クレア法律事務所が、今週発行した「あなたのスタートアップアイディアが聞き手の心を捕まえ、魅了するための7つの秘訣」" 7 best Tips for capturing and captivating an audience for your startup Idea."について、敷衍します。
この原稿のポイントは、
>「あなたの会社は、実際にあなたのライフストーリー と調和する必要があります。もし実際にあなたが自分の動機を自覚していなければ、あなたのライフストーリーと会社とを調和させることはできません。」- Adeo Ressi
ということです。
このことがとても重要であることは、スタートアップを手伝う経験が深まるにつれて実感できるようになりました。私は、累計200社以上のスタートアップの法律顧問となり、その成長過程を見てきましたが、このテーマはとても重要だと感じます。久しぶりにブログを書くのも、このポイントを強調しておきたいからです。
そもそも「スタートアップのビジネスプランがファウンダー(創業者)のライフストーリーと結びついている必要がある」というルールに対して、「そんなルールはないよ。」という人もいるかもしれません。
実際に、毛並の良いシリアル・アントレプレナーのチームが、彼らのライフストーリーとは無関係な分野だが成長性のあるマーケットを取に行って、短期間に成功を収めるケールもあります。
しかし、それは彼らには、彼ら自身が既に築いたブランド、ビジネスを成長させた経験、(彼らのおかげで得をしたことがあり、2匹目のドジョウを期待する人々の)ネットワーク、それまでのエクジットで築いた資産などのお膳立てがあるからです。このような事例は、一般的なベンチャースタートアップというよりも、リソースが豊富なコーポレートベンチャーに近いように思います。
これからスタートアップを始めようとする人が彼らの真似ようとするのは、無駄なことです。
それでは、なぜ、「スタートアップのビジネスプランはファウンダー(創業者)のライフストーリーと結びついている必要がある。」のでしょうか。
ひと言でいうと、「説得力」だと思います。それは、チームの仲間、投資家、取引先に対する説得力であり、自分自身に対する説得力です。
ビジネスプランは単なるプランであり、そこに価値はありません。それをやりきってこそ社会に価値をもたらし、その価値を生み出すビークルの価値を形づくります。しかし、スタートアップを軌道に乗せるには艱難辛苦が待ち受けています。ビジネスプランと恋に落ちて「イバラの道を見つけ出し、靴を脱ぎ棄てる(ブルーハーツ)」ことまではできても、裸足でイバラの道を歩き続けられなければ"やりきる"ことは難しい。
たとえば、「とても仲の良かった兄を難病で亡くした。兄には夢があり、努力家だった。でも大学にも行けなかった。兄の49日が終わったころ、NHKスペシャルで同じ難病に苦しむ人々が大勢いることを知って、この道を志し、研究を続けてきた。」
という人は、「家業が医療関係だった。」、「医療関係は安定した需要が見込めるから。」という人がドロップアウトするような局面でも、粘り強く取り組み続けるしかありません。或は、この人は、困難があってもそれを困難と感じないかもしれません。
私は、「アフリカのある部族が雨乞いをすると必ず雨が降るそうだ。」
「それは凄い!!」
「雨が降るまで雨乞いを止めないそうだ。」
という小咄が気に入っていますが、ベンチャーはとにかくやりきれるかどうかです。
ビジネスプランにマッチしたライフストーリーは、ファウンダー自身を説得し、山の頂上までのシェルパとなります。
私自身、弁護士業務の傍ら幾つかのビジネス(IT、外食、スマフォアプリ)を興したことがありました。
しかし、結局、いずれも1~2年程で止めてしまいました。やはり新規ビジネスは「2足の草鞋」でできるようなものでなく、全身全霊で取り組まなければならないものだと思います。
ビジネスプランがファウンダーのライフストーリーと結びついていると、創業チーム、投資家、取引先など、企業を取り巻くステークホルダーたちも、そのビジネスプランに対して安心感を持つことができます。
それは、上に述べたとおり、ビジネスプランとそれを貫徹することに必然を見やすいからです。
「ライフストーリーはブランドを作る」という言い方もできると思います。
ファウンダーインスティテュートでは、ショートピッチは、マドリブズ にまとめますが、マドリブズのシークレット・ソース(Seclet sauce)の部分では、ライフストーリーに言及することを勧めています。
余談になりますが、弁護士もときどき、依頼人から、「どうして弁護士になったのですか?」と聞かれます。依頼人もライフストーリーは気になるようです。
私の名刺には「ベンチャー企業支援」と書いてあるので、私は「弁護士なのに、どうしてベンチャー企業支援をしているのですか? (スタートアップはお金がないから儲からないでしょうに)」と聞かれます。
私は、
「私が生まれる2か月前に、父が勤務していた会社が倒産して、父は転職するか起業するか悩みました。新婚だし、子供も生まれるから生活費は稼がなければならないし、でも、他の会社に転職しても一生サラリーマンだし(??")
結局、父が創業した食品メーカーは零細ながら堅調に営業を続け、私は長男として、その事業を承継するものとして育ちました。しかし、大学を卒業するころになって、年の近い弟が家業を継ぎたいと言ったのです。弟はまじめで父の手伝いも良くしていました。私は、法学部の勉強が好きだったし、中小企業の大変さも実感していたので、中小企業の支援をする仕事をしようと思ったのです。中小企業のうち、継続的に弁護士に用があるのは、エクジットを目指すベンチャーなので、結局、ベンチャー支援が主な仕事になっています。」
と答えています。
私のライフストーリからすると、私は、新婚でもうすぐ子供が生まれるのに勤務先がつぶれてしまった状態でスタートアップするファウンダーがいたら、手弁当でも応援せざるを得ない、、、