SNSへの非常識投稿によって企業の信用を失墜させるなど損害が生じるケースが問題となっています。
最近の事例では以下のようなものが報道されています。※ 産経新聞8月25日朝刊1面
・ 従業員がアイスクリームケースに寝そべった写真をface book に投稿 FC契約解除(ローソン高知鴨部店)
http://blog.livedoor.jp/news_keywordtoday/archives/29552615.html
・ 従業員が大量のバンズの上で寝転んでいる写真をツイッターに投稿 (バーガーキング)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1308/02/news135.html
・ 従業員が冷蔵庫の棚に寝転ぶ写真をツイッターに投稿 (ほっともっと豊川八幡店)
http://matome.naver.jp/odai/2137550405369319901
・ どん兵衛屋渋谷駅中点 http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/54579244.html
・ ミニストップ向日寺戸町店
http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/54571151.html
・ 丸源ラーメン門真店
http://inter-nater.doorblog.jp/archives/30369084.html
・ ステーキハウス・ブロンコビリー足立梅田店 (休業→閉店)
http://news.livedoor.com/article/detail/7930106/
・ ピザハット高井戸店
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1308/19/news050.html
同新聞の見出しは、「非常識写真 相次ぐツイッター投稿」 「ウケ狙い過激化 幼稚な悪ふざけ」
原稿には、「(投稿した従業員は)信用の低下や風評被害を理由に損害賠償を請求される可能性がある。・・・休業損害も請求の対象になるという。」とも記載されています。
ここで法律的に問題となるのが、従業員の不祥事で会社が損害を被った場合、会社は従業員に対して、どの範囲でその賠償を請求できるかです。
第1に、「会社が蒙った損害」は不法行為と相当因果関係があるものである必要があります。
不祥事がおきたことによって会社は様々な施策を行った場合でも、その全てが損害と認められるとは限りません。
上記の事件では、フランチャイズの継続を中止し、営業停止しているものもありますが、フランチャイズ契約の解除を争った場合、営業停止しなくても済んだかもしれません。
第2に、相当因果関係のある損害をどの程度求償できるかです。
この論点についてのリーディングケースとされる最高裁昭和51年07月08日判決は、石油等の輸送及び販売を業とする使用者が、業務上タンクローリーを運転中の被用者の惹起した自動車事故により、直接損害 を被り、かつ、第三者に対する損害賠償義務を履行したことに基づき損害を被つたという事案について、
「その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情」に照らし
「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができる。」という基準を示し、
「使用者が業務上車両を多数保有しながら対物賠償責任保険及び車両保険に加入せず、また、右事故は被用者が特命により臨時的に乗務中生じたものであり、被用者の勤務成績は普通以上である等判示の事実関 係のもとでは、使用者は、信義則上、右損害のうち四分の一を限度として、被用者に対し、賠償及び求償を請求しうるにすぎない。」としています。
この論旨は、会社が従業員を手足として利用して収益を上げているため、会社の求償権は公平の見地から制限されるという考え方に依拠しています。
上記の最高裁の考え方を基に、SNSへの非常識投稿のケースを検討すると、「加害行為の態様」は従業員が故意に行った行為なので非難されるべき要素ですが、職場が暑い、繁忙過ぎて業務が過酷、S NSの利用について会社側の教育が全くなされていない等の事情は、会社側の請求を制限する事情となります。
このような不祥事が頻発している以上、会社は、職場環境の整備、SNSガイドラインの策定と、周知徹底、適切な監査などを行うべきでしょう。
※ 最高裁昭和51年07月08日判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54209&hanreiKbn=02