会社法改正の動向

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東京弁護士会会社法部では、会社法改正についての法制審の議論をフォローしている。東京弁護士会の意見表明にあたり、会社法部としての意見を求めらるし、会社法部としては改正の方向性について重大な関心があるからだ。

8日は、近藤弁護士から、主に、親子会社に関する規律に関して少数株主の保護のために 「(不完全)親会社と子会社との利益相反取引などによって子会社に損害が生じた場合に、親会社が子会社に対して損害賠償責任を負う旨の規定を設けるべきかどうか?」 (賠償義務の内容は、当該取引が無かったと仮定したときに不利益を受けた額) の報告があった。

法制審の議論では、賛成派は、①支配株主と少数株主の間の利益衝突に関する一般的ルールが必要。②立法事実として親会社に子会社が搾取される事例がある。などと主張し、

反対派は、①前記立法事実はない。②税制上、親子間であっても不当な利益移転は制限されている。③子会社の株主は親会社のブランドによる利益を得ている。④親子会社の利害は原則として一致している。などと主張している。

現状では、A案 不完全親会社と子会社との利益相反取引などによって、当該取引が無かったと仮定したときに子会社が不利益を受けた場合、親会社が子会社に対して損害賠償責任を負う。 当該責任は、子会社の総株主の同意がなければ免除できない。 親会社の同義務は、会社法847条1項の責任追及の訴えの対象とする。親会社と同等の影響力を持つ自然人にも同様の責任を認める。というものと

B案 特に規定を設けない という2つの案が提案されている (法制審部会資料15)

私見としては、こういう規定を作ると、① 親子間の取引が適正であることのlogを残す為に、親子間の取引に常にデューデリが必要になり企業のコストが増加する、 ② 株主たる自然人にも責任を認めると株主有限責任の原則が持つ機能が阻害され、事業の創設に萎縮的効果を与える、 という懸念があること、 ③ このような規定がなくても法人格否認の法理や、親会社の取締役に対する責任追及など他の代替手段があることなどから、B案を支持したいと思う。

比較法的にみると、支配株主に一定の責任を認めるものも多いようであるが、導入には慎重であるべきではないか。

(古田利雄)  09 DEC2011

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古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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