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今回は,特定電子メール法の解説,レックス・ホールディングス事件の紹介,出版情報「遺留分をめぐる紛争事例解説集」とインド バンガロール見学旅行のご案内をお送りします。
1 【解 説】特定電子メール法(平成20年12月1日施行)
今回は,平成20年12月1日に施行される改正「特定電子メール送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」についてご紹介します。
従来の特定電子メール法では,広告又は宣伝を行うための手段として送信される電子メール(特定電子メール)について,表題部に「未承諾広告※」などと必要な事項を通知さえすれば,受信者の事前の同意がなくとも送信可能とされていました(オプトアウト方式)。
しかし,いわゆる迷惑メール対策のため,今回の改正では,特定電子メールを送信する送信者又は送信委託者(以下「送信者等」とします。)は,原則として受信者の事前の同意を取得することとなりました(オプトイン方式,法3条1項1号)。
同意があると言えるためには,「特定電子メールを送信すること」に関する同意が得られていることのほか,送信者の名称等が認識できるようになっていることが必要です。また,同意があったことを証する記録を,特定電子メールの送信をしないこととなった日から1ヶ月を経過する日まで保存しなければならないとされています(法3条2項)。
特定電子メールの送信に際して,事前の同意を必要としない例外は以下のとおりです。
【例外1】 自己の電子メールアドレスを送信者等に対し,原則として書面により通知した者(法3条1項2号,施行規則3条)
平成20年11月に総務省総合通信基盤局消費者行政課から出された「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)では,「名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した場合には,書面を提供した側にも,書面の通知を受けた者から電子メールの送信が行なわれることについての一定の予測可能性があるものと考えられる」としているため,名刺を受領した相手方に対して,名刺に記載された電子メールアドレスに特定電子メールを送信する場合には事前同意は不要です。
【例外2】 当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者(法3条1項3号)
ガイドラインでは,「取引関係にある者」について,「社会通念上,明示の拒否がなければ広告・宣伝メールが送付されることを許容していると認められるような社会的関係にある者」としています。また,「一度の購入のみでは必ずしも継続的な関係にあるとは言えないが,以後の購入等の取引が予定されている場合には,外形的に判断して取引関係にあると言える場合もある」とされています。
【例外3】 インターネットを利用して自己の電子メールアドレスを公衆が閲覧することができる状態に置いている団体又は営業を営む個人(法3条1項4号,施行規則4条)
ウェブサイト等でメールアドレスを公開している事業者に対して,広告・宣伝メールを送信することはビジネス慣習上も一定の範囲で認められているものと考えられるため,事前の同意がなくとも特定電子メールを送信することが許されるとされています。ただし,「特定電子メールお断り」などと,特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言が公表されている電子メールと併せて表示されている場合には,原則に戻って,特定電子メールを送信することに対する事前の同意が必要となります(施行規則4条)。また,「個人」の電子メールアドレスの場合には「営業を営む者に限る」とされている点にも注意が必要です。
さらに,事前同意を得る場合であっても,事前同意を不要とする上記例外のいずれかに該当して特定電子メールを送信する場合であっても,送信者等は,原則として,特定電子メールの送信をしないように求める旨の通知を受けたときは,その通知に示された意思に反して,特定電子メールを送信してはならないとされています(オプトアウト手続,法3条3項)。たとえ事前同意を得ている場合でもオプトアウト手続には応じなければならない点に注意が必要です。
なお,平成20年12月1日以前に特定電子メールを送信することについて同意をしている者や,送信者等に自己の電子メールアドレスを通知している者は,改正後の特定電子メール法に定める「送信することに同意する旨を送信者等に通知した者」(法3条1項2号)や「自己の電子メールアドレスを送信者等に対し通知した者」(法3条1項2号)とみなすこととされています(附則平成20年6月6日法律第54号第2条)。したがって,すでに事前同意を得ている場合や,従前から受領した名刺等の電子メールアドレスを利用して特定電子メールを送信してきた事業者が,今回の改正で,改めて同意等を取得し直す必要はありません。
