【講演日】 2003年9月4日
【講演概要】
1. 人権を企業の行動基準へという流れ
社会的責任投資(Socially Responsible Investment/主に年金基金などによるコンプライアンスの進んだ企業への選別投資)という観点の普及、「連邦量刑ガイドライン」のようにコンプライアンスプログラムを持つ企業の罰金を20分の1まで軽減することができる制度の存在、JISQ5001などにおいてデータ処理の委託先の選定基準として、プライバシーマーク認定事業所を指定するようになっていることなどから、企業活動には単なる法令遵守を超えて、人権への目配りが要請されるようになった。
2. グローバル・コンパクト、OECD企業行動指針
「グローバル・コンパクト」
各企業に対して、それぞれの影響力の及ぶ範囲内で、人権、労働基準、環境に関して、国際的に認められた規範を支持し、実践するよう要請するものです。その狙いは、各企業がそれぞれの事業を遂行する中で、これらの規範を遵守し、実践することを通じて、世界に積極的な変化をもたらすことです。
「OECD多国籍企業行動指針」
多国籍企業に対して政府が行う勧告であり、行動指針は、適用可能な法律と合致した、責任ある事業行動のための任意の原則及び基準を提供するものです。行動指針は、これら企業の活動と政府の政策との間の調和の確保、企業と企業が活動する社会との間の相互信頼の基礎の強化、外国投資環境の改善の支援、及び多国籍企業による持続可能な開発への貢献の強化を目的としています。行動指針はOECDの国際投資及び多国籍企業に関する宣言の一部であり、この宣言は、行動指針の他に、内国民待遇、企業に関する相反する要求、国際投資促進要因及び抑制要因に関する内容をその構成要素としています。
特徴的なのは、一般方針として、受入国政府の国際的義務及び公約に即しつつ、企業の活動によって影響を受ける人々の人種を尊重する(2項)、法律、行動指針又は企業の方針に違反する慣行について、経営陣又は適当な場合には所管官庁に善意の通報を行った従業員に対して、差別的又は懲戒的な行動をとることは慎む(9項)としている点です。
3. 企業の社会的責任の範囲と判断枠組みの変更
企業の社会的責任の守備範囲に関するアーチ・キャロルの分類の紹介
4. 倫理要綱
綱領の意義/宣言と行動基準の公開
綱領の内容/法令順守に関する規定/人権に関する規定/実施のための諸制度
綱領の実効性/資料収集と関連部署とのすり合わせ/広報/検証
5. 内部告発者保護
歴史的文脈では、公衆に対する危険の回避が目的とされてきたが、コンプライアンスプログラムに取り込まれるようになった。誰に対して報告する体制が適切か、社外への通報の位置づけ、制裁の不存在の確認などが問題となる。
6. マーケティング・リサーチに関連する法令
ハンドブックに掲載された個別法令、個人情報保護法、不正競争防止法、その他の知的財産権法の概略の紹介