今回は,電子商取引及び情報財取引等に関する準則(改訂版)の解説,一般社団法人制度の解説,出版情報「遺留分をめぐる紛争事例解説集」と,インド バンガロール見学旅行のご案内をお送りします。
1 【解 説】電子商取引及び情報財取引等に関する準則(改訂版)
電子商取引(いわゆる「Eコマース」)については,これを直接の適用対象とした法律はなく,民法などの一般法や,薬事法・健康増進法などの業界法が適用されます。そのため,Eコマースに関する様々な法律問題について,関連法規がどのように適用されるのか解釈上の問題が生じますが,経済産業省がこの点に関する解釈を示した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が,平成20年8月に改訂されました。
例えば,薬事法・健康増進法,貸金業法または金融商品取引法は,商品やサービスの「広告」について規制を設けていますが,Eコマースにおいては,掲示板やブログなどに第三者が書き込んだ情報,当該情報と連携するアフィリエイトなどを,広告宣伝手段や販売促進手段として活用することが行われています。このような事業者以外の第三者が,自発的に行う商品やサービスに関する情報発信については,どこまで「広告」として規制対象にするかという問題が生じます。
今回の改訂では,例えば薬事法・健康増進法について,事業者の責任を次のように示しています。すなわち,消費者などの第三者の掲示板への書き込みその他の情報発信を積極的に利用した場合には,このような情報発信は「広告」とみなされ事業者に薬事法・健康増進法違反の責任が生じる可能性が高くなります。逆に,利用規約などで効果効能についての書き込みを禁止し,実際に違反する書き込みを削除するなどの努力をしていた場合には,責任を負う可能性は低くなります。また,自社製品の効果効能について記載されたウェブサイトへ,自社のウェブサイトからリンクを張る場合や,逆に,そのようなウェブサイトから,自社のウェブサイトにリンクを張ってもらう場合などにも,薬事法・健康増進法違反の責任が生じる可能性があります。
金融商品取引法や貸金業法など広告を規制しているものについても同様に考えられており,Eコマースで第三者の書き込みやウェブサイトを利用する場合には,この「準則」にも留意する必要があります(佐川)。
参考:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(改訂版) 経済産業省
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/080829jyunsoku.pdf
2 【解 説】一般社団法人制度
平成20年12月1日より,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下「一般社団法人法」といいます。)が施行されます。一般社団法人は,設立手続きが極めて簡便で,一定の要件を満たせば税法上の優遇措置もあることから,今後相当の利用が期待されます。
そこで,今回は,一般社団法人制度の概略をご紹介します。
【特色】
・ 監督官庁がなく,設立時に官庁の許認可が不要
・ 定款の作成・認証と登記によって成立
・ 出資金が不要
・ 事業目的に制限はなく,公益・共益・収益いずれも可能
・ 設立時社員は2人以上必要だが,設立後は1人でよい
・ 機関は社員総会と理事1名が最小限必要
・ 剰余金の分配はできないが,理事や従業員に給与の支払可
・ 非営利型法人に該当する場合は課税上優遇措置あり
このように,社員の持分に関する規律がない点を除けば,ほぼ株式会社と同様の組織形態といえます。
【設立手続】
一般社団法人の設立は,(1)定款の作成・認証→(2)設立時理事等の選任→(3)主たる事務所の所在場所の決定→(4)設立時理事等による設立手続が法令または定款に違反していないことの調査→(5)設立登記の申請→(6)社員名簿の作成,という流れで行われます。
【定款の作成・認証】
設立時社員は2名以上必要ですが,その資格は基本的には株式会社の発起人と同様です。
定款には,目的,名称,主たる事務所の所在地等といった絶対的記載事項(一般社団法人法11条1項),経費の負担に関する定め,退社の事由といった相対的記載事項(同法27条,29条1項など),理事の報酬,残余財産の帰属といった任意的記載事項(同法89条,239条1項など)を記載します。
定款が完成したら,公証人の認証を受けます。この際の収入印紙は4万円です。但し,定款は電子定款によってもよいとされており,この場合,収入印紙4万円は不要です。
【設立登記の申請】
申請期間は,設立時社員が定めた日等から2週間以内とされています(同法301条1項)。
登記事項や添付書面は,同法301条2項,同法318条2項に法定されており,登録免許税は,1件につき6万円です。
一般社団法人法の施行により,ますます団体設立の幅が広がりました。その分,団体設立を検討する際に疑問を抱く部分も増えるかと思います。どのような形態を選ぶのがよいか,各団体のメリットデメリットについて悩まれた場合には,弁護士にご相談ください(佐藤)。
参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
11条1項,27条,29条1項,89条,239条1項,301条1項,318条2項
パンフレット「非営利法人制度」 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153-1.pdf
3 お知らせ
□ 出版情報「遺留分をめぐる紛争事例解説集」 □
当事務所の星野雅紀弁護士が編集する「遺留分をめぐる紛争事例解説集」が,平成20年10月14日,新日本法規出版株式会社より発行されました。数ある裁判例の中から厳選した事例について,当事者の関係や紛争の経緯がわかりやすく整理されているだけでなく,実務の指針となる解説が付されています。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.sn-hoki.co.jp/shop/product/book/detail_50663.html
□ TiE Entrepreneurial Summit 2008 のご案内 □
アントレプレナーシップのプロモーションを目的とする非営利のグローバル団体であるTiEは,本年12月16日から18日にかけてインドのバンガロールでTiE Entrepreneurial Summit 2008を開催します。
イベント概要はこちらに掲載しています。
https://www.clairlaw.jp/event/TES%20Conference%20Brochure%208%20.pdf
当事務所の弁護士も参加します。
興味がある方はinfo@clairlaw.jpまでご連絡ください。