今回は,去る7月1日に施行された改正著作権法の罰則強化と,最近公布された金融商品取引法制の政令・内閣府令についてご案内します。
1 著作権法の罰則強化
レコード店で音楽CDを万引きするのと,持っている音楽CDを知り合いのためにコピーしてあげるのでは,どちらが刑が重い?
2 金融商品取引法制の政令・内閣府令の公布
金融商品取引事業者としての登録が不要なプロ向けファンド業務の範囲など実務上重要な事項が明らかになりました。
1 著作権法の罰則強化
今回の著作権法の改正において,一般ユーザーに最も影響が大きいのは,罰則強化です。
最近の携帯電話に付いているカメラの有効画素数が数年前のデジタルカメラのそれを凌駕しているように,技術は急速に進歩しています。それにともなって不正コピーなどの知的財産権に対する権利侵害の機会と規模が増大しているため,特許法等の産業財産権法とともに,著作権の罰則も大幅に引き上げられました。
コピー(複製)を行うことは,著作権の最も基本的な権利内容であり,私的使用などの一定の例外を除いて,著作権者の許諾なしに行うことはできません。
音楽CDやDVDなどを知り合いのためにコピーすると複製権=著作権侵害となり,「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています(著作権法119条1項)。「これを併科する。」というのは,懲役と罰金を両方とも科することもできるという意味です。
レコード店で音楽CDを万引きする行為は,刑法の「窃取罪」にあたり,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が法定刑です。懲役「又は」罰金と規定されているので,懲役とともに罰金の支払を命ぜられることもありません。
何億円もの財産を盗み出すのは映画に出てくるような窃盗団でないと難しいかもしれませんが,デジタルコピー技術の進歩によって,海賊版を販売して多額の利益を得ることは容易になっています。このような環境の変化にルールである法律が対応したものといえるでしょう。
2 金融商品取引法制の政令・内閣府令の公布
金融商品取引法制に関する整備政令が去る平成19年8月3日に公布され、同内閣府令が同6から13日にかけて順次公布されました。これらの政令は金融商品取引法の未施行部分とともに来る9月30日施行される予定です。
政令の内容が決まるのにかなり時間がかかったという印象ですが,行政手続法という法律で政令を定める前にパブリックコメントの募集手続をしなければならず,本件については,個人および法人から4000件を超えるコメントがあり,そのレビュー対応に時間がかかったそうです。
この件を担当した金融庁の松尾室長が弁護士会で講演をされた際に,「パブコメはちゃんと見ており,ご指摘にしたがってかなりの修正を行った。解釈について疑義がある点については,パブコメも参考になると思います。」と話されていました。
さて,ベンチャーキャピタルにとっては、金融商品取引事業者としての登録不要で,届出制とされたプロ向けファンド業務(適格機関投資家特例業務・金商法63条)の範囲がどのようになるか大きな関心があったところですが,金商法施行令では、出資者に適格機関投資家が1名以上いることに加えて,それ以外の者が49名以下であるとされました(施行令17条の12第2項)。
49名というのは旧法の私募と異なり,勧誘対象者の人数ではなく,有価証券を引受けた者の人数です。
また,ファンドが他のファンドから出資を受ける場合(ファンド・オブ・ファンズ)の,同特例業務の適用関係については,(1)親ファンドが投資事業有限責任組合である場合,又は有限責任事業組合である場合,又は(2)親ファンドと子ファンドの運営者が同一である場合であって,親子両ファンドの出資者を合わせて適格機関投資家および49名以下の一般投資家であればよいとされています。
「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等」に対するパブリックコメントの結果等については、以下をご参考ください。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7/00.pdf