1 外国人の雇用のルールが新しくなりました
2 信託利用型従業員持株制度のメリット
3 特許・ノウハウライセンスの独禁法ガイドラインが改訂されました
1 外国人の雇用のルールが新しくなりました
外国人の雇用状況の改善と不法就労を防止する趣旨にもとづいて,平成19年10月1日より,事業主には,(1)外国人労働者の雇用管理の改善と再就職支援,及び(2)雇用状況の届出が義務化されました。
事業主は,雇用状況の届出義務(2)として,外国人を雇用する時及び離職させる時に,その外国人の在留資格等を確認し,厚生労働大臣(ハローワーク)に届け出なければならず,違反した場合には30万円以下の罰金が課されます(雇用対策法31条1項2号等)。
この新ルールについては,外国人の雇用が抑制されるとの懸念や,離職時に被用者である外国人が在留資格等の確認に協力しない場合の問題が指摘されていますが,事業主は,届出事項の確認手順や事業主内部の手続の体制整備を早急に行うべきです。
参照:雇用対策法31条1項2号等
厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin-koyou/index.html
2 信託利用型従業員持株制度のメリット
広島ガスが採用したという従業員持株制度が11月5日号の商事法務に掲載されていたのでご紹介します。
このインセンティブ・プランでは,会社を委託者,銀行を受託者,持株会に加入している従業員等を受託者として信託契約を締結します(持株信託)。銀行は,持株信託のために資金調達を行い,持株信託は,この資金を活用して,会社の自己株式を一括して取得します。そして,持株会は,持株信託から,その保有する株式を定期的に市場価格相当額で取得するのです。
本プランは,以下の3つのデメリットを回避できるとされています。
(1)持株会による株式の取得は,給与支払期日の直後という固定した期日になされる例が多く,不必要に高い価格で株式の買取りを迫られるおそれがありますが,本プランでは,持株信託が会社から一括して株式を取得し,これを定期的に持株会に譲渡していくので,持株会が株式を取得しても株式の市場価格に影響を与えることがなく,安定した価格での株式の取得が可能となります。
(2)持株会が市場から購入する株式数が多い場合,市場に流通する株式数が減少し,株価変動が不安定になることがありますが,本プランでは,会社の自己株式を活用するので,市場の流通株式の減少を回避できます。
(3)会社が自己株式を持株会に直接に提供する場合,会社は,株式提供の都度,インサイダー取引規制に抵触しないよう注意するという煩雑で困難な作業が伴いますが,本プランでは,自己株式が持株信託に一括譲渡されるため,かかる困難性を比較的容易に払拭できます。
3 特許・ノウハウライセンスの独禁法ガイドラインが改訂されました
公正取引委員会は,平成19年9月28日,「知的財産権の利用に関する独占禁止法上の指針」を発表しました。
政府や経済界における知的財産の保護と活用の動きの活発化を受け,従来の「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」(平成11年7月30日公表)を廃止し,新たな指針を制定したものです。
対象となる知的財産は「知的財産のうち技術に関するもの」とされ,著作権法によって保護されるプログラム著作物や意匠法によって保護される物品の形状に係る意匠もその対象となりました。
今回特に覚えておきたいのは,独禁法違反となるか否かの判断において競争減殺効果という分析手法が随所で用いられていることです。
そして,(1)製品市場におけるシェアの合計が20%以下の場合,(2)製品市場のシェアが算出できないか算出することが適切でないときは,対象となる技術以外に,事業活動に著しい支障を生じることなく利用可能な代替技術に権利を有する者が4以上存在する場合には,原則として競争減殺効果は軽微であり,独禁法違反となる可能性が低くなります。
参照:独占禁止法21条
「知的財産権の利用に関する独占禁止法上の指針」(公正取引委員会)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.september/07092803.pdf