突然、秋がやって来ましたね。さっそく大好物の栗を食べようと思い、生栗を購入し栗ご飯を炊きました。生栗の皮むきに悪戦苦闘したおかげ(?)で、一層おいしく頂けました。
今回は、相続によって相続人間で共有されることになった株式の会社に対する権利行使方法と、会社分割について、詐害行為取消権による取消し及び価格賠償を認めた裁判例を紹介します。
1 相続によって承継した株式の権利行使について
相続によって、相続人間で共有されることになった株式の会社に対する権利行使方法について紹介します。
2 裁判例紹介−東京地裁平成22年5月27日判決
会社分割について、詐害行為取消権による取消し及び価格賠償を認めた裁判例を紹介します。
3 チャイナカップインターナショナルレースに出場
当事務所の古田弁護士が、チャイナカップインターナショナルレースに出場します。
1 相続によって承継した株式の権利行使について
複数の相続人を持つ株主が、株式を誰に相続させるかを遺言しないで亡くなると、その株式は、遺産分割が終了するまでの間、共有状態になります。
会社法は、株式の発行会社の事務取扱の便宜のために、このように共有状態となった株式については、共有者のなかから権利行使をする者を決めて、それを会社に通知しなければ権利行使させなくてもよいとしています(法106条)。この権利行使者の指名は、共有物の管理行為に準じて、共有持分の過半数をもって行うものとされています(民法252条・最高裁平成9年1月28日判決)。
相続人間の人間関係が円満でない場合、特に亡くなった人が同族的な企業のオーナー経営者のときは、しばしば、この権利行使者の指定が問題になります。
オーナー経営者が株式の大部分を持っている場合には、権利行使者の指定を誰にするかによって株主総会を牛耳ることができるので、権利行使者の指定をするか否かについて、相続人間の利害が真っ向から対立するからです。
ある裁判例は、共有持分の多い株主らが、対立する株主と実質的な協議を行わず、形式的に権利行使者の指定をした体裁を整えて株主総会で権利行使を行ったという事案について、「共同相続人による株式の準共有状態は、遺産分割が完了するまでの暫定的な状態にすぎないから、権利行使者の指定及びこれに基づく議決権の行使は濫用あるいは悪用するものであってはならない。共同相続人間で事前に議案内容の重要度に応じしかるべき協議をすることが必要で、この協議を全く行わずに権利行使者を指定するなど、共同相続人がその権利を濫用した場合には、当該権利行使者の指定ないし議決権の行使は権利の濫用として許されない」(大阪高裁平成20年11月28日判決)としています。
また、別の裁判例では、合併した会社の発行済株式の過半数を有していた株主の共同相続人が、権利行使者の指定をしない間になされた総会決議の無効を主張したケースについて、会社側の「権利行使者の指定がなされていないから共同相続人らは原告適格を有しない。」という抗弁を退けました(最高裁平成3年2月19日判決)。なぜならば、会社は本来権利行使者が指定されたことを前提として、株主総会決議が成立したことを主張・立証するべき立場にあるのに、権利行使者の指定の手続の欠缺を理由に共同相続人の原告適格を争うことは、訴訟上の防御権の濫用として許されないからです。
これらの事例は、事案に則した公正・公平性を維持するために、法律の形式的な適用を認めなかったものですが、同族企業の経営者としては、事業承継対策を怠っていると、このように深刻な紛争になることがあるということも知っておくべきでしょう(古田)。
参考:最高裁平成9年1月28日判決
最高裁平成3年2月19日判決
会社法106条、民法252
2 裁判例紹介−東京地裁平成22年5月27日判決
リース会社である原告は、クレープ飲食事業等を営むA社に対し、リース契約に基づく損害賠償債権を有していました。この状況の中で、債務超過であったA社が会社分割(新設分割)によって、被告B社に対し、A社が有するほぼ全ての無担保資産(プラス財産)を含むクレープ飲食事業に関する権利義務を承継させ、A社には、会社分割の対価として得たB社発行の株式以外、目ぼしい資産がない状態になりました。なお、A社の原告に対する債務はB社に承継されなかったため、原告は、B社に対して、上記損害賠償金の支払いを請求することはできませんでした。そこで、原告が、B社に対して、上記会社分割が詐害行為に当たるとして、詐害行為取消権に基づき、上記会社分割の取消し及び価格賠償を求めました。
争点は、?会社分割が詐害行為取消権の対象となるか、?会社分割に詐害性があるか、?取消しの範囲及び原状回復の方法等です。
?については、会社分割は組織法上の行為であるから詐害行為取消権の対象にならないのではないか、会社分割の無効の訴えとは別に、取消しを認めると法的な安定性を害するのではないか、?については、A社は、B社に承継させた財産の対価としてB社株式の交付を受けており、A社の総財産に増減はないから、詐害性もないのではないか、等の主張がB社からなされましたが、裁判所は、詐害行為取消権による取消し及び価格賠償を認め、原告の請求を認容しました。
最近は、会社分割を用いた経営再建を検討している方も多いようですが、本判決によれば取り消されるリスクを伴う手法といわざるをえません。会社分割に対する詐害行為取消権の行使が認められるかについて、実務は固まっていませんが、今後の動向を注視する必要があります(田辺)。
参考:民法424条
3 チャイナカップインターナショナルレースに出場
明日10月28日(木)から中国の香港およびシンセンで行われるチャイナカップインターナショナルレースに、日本外洋帆走協会の枠で、HYMC 葉山マリーナヨットクラブ チーム のスキッパー(艇長)として参加します。
定員12名の40.7フィートの同型ヨット30艇で競い合います。
参加者は、中国チーム8を始め、アジア諸国、欧米諸国です。
ご声援をお願いします。
状況は、ツイッター、ブログでご紹介します。
唯一の日本チームとして頑張りたいと思いますので、声援コメント等を頂ければ、クルー間で共有したいと思います。
ブログ:
ツイッター: http://twitter.com/clairlaw
古田利雄