ただし,あらかじめ同意等を取得している場合であっても,特定電子メールには,(1)当該送信者の氏名又は名称,(2)オプトアウトの通知ができる旨とオプトアウトの連絡先となる電子メールアドレス又はURL,(3)送信責任者の住所,(4)苦情や問合せ等を受け付けるための電話番号,電子メールアドレス又はURLを定められた場所に表示しなければなりません(法4条,施行規則8条)。
このように,平成20年12月1日以降は,電子メールを用いて宣伝や広告をする場合には,一定の注意が必要です。また,電子メールの取扱いに関しては,特定電子メール法のみならず,個人情報保護法への配慮も必要です。ご不安な場合には,是非,当事務所にご相談ください(鈴木 理晶)。
参考:特定電子メールの送信等に関するガイドライン 総務省総合通信基盤局 消費者行政課
http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/pdf/081114_4_bs1.pdf
2 【裁判例紹介】レックス・ホールディングス事件(東京高裁平成20年9月12日決定)
MBOに反対する少数株主を,全部取得条項付種類株式を用いてスクイーズ・アウトするに際し,会社側と反対株主との間で協議が整わない場合,反対株主は会社法172条に基づいて取得日における株式の公正な取得価格の算定を裁判所に申し立てることになります。
アドバンテッジ・パートナーズ(AP)がレックス・ホールディングスに対してバイアウトを行った事案について,裁判所は,以下のように判断しました(概要)。
(1) 判断の基準日は,全部取得条項付種類株式の取得の効力発生日とする。
(2) 「公正な価格」とは,「当該株式の客観的価値(A)」に加えて,強制的取得により失われる「今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額(B)」をも考慮する。
(3) 「当該株式の客観的価値(A)」は,バイアウトが公表された日の前日までの6ヶ月間の市場株価を単純平均して算定する。
(4) 「今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額(B)」は,当該企業の事業計画に照らし,その収益力や業績見通しを検討し,バイアウトによって実現できる価値とそうでない価値とその分配を考察したうえで,裁判所が裁量によって決する。
(5) 前記(5)(B)は,本件では,同時期の類似案件におけるTOBプレミアムの平均値を基礎として20%である。
本件では,既存大株主とAPとは,1株あたり23万円で株式を売買し,原審(東京地裁)はこれを公正価格と判断しましたが,東京高裁は,上記の検討を経て1株あたりの公正価格を33万6966円と決定しました。
私としては,この決定には,以下の理由で賛成しかねます。
まず,本件は,外部投資家主導型MBOですが,専門家チームによってデューデリジェンスが行われたうえで,それぞれ独立の立場にある当事者の交渉によって株価が決められた事案です。したがって,この売買価格には相当の経済的な合理性があるというべきです。
また,上記(A)について過去6ヶ月間の市場株価を平均する方法は,「取得日における」金額を算定しようとする会社法の趣旨にそぐいません。
更に,株価というものは将来予測を織り込んでいるものであり,上記(B)のうちバイアウトによらないで実現できる価値まで考慮すると既に織り込まれているものを二重に評価することになってしまいます。
本件は,レックスが業績下方修正を開示したことによって株価が低下した後にバイアウトを行っているので,高裁には少数株主を救済する意識があったのかもしれませんが,そのような判断はもちろん許されるべきではありません。
なお,本件は,最高裁への許可抗告がなされているので,最高裁が改めて判断することになりますが,事実関係については判断せず,高裁の判断を変更しない可能性が高そうです(古田)。
参考:会社法172条
3 お知らせ
□ 出版情報「遺留分をめぐる紛争事例解説集」 □
当事務所の星野雅紀弁護士が編集する「遺留分をめぐる紛争事例解説集」が,平成20年10月14日,新日本法規出版株式会社より発行されました。数ある裁判例の中から厳選した事例について,当事者の関係や紛争の経緯がわかりやすく整理されているだけでなく,実務の指針となる解説が付されています。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.sn-hoki.co.jp/shop/product/book/detail_50663.html
□ TiE Entrepreneurial Summit 2008 のご案内 □
アントレプレナーシップのプロモーションを目的とする非営利のグローバル団体であるTiEは,本年12月16日から18日にかけてインドのバンガロールでTiE Entrepreneurial Summit 2008を開催します。
イベント概要はこちらに掲載しています。
https://www.clairlaw.jp/event/TES%20Conference%20Brochure%208%20.pdf
当事務所の弁護士も参加します。
興味がある方はinfo@clairlaw.jpまでご連絡ください。