各都道府県において、暴力団の助長を取引の面から防ごうという趣旨で、暴力団排除条例が制定されてきたが、東京都と沖縄県で10月に施行されたことによって、全自治体で施行されることになった。
実をいうと、私が弁護士になって就職した事務所は、当時注目を浴びた民事介入暴力対策について専門性がある事務所で、ボス弁は「民ボーの女」の監修を頼まれたりしていた。
私自身も、少なからず民暴事件を担当し、暴力団の賭博場の明け渡しや、不当要求の拒絶に関する仕事をした。
今回の暴力団排除条例で特筆するべきなのは、相手が暴力団であると知ったときは、企業や事業者は、そのような者を相手として取引を行ってはならないとしていることである。
たとえば、それが暴力団の襲名披露式であると気が付いたときは、ホテルや催事場は、宴会をさせる契約をしてはいけない。
あるいは、暴力団事務所であると知ったときは、改修工事などを請け負ってはいけない。これらは、いつも行っている商売と同じ料金やサービス品質で行っても「利益供与」にあたるとされている。
そして、悪質な利益供与にあたると認定されると、中止勧告を受け、それが公表されることもある。そうなると金融機関はそれ以後資金調達に応じないし、取引先も取引しずらくなる(取引しているとコンプラを問われる)ので結局倒産してしまうことになるのだ。
現在、不幸にも暴力団と取引をしているという場合、勧告を受ける前に公安委員会に報告すれば勧告を免除されるので、この制度を勧めたい。