金曜日から南アフリカワールドカップが開催されます。代表選手には悔いのない戦いをしてもらいたいですね。
当月末に株主総会を控えている会社が多いことと思います。そこで、今回は、株主総会についての話題をお知らせします。
また、7月16日に行う講演&ネットワーキングパーティをご案内します。
1 今年の株主総会の傾向と運営方法について
(1) 昨年までの株主総会の動向と今年の予想、(2) 株主構成や議決権行使の状況、(3) 株主総会の運営方法、(4) 法令の改正への対応 について説明します。
2 講演「中国でビジネスをしよう」とネットワーキングパーティのご案内
7月16日(金)に中国の専門家である九門崇さんの講演「中国でビジネスをしよう」と、ネットワーキングパーティを行います。
1 今年の株主総会の傾向と運営方法について
(1) 昨年までの株主総会の動向と今年の予想
昨年の6月総会は、それまでの総会のトレンドの延長線上にありました。以下に概要を示しますが、本年の総会も大きな変更はないと予想されます。
以下のデータからは、株主の総会における存在感が増していること、会社側は存在感の増した株主を味方につけるべく、IRに配慮した総会運営をおこなっていることがわかります。
・ いわゆる株主総会集中日に開催した会社は全体の52%
・ 本社か自社施設で開催した会社は全体の47%
・ 100名以上の株主が出席した会社は全体の34%
・ 一般株主の出席が過去5年間に増加した会社は全体の40%、変わらないのは全体の29%
・ 平均所用時間は54分で、1時間以上の会社は全体の30%
・ 株主総会をIRの一環と捉えている会社は全体の85%
・ 株主の発言が無かった会社は全体の37%
・ 質問事項として多かった項目は、経営政策(47%) 配当政策(22%) 財務状況(18%) 株価動向(13%)
・ 株主提案権の行使があった会社は全体の1.2%
・ 「否」の議決権行使をした機関投資家が存在した会社は全体の59%
・ 「否」の多かった議案は、取締役選任(72%) 定款変更(41%) 監査役選任(40%) 役員退職慰労金(23%)
・ 役員退職慰労金制度を廃止し、その代替として定例報酬を見直すか業績連動型報酬を導入する企業が増加
・ 買収防衛策を導入している企業は全体の4分の1程度
(2) 株主構成や議決権行使の状況
上場会社の株式持ち合いの解消、ネット証券の普及、長引く低金利政策を背景として、上場会社の株主構成は、個人株主と外国人株主が増加するトレンドが続いています。
個人株主は、平成11年には18%でしたが、平成20年には20%強になっており、外国人株主は平成8年に全体の10%を超え、平成20年には23%強になっています。
このような株主構成の変化や、議決権行使のアドバイスを行うコンサルタントの普及によって、会社提案に対して否決の意思表示をしたり、株主提案を行う株主が増えてきています
平成20年6月総会における企業年金連合会の議決権行使結果は、行使対象企業825社について、全議案の12%の議案に反対しており、議案毎の会社提案への反対行使比率は、取締役選任(32%)、退職慰労金(22%)、買収防衛策(20%)、ストックオプション付与(11%)となっています。
同様に、日本プロクシーガバナンス株式会社の議決権行使助言結果は、対象企業816社について、全議案の20%に反対しており、議案毎の会社提案への反対行使比率は、事前警告型買収防衛策(100%)、役員賞与支給(85%)、退職慰労金制度廃止に伴う打ち切り支給(84%)、取締役選任(41%)、役員退職慰労金支給(26%)などとなっています。
(3) 株主総会の運営方法
株主総会で株主から動議や質問が出された場合、議長はどのように取り扱うべきでしょうか。
株主総会の議事進行が適切になされなかった場合、株主は、裁判所に対して、株主総会決議の取消を求める訴えを起こすことができます。例えば、株主から取り上げなければならない動議が提出されたにもかかわらず、その動議を議場に諮らなかったり、回答しなければならない質問に回答しなかったりすると、会社法の定める取消事由にあたることになります。
それでは、何が取り上げなければならない動議で、何が回答しなければならない質問でしょうか。
