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今回は、管理監督者でも深夜労働したときは割増賃金が発生するとした最高裁判決、独占禁止法において私的独占が規制される理由について紹介します。
1 裁判例紹介−最高裁判決平成21年12月18日
労働基準法41条2号に定める「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(いわゆる「管理監督者」)でも、深夜労働したときは割増賃金が発生するとした最高裁の判決をご紹介します。
2 独占禁止法において私的独占が規制される理由について
今回は、独占禁止法について、経済学の視点からご説明します。
1 裁判例紹介−最高裁判決平成21年12月18日
労基法は、管理監督者には労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されないと定めています(同法41条2号)。従って、管理監督者が1日8時間を超えて労働しても、休日に労働しても、会社としては割増賃金を支払う必要はありません。ただ、深夜割増賃金の支払義務については、従来から司法判断は曖昧でした。
本判例の高裁判決も、管理監督者には深夜割増賃金の規定は適用されないと判示しています(東京高裁平成20年11月11日判決)。
しかしながら、本判例は、管理監督者に該当する労働者は労基法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができるものと解するのが相当であるとして、高裁判決を破棄しています。もっとも、本判例は、管理監督者の所定賃金が労働協約、就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、その額の限度では深夜割増賃金の支払を受けることを認める必要はないとも判示しています。この判示内容自体は行政通達(昭和63年3月14日 基発第150号,平成11年3月31日 基発第168号)の内容とほぼ同じものです。本事案においては、労働協約や就業規則等において、所定賃金に深夜割増賃金を含める趣旨であったかどうかが不明でしたので、その点について審理するよう高裁に差し戻しとなりました。
以前にも、日本マクドナルドの店長について「名ばかり管理職」の問題が大きくマスコミで取り上げられたことがありましたが、管理監督者については、どのような者が管理監督者にふさわしいかという問題(一般的には、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者とされています)と、管理監督者に深夜割増賃金(割増部分である25パーセント)を支払わなければならないことについて、注意が必要です。
管理監督者については労働時間の算定が難しいことから、賃金規定等において、管理監督者への役職手当には深夜割増賃金も含む旨を明示しておくことが望ましいといえます。もちろん、その前提として、深夜割増賃金相当分を反映した賃金になっている必要があります(鈴木俊)。
2 独占禁止法において私的独占が規制される理由について
今回は、独占禁止法について、経済学の視点から説明をしたいと思います。
いわゆる独占禁止法(正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です)は、第3条で、「事業者は私的独占又は不当な取引制限をしてはならない」と規定しています。
では、なぜ「私的独占」は禁止されなければならないのでしょうか。
まず思いつくのは、独占企業(自社の製品の供給量を調整することにより、自由に価格を決定できる企業)は、完全競争市場の場合に比べて、少ない供給量、高い価格で製品を販売して、利益(利潤)を最大化することとなり、独占企業は、消費者の安く商品を買う機会を犠牲にして暴利をむさぼることになるので、不公平だから、「私的独占」は禁止されなければならない、ということです。
しかし、このような「不公平」の問題は、例えば、独占企業に高い税金を課してこれを消費者に再分配したり、又は、「私的独占」をした企業に対して、独占により取得した利益を吐き出させたり(課徴金による制裁を加える)することで解消できるはずです。にもかかわらず、このような方策をとっていないことからすると、「不公平」が生じることだけでは、「私的独占」を禁止しなければならない理由として必ずしも十分とはいえません。
経済学では、完全競争市場が実現すると、もっとも資源配分が効率的になるとされています(これは「厚生経済学の第一基本定理」と言われ、この効率的な状態を「パレート効率的」といいます)。つまり、市場参加者が「私的独占」を行うことなく、完全に自由に競争できる状態を保つことで、市場における資源配分が最も効率的になると考えられることから、公正且つ自由な競争を促進するためには、完全競争市場が維持されることが必要であるということです。
独占禁止法の「私的独占」の禁止には、上述したような不公平の問題を解決するためだけではなく、経済学的な意味における資源配分を最も「効率的」にする完全競争市場を実現するためという理由も含まれていると考えられます(完全競争市場という仮定は必ずしも現実とは異なりますが)。
なお、平成22年1月1日から改正独占禁止法が施行され、その中で、他の事業者の事業活動を排除することにより私的独占(排除型私的独占)をした事業者に対しても、課徴金が課せられることとなりました。
以前から、他の事業者の事業活動を支配することにより私的独占(支配型私的独占)をした事業者に対しては課徴金が課せられていましたが、排除型私的独占にまで対象範囲を広げ、資源配分をより「効率的」にする完全競争市場を実現するための規制を行うための法改正がなされています。
事業者が適正な自社努力を尽くした結果、競業他社が淘汰されたという場合には、他の事業者を市場から排除してはいますが、排除型私的独占には該当しないので、どのような行為が排除型私的独占に該当するのかは曖昧であるため、公正取引委員会から下記の指針が発表されています。
他の事業者を排除してしまう可能性があるような事業活動を行う前には、これらのルールに抵触しないかどうか検討する必要があります(鈴木理晶、吉田)。
参考 公正取引委員会 排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針
http://www.jftc.go.jp/dk/haijyogata.pdf