昨日も、「新、株主総会ガイドライン」(東弁会社法部編・商事法務発行)の改訂ミーティングがあった。
テーマは、前回に引き続き、株主総会の議長の地位・権限などについてで、
「議長は、議案が議長の不信任案であったとしても、その地位を回避すること
(自主的に議長を退くこと)を要しないというべき」(東京地判平23.1.26)
といった論点について、実務書としてのガイドラインにどう反映するか、、、
某:「議長は議事運営にあたるだけだから、決議内容に特別利害関係がある者も
議長たりうるというべき。議長の不信任動議を当該議長自身が採決にかけた
からといって、そのこと自体で採決の公正さが失われることないというのは
以前からの考え方で(東京地裁平4.12.24)、特に異論ないですね。」
某:『でも、一般的な感覚からすると、特に賛否がある程度拮抗しているような状況
では「私がこのまま議長を続けることに賛成の方は拍手(或いは挙手)をお願い
します。」というのもなんですね。』
某:「議長は、社長がすると定款に書いてあるときに、公正性が疑われるのを嫌って、
議長が回避するのは定款違反にならんのですね?」
的な話をしていたら、
某先生:「規則101条3項8号で、取締役会議事録には議長がいたときは議長名を書け
と書いてあるから、逆に言うと、議長の選任は取締役会の成立要件ではありませんね。
株主総会では議長は必要でしたか?」
某:「そういえば、そもそも議長は不要でしたね。旧商法237条の4第1項には、
「総会ノ議長ハ定款ニ定メザリシトキハ総会ニ於テ之ヲ選任ス」とありましたが、
会社法にはないし、規則72条3項5項には、「議事録に株主総会の議長が存
するときは、議長の氏名を書け」と書いてあるし、立法担当者も「議長は存在し
なくても差し支えない。」と言ってます(千問の道標・488p)。
某:「JVで二人株主だった場合なんか、議長立てませんからね。」
某:「議長が進行役という位置づけで、そもそも総会決議の成立に不要なのであれば、
議長が誰であるべきかによって、総会決議に瑕疵があると考える必要ないのではないで
しょうか。議事進行や採決方法が不公正であればそれを争えばいいわけで。」
「こういうこと言うと、これまで無駄な議論したみたいになっちゃいますね、、、(@_@;)」 (注)
しかし、
ガイドラインは、基本的に、上場会社の議事手続のガイドラインなので、実務的に穏当
な表現で取り纏めることになった(すごい日本的!)。
この日は午後から強烈に冷え込み、都心でも夕方にかけて雪がちらついていたが、
それにもめげず、ボランティア精神と知的好奇心で、18時から弁護士会に集まり、
早く終わらせようともせずに、様々な資料をひっくり返す諸先生方には全く頭が下がる。
会社法改正のときに、法的には議長選任は要らなくなったと覚えたはずだが、
すっかり忘れていた。たまには、べたっーと基本書を読むべきだと改めて思った。
注: 議長である元社長が動議についての審議や採決を行うべきであるのに、
その資格がない者の主導で決議が行われたというケースで、株主総会決議は
不存在とした裁判例もあります。
(インスタイル事件・平成23年1月26日判決・商事法務1924号60頁)。