まず、動議についていえば、取締役会のある会社の場合、株主は総会当日に新たな議案を動議として提出することはできず、選任する取締役の数を減らすような修正動議しか提出できません。総会当日に新たな議案が提出されたのでは、委任状によって出席した株主が意思表示できないからです。修正動議が提出されたとき、議長は会社の提出議案とともに採決することができ、会社側提案が可決されれば動議は否決されたものとして扱うことができます。
また、株主は、総会の運営手続に関して、議長不信任、総会の延期等の動議を提出することができます。議長は、これらの動議が提出された場合には、その都度、会場に諮らなければなりません。これは株主総会が会議体であることから導かれるルールです。
さらに、株主は議案を理解して議決権を行使するために必要な範囲で、議案について質問をすることができます。この質問権の裏返しとして、会社は質問された事項について回答しなければなりません。ただし、質問の内容が議案と関連性がない場合や営業秘密に関するような事項であれば回答する義務はありません。
個人株主は、株主総会において質問することが法的に許される事項か否かを考慮せずに、株価の動向や、配当、株主優待制度など自分の興味がある範囲について質問を行う傾向があり、一度質問した株主は翌年の株主総会でも同じような質問をする傾向が確認されています。実務的には、会社側は、そのような質問でも答えられる範囲で回答をおこなっていますが、悪意のある執拗な質問については、説明義務の範疇でないことを示して質疑を打ち切っても構いません。
議案に関連のある質問がなされた場合、会社は、一般的な株主としてその議題に議決権を行使することができる程度に説明を行なう必要があります。例えば、退任取締役に会社所定の基準に従って退職慰労金を支給するという議案に対して、「会社所定の基準とはどのようなものか。」と質問されたときは、会社はその基準の内容について説明しなければなりません。この説明は、議長が自らおこなってもよいですし、担当役員や担当従業員を指名して説明させても構いません。
ただ、回答することによって、株主共通の利益を著しく害する場合や正当な理由があるときは、回答を拒むことができます。したがって、営業秘密の開示を求められた場合などは説明する必要はありません。
実務的には、株主総会における会社の回答が不十分であるという指摘を受けないようにするために、質問に対する説明義務の範囲を超える部分については、株主総会の後に株主懇談会の時間をとって説明するのが適当です。
(4) 法令の改正への対応
会社法、金融商品取引法関連の法令の改正への対応について、当事務所の見解を簡単にコメントします
・ 役員について、重要な兼職か否かは、業務専念性及びコンフリクトの有無をベースに判断すべきです。
・ 1億円以上の役員報酬について質問があった場合、会社法上は回答の義務はありませんが、任意に回答しても構いません。
・ 議決権行使結果についての臨時報告は、総会前日までの、議決権行使書(及びWEBによる議決権行使)を基準におこなって構いませんが、その旨の注記をするべきです(古田)。
2 講演「中国でビジネスをしよう」 ネットワーキングパーティ のご案内
中国の専門家である九門崇さんの講演「中国でビジネスをしよう」及びネットワーキングパーティを行います。
日時:2010年7月16日(金)
17:15〜 「中国でビジネスをしよう」
18:30〜 ネットワーキングパーティ
場所:六本木ヒルズ森タワー51F
六本木ヒルズクラブ クラブルーム
http://www.roppongihillsclub.com/visitor/dfw/jp/common/pdf/map.pdf
費用:10,000円 (顧問先、役員関与先は1名無料です。)
振込先:みずほ銀行/町村会館出張所(普)2830940 弁護士法人クレア法律事務所
申込先:電子メールにて、info@clairlaw.jp 宛に、件名を「7月16日講演申込」とし
て、参加者名、会社名、連絡先メールアドレスをお送りください。
九門崇さんのプロフィール:
慶應義塾大学法学部卒。ミシガン大学公共政策大学院修士課程修了。その後、北京語言文化大学で半年間中国語研修。1998年より、ジェトロ海外調査部米州課勤務。清華大学でのMBA(経営学)・中国語の研修、ジェトロ海外調査部中国北アジア課勤務などを経て、現在に至る。
九門崇さんのコラム:日経BP「中国から探るグローバルビジネス」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20080923/100464/