最近4時間5分という長い証人尋問をした。
証人尋問は、原告、被告の主張が出揃った後に、主張を裏付ける事実を確認するために行う。
証人には原告側の証人もあれば、被告側の証人もある。例えば、お金を貸したから返してほしいという事件だったとすると、貸した本人(原告)と、借りたとされる本人(被告)、お金を授受したときに手足となって動いた人、そのとき一緒にいた人などが証人となる。
原告側の証人なら、原告の弁護士が最初に話を聞いて、次に被告の弁護士が反対尋問をする。
証人尋問で、どのように質問をするかは結構難しい。
例えば、弁護士としては、「被告から、2か月後に大きな取引の売上が入金されるので、それまで一時的にお金を借りたいと言われました。」という証言が欲しいとする。
このときに、
弁護士:「あなたは、被告から、2か月後に大きな取引の売上が入金されるので、それまで一時的にお金を借りたいと言われたのですね。」
原告:「はい」
という問答にしてしまうと、聞いている裁判官は証言しているのは(ストーリーを語っているのは)弁護士だと思ってしまう。
弁護士:「あなたはどうして被告にお金を渡したのですか?」
原告:「被告から、2か月後に大きな取引の売上が入金されるので、それまで一時的にお金を借りたいと言われました。」
というやりとりにすると、裁判官はそうなのかと思う。
しかし!
弁護士:「あなたはどうして被告にお金を渡したのですか?」
という聞き方をした場合、原告がリハーサル通りに話してくれる保証はない。
この例のような、中心的な論点について、予想外の答えが返ってくることはあまりないが、間接的な論点について、証人が予想外のことを言いだすことはまれではないのだ。
ちなみに、最初の例のように Yes or No で答えることのできる質問を誘導尋問といい、主尋問でこれを弁護士がした場合、相手方の弁護士は異議を申し立て、質問を止めさせることができる。
この尋問のときに思ったことがもう一つある。
今回、当事務所は、証人尋問に弁護士3名が参加した。
当事務所の場合、通例証人尋問の場合、弁護士は2人参加する。
しかし、証人尋問では、弁護士は、証人に質問しながら、質問に関係のある証拠を示し、相手方代理人や裁判官の表情もウォッチしなければならない。
尋問する弁護士、証拠を示す弁護士、裁判官や相手方代理人の表情を確認し、証人に「安心して証言していいよ。」とニッコリ頷く弁護士と3名いると万全だと思う。
特に、裁判官や相手方代理人の表情をチェックするのは重要。
ある質問で、裁判官の表情が変わったら、
なぜそのポイントで裁判官の心が動いたのか?
裁判官は、誤解していないか?
そのポイントはこっちに有利なのかどうか?
裁判官が相手方に有利な情報であるという心証を形成しているとすれば、リカバリーするにはどんな質問を追加したらよいのか?
などを瞬時に考えて対応しなければ、場合によっては、不利な状況のまま、証人尋問は終了してしまう。
このように証人尋問は難しい。ベテラン弁護士でも、快心の証人尋問というのは滅多にできない所以だ。