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今回は、中国の「不法行為法」のポイント、平成22年4月1日施行の金融商品取引法の一部改正について紹介します。
1 中国「不法行為法」のポイント
中国で平成22年7月1日から施行される「不法行為法」のポイントを解説します。
2 金融商品取引法の一部改正について
金融商品取引法が一部改正されました(一部を除き平成22年4月1日施行)。
主な改正点のうち、今回は 有価証券の発行登録書制度及び売出しに係る開示ルールの見直し について紹介します。
1 中国「不法行為法」のポイント
中国では、平成21年12月26日に「不法行為法」が制定され、平成22年7月1日から施行されます。従来から「民法通則」の不法行為に関する規定や「製品品質法」などがありましたが、本法の制定により個人の権利はより厚く保護されることになります。
主なポイントは以下のとおりです。
ポイント1:無過失責任
日本法と同様に過失責任が原則とされていますが、無過失責任も規定されており、環境汚染、高度危険業務、飼育動物等などにおけるケースでは、無過失でも責任を負う場合があります。
ポイント2:製造物責任における懲罰的損害賠償責任
製造物責任とは、製品の欠陥により他人に損害を与えた場合の責任をいいますが、同法では、製品に欠陥があることを明らかに知りながら製造・販売を続け、死亡または健康に対する重大な損害をもたらした場合、相応の懲罰的損害賠償責任を負うと規定されています。
どの程度の賠償額になるかは今後の裁判例の積み重ねによることになりますが、平成21年6月施行の「食品安全法」における類似の規定では、実際の損害に加えて10倍の賠償金の請求を受けるとされていますので、これがひとつの基準として参考になります。
ポイント3:環境汚染責任
環境汚染により損害が発生した場合、汚染者は過失がなくとも責任を負うとされています。しかも、環境汚染があった場合、汚染と損害との因果関係の不存在について、汚染者が立証しなくてはならないと厳格な責任が定められています。
ポイント4:土地工作物責任
建築物やそれに設置された物が脱落して他人に損害を与えた場合、所有者、管理者等は、過失がないことを証明できない限り不法行為責任を負うとされています。更に、建築物が倒壊した場合、建設会社と施行業者が連帯して無過失責任を負わなくてはなりません。
ポイント5:インターネットプロバイダーの責任
インターネットを通じて権利を侵害された者は、プロバイダーに対して削除やアクセス切断等の措置を取るように通知する権利があり、プロバイダーは、通知を受けた後に必要な措置を講じていなければ、損害が拡大した部分について責任を負わなくてはなりません。
ポイント6:公平責任
中国の不法行為法には、損害の発生について被害者と行為者のいずれにも過失がない場合、実際の状況に基づき双方が損失を分担するという規定があり、公平責任と呼ばれています。その内容は不明確で、無過失責任が定められていない場合でも、この規定の適用により無過失責任を負うことも考えられます。
中国の不法行為責任法は、日本のそれと基本的には類似していますが、特殊な規定も多く存在します。今後、中国でのビジネスの機会は更に広がることと思われますが、予想外な責任を負うことにならないよう、ビジネスプランを策定する際には、法律を十分にチェックし、リスクについても十分検討することが重要です(佐藤)。
2 金融商品取引法の一部改正について
金融商品取引法が一部改正され、主な改正点としては、(1)有価証券の発行登録書制度及び売出しに係る開示ルールの見直し、(2)特定投資家と一般投資家の移行手続きの見直し、(3)格付会社に対する規制導入、(4)金融ADRの創設、(5)有価証券デリバティブ取引における預託金銭の分担管理義務の導入、(6)金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れについての整備がありますが、今回は(1)について紹介します。
改正前の有価証券の発行登録書には有価証券の種類、発行予定額、発行予定期間等が記載されていました。そして、発行登録書に係る募集により有価証券が発行されると、発行額分だけ発行可能額が減少しますが、当該有価証券が償還された場合でも発行可能額は減少したままとなっていました。
しかし、今回の改正により、発行予定額の記載に代えて、発行残高の上限を記載することができることとし(金商法23条の3)、発行後に償還された額だけ発行可能額を増額させることができるようになりました。
また、改正前は、「有価証券の売出し」とは、既発行有価証券の売付けの申込み又はその買付けの申込みの勧誘のうち、「均一の条件」で多数(50人以上)の者を相手方として行うものと定義していましたが、改正後は、「均一の条件」という文言は削除されました。
さらに、以下のように改正し、有価証券の売出しに係る開示ルールを整備しました。
・ 既発行の有価証券の売付け勧誘等のうち、適格機関投資家のみを相手方として行う場合であって当該有価証券が適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないもの、少人数の者を相手方として行う場合であって当該有価証券が多数の者に所有されるおそれが少ないもの等は、「有価証券の売出し」に該当しないこととなりました。そして、これらの場合には、その相手方に対し当該売付け勧誘等について届出が行われていない旨等を告知することを義務付けることとされました(金商法第2条第4項、第23条の13 )。
・ 金融商品取引業者等が行う外国で既発行の有価証券又はこれに準ずる有価証券の売出しのうち、国内における当該有価証券に係る売買価格に関する情報を容易に取得することができることその他の要件を満たすもの(以下「外国証券売出し」という。)については、当該有価証券の売出しに関し届出をしているものでなくても行うことができることされました(金商法第4条)。
これまで、法定開示をする必要がないような場合にも売出しに該当するとして法定開示が要求されてきた場合等がありましたが、改正により、このような弊害が減少する可能性が出てきました。また、改正前は売出しに該当すれば全て法定開示が要求されていましたが、改正後は、売出しに該当しても法定開示が不要な場合も生じるようになりました。もっとも、法定開示が不要な場合にも、情報開示等の一定の義務が課される場合がありますので、実務上よく確認する必要があります。
金商法は施行されてまだ数年しか経過しておりませんが、今後も実務に合わせて改正されていくことが予想されますので、引き続き注意をしておいた方がよいでしょう(平井)。
参考 金融商品取引法 2条4項、4条、23条の3、23条の13、27条の32の2、34条の2、34条の3、
34条の4
金融商品取扱法等の一部を改正する法律(金融庁ホームページ) target="_blank">http://www.fsa.go.jp/common/diet/171/index.html