならないそうです。緑のポインセチアではクリスマス気分になりませんね。
今回は、「紅いもタルト」の文字を普通に表示したにすぎない標章について、商標登録を認めないとした裁判例と、雇止めされた期間契約社員からの雇用契約上の地位確認請求について、雇用継続の合理的期待を有するに至ったかの判断は、被告会社での契約更新だけでなく親会社での契約更新を含めて考慮すべきとして、雇止めが無効であるとした裁判例を紹介します。
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1 裁判例紹介−知財高裁平成22年6月30日判決
「紅いもタルト」の文字を普通に表示したにすぎない標章について、商標登録を認めないとした知財高裁判決を紹介します。
2 裁判例紹介−京都地裁平成22年5月18日判決
雇止めされた期間契約社員からの雇用契約上の地位確認請求について、雇用継続の合理的期待を有するに至っているかの判断は、被告会社での契約更新だけでなく親会社での契約更新を含めて考慮すべきとして、雇止めが無効であるとした裁判例を紹介します。
1 裁判例紹介−知財高裁平成22年6月30日判決
お菓子の製造会社であるXは、平成17年6月10日、紅色で「紅」の文字を他の文字の倍程度の大きさで表示するなどしてはいるものの、顕著な特徴を有するものではなく、ほぼ「紅いもタルト」の文字を普通に表示したにすぎない標章(以下「本件標章」とします。)を、指定商品「紅芋を用いたタルト」として特許庁に商標登録出願しましたが、平成18年4月24日、特許庁はこれを拒絶査定しました。これについてXは特許庁に不服の審判請求をしましたが、平成21年9月29日、特許庁は請求不成立の審決をしました。
本件は、Xが、かかる特許庁の請求不成立の審決について、知財高裁に取消しを求めた事案です。
商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録を受けることができないと定めています。
知財高裁は、本件標章「紅いもタルト」を指定商品「紅芋を用いたタルト」に使用した場合、その日本語の持つ通常の意味からして、取引者・需要者は「原材料として紅いもを用いたタルト」と理解し、商品の原材料又は品質を表示したものと認識するというべきである、などとして商標法3条1項3号に該当し、商標登録を受けることはできないと認定しました。
次に、商標法3条2項は、商標法3条1項3号に該当する場合であっても、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、例外として商標登録を受けることができると定めています。
そこで、Xは、昭和61年当時、紅芋を利用したタルトを製造販売する者はXだけであったなどとして、本件標章はXの商品であると需要者に認識されるものであり、商標登録を受けることができると主張しました。
しかし、知財高裁は、審決の時点では、複数の菓子販売事業者が「べにいもたると」「紅いもタルト」及び「紅芋タルト」の文字を「紅芋を用いたタルト」に使用しており、Xの販売する商品には本件標章のみならずXの商号等も表示され、かかる商号等をもって商品の出所を示していると認められるなどとして、本件標章が、全国的にみて専らXの業務に係る商品であることを表示したとまで認めることはできず、商標法3条2項には該当しないとしました。
本件は、競合他社の参入前である昭和61年の販売開始時に、ロゴ等を工夫してより顕著な特徴のあるものを商標登録するべきであったと言えるでしょう。(鈴木理晶)。
参考: 最高裁平成22年4月13日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100701130907.pdf
商標法3条1項3号、2項
2 裁判例紹介−京都地裁平成22年5月18日判決
本件は、原告?が、被告会社から期間の定めのある雇用契約を更新しない旨の通知(雇止め)を受けたため、被告Y会社に対して、?雇用契約上の地位の確認と、?賃金の支払いを求めた事案です。
Xは、まずA会社に、平成13年6月1日、期間の定めのある社員(契約社員)として雇用され、雇用契約を7回更新し、約5年間勤務したのち、A会社の業務の一部を承継したA会社の子会社であるY会社に移籍し、雇用契約を2回更新して、3年勤務しました。
Xは、A会社において、Xの雇用期間が3年を超える日以降も継続的に続く企画の担当をしていました。
Y会社は、原則として契約社員との雇用契約期間につき3年間を上限とし、それ以上の更新を認めないルール(3年ルール)を採用していました。
本判決は、まず、Xの雇用契約期間や契約更新回数を考えるにあたっては、Y会社との間の雇用契約だけを考慮するのではなく、A会社での勤務とY会社での勤務が継続しているものと考えるのが相当としました。
次に、Y会社が契約社員については3年ルールを厳格に適用していなかったとしたうえで、Y会社がXに対して3年ルールについて説明したと認めるに足りる証拠はないとしました。
Xの契約期間は、勤続年数7年9か月、更新回数10回に及んでいること、Xは契約の満了時期を迎えても翌年度に継続する業務を担当していたことなどからすれば、Xが契約の更新を期待することに合理性があるとし、他方で、Y会社には雇止めをするだけの合理的理由がないとして、本件雇止めは無効であるとし、Xが期間の定めのある雇用契約上の地位にあることを確認し、判決確定までの賃金請求を認容しました。
本件では、会社に3年ルールなる方針があったようですが、例外的取扱いも多く、適用も緩やかだったようです。本件の事実関係からすると、本件の雇止めが有効になるためには、被告会社の業績悪化等ある程度の厳しい要件を満たす必要がありそうです(田辺)。
参考: 京都地裁平成22年5月18日判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100604200427.pdf