昨日は、ファウンダーインスティテュート東京2015spring semester のセッション「知財と法務 Startup Legal and IP」を行いました。http://fi.co/curriculum
メンターは、「下町ロケット」のモデルとなった鮫島正洋弁護士、シリコンバレープラクティスの専門家のジョン佐々木外国法弁護士、と私です。
18:30から2時間30分にわたり、スタートアップが知っておくべきイシューについて質疑を交えたメンタリングを行いました。
手前みそで恐縮ですが、とてもためになるセッションになったと思います。参加したファウンダーからの質問も途切れることがありませんでした。
鮫島弁護士からは、お洒落に血圧を管理できる意匠に凝った血圧計を開発し、製品にタスコと命名して販売事業を開始したが、海外からTaskoという名前の模倣品が輸入されるようになったというケースを元に、スタートアップが知っておくべき商標登録や特許出願の基礎知識(拒絶査定される割合や包帯禁反言ルールなど)のお話がありました。
正確に類似商標を検索する方法、日本では特許出願後審査請求をしなければならなこと、どの段階で発明が公知になるか? 特許で守るかノウハウにするか?など議論は盛り上がりました。
ジョン佐々木氏からは、「Where should I incorporate?」というテーマで日米の比較をお話頂きました。
シリコンバレーのVCから投資を受けたいと考えて米国法人を作っても、ビジネスが余程優れていて、かつコミュニケーションが円滑にできないと、米国VCは投資しない(よいベンチャーは他にもあるので、わざわざ分かりずらい日本人チームに投資しない)とか、米国進出時には米国で訴訟を起こされるリスクが高いので、責任を切り分けるために米国法人を設立するべきである、日本法人を米国法人にすることは法的には可能だが、時価総額が大きくなってからこれを行おうとすると、創業者に対してキャピタルゲイン課税が生じることがある、Cash is King! など実務的なコメントを頂きました。
私は、いつも弁護士会やNEDOさんなどで行っているベンチャー法務のうち、両弁護士がコメントされた部分を端折って次ようようなポイントにつきコメントしました。
・ファイナンスやエクジットを予定する会社は商品のようなものなので、瑕疵があっては売れません。コンプライアンスは前提でDDでは詳細にレビューされます。あの手この手で残業代を払わないということは許されません。
・サービス内容が業法などに抵触してビジネスが頓挫することもあります。
・創業チーム間で、ドロップアウトする人の株を買い取れる合意が必要。そうしないと誰のために頑張っているのかわからなくなります。
・立派な人を雇うときは、過去の判例を踏まえ、特定ポストでの役割要件を明示して雇用契約を結び、ミスマッチだった場合に解雇しやすいようにします。
・資本政策は、あくまで事業計画中の収支予測が前提となるもので、資本政策から考えていくのは発想が違います。
・投資契約で気を付けてほしいこと。
・ストックオプションはモチベーション向上という本来の目的に沿った設計をします。
・契約書は、お金を払ってもらったり、しなくていいことを求められないための証拠です。
・契約書のチェックポイントとアウトソース契約の典型的なトラブル事例の原因と対策
・営業秘密として保護される要件
・個人情報やパーソナルデータの重要性の高まり