仙台までの様子、宮城県の被災者支援の状況などについてレポートする。
2011.04.05 古田利雄
仙台までの様子
11時40分の東京発東北新幹線で那須塩原へ、バスで西那須野駅のトヨタレンタに行き、プリウスで東北道、西福島ICから相馬市までは約1時間、そこから海沿いで3400人が避難所にいる山元町等を走り常磐道経由で仙台に19時半に着いた。
意外にも東北道や国道6号の道路の状態は、普段とほとんど変わらない。
相馬市を通ったのは、「見捨てられた街 南相馬」(先週の週刊朝日の表紙の小見出し)付近はどうなっているのか見たかったから。しかし、外から見る限り、相馬市の駅や役場周辺は普通の地方都市が普段通りの営みをしているように見える。
相馬市から山元への国道6号線は、海側がニュース等で見るとおりの瓦礫の山で、山側はレストランや商店が普段通りに営業している。つまり、一本の道路の右側は「地獄」で、反対側には「日常」だ。なかなか頭で理解できない景色が延々と続いていく。
チェックイン
19時半にザ・ホテル仙台にチェックイン。ホテルは営業停止しているところが多いうえに、被災者、出張者、ボランティアなど需要が多いので確保が難しい。
昨日までに予約できたホテルは、風呂シャワー、暖房、毛布、食事全てなしで5,000円という条件だったが、今日Amexのコンシェルジュが「朝食以外あり」を探してくれた。
地元弁護士に状況を聞く
20時から仙台弁護士会の災害復興支援委員の宇都弁護士の事務所にお邪魔した。同弁護士は大学の後輩。
仙台では裁判所の業務は現在も停止しており、通常業務は進んでいない。しかし、弁護士会の電話相談、弁護士会の有志による法律相談、復興支援のための県内市町村や日弁連との調整で忙しいという。
過去の大震災の経験から、震災直後から法律相談の需要は大きく、法律相談の実施は被災者の精神的なケアと秩序維持に資することが分かっている。
仙台弁護士会では、10時から16時まで6回線を使って電話法律相談をしているが、電話は「鳴りっぱなし」だという。津波の被害のあった沿岸部では、携帯電話はもちろん固定電話もつながらないところが多い。そこには弁護士が出かけていって話を聞く必要がある。
どのビルも亀裂が入っている 宇都弁護士事務所ビル
他県からの支援への障害
我々としては、是非協力したい。しかし、そこには以下のような問題があることが分かった。
まず、インフラの問題。他県から来ても宿泊先と移動手段の確保が難しい。宮城県では、登録自動車の10%が廃車になり、新たにレンタカーを借りることも難しいという。
次に、受け入れ態勢の構築ができないこと。ここが大きなポイントだと思うが、行政=役所職員の疲弊は限界を超えているという。
行政が機能できないので、法律相談の段取りはおろか、支援物資を被災地に適切に調達することができない。法律相談を実施すべき「避難所」にしても、行政が管理している避難所だけでなく、地元や家を離れられず、近所が一つの家に集まって自主的な炊き出しでしのいでいる「行政に認識されていない避難所」が無数にあり、ここには支援物資は届かない。
役所職員の疲弊の構造
役所職員も市民と同様被災しているから死亡したり行方不明の者もいる。残った普段より少ない人員は、通常業務とはレベルの異なる業務量を処理しなければならない。住民のストレスが役所職員にぶつけられることもある。同僚を亡くして落ち込み、多量の業務に忙殺されていても、言い返すことはできない。
復興の実施には、行政が十分機能することが前提となる。行政上層部には、他県の職員やボランティア職員の積極的な受け入れ、他県の災害時に支援業務を行った経験を有する職員や、住民ケア経験者を急遽配転させるなど臨機の対応を望みたい。また、知事は、職員の負担を軽減する観点からも、災害救助法等に基づく権限を適宜行使すべきだ。疲弊した従業員からよいサービスは生まれない。サービス業の鉄則だ。
生活再建支援の問題
自宅が全壊ないし大規模半壊の罹災証明を受けた場合、300万円が支給されるうえ、学費の免除などが受けられるが、それに至らない場合、これらの支援が受けられない。受けられる場合とそうでない場合の開きが大きすぎるため、被災者間での不公平感が大きく、過去の事例ではコミュニティーそのものに深刻なダメージを与えたケースもあるという。
宇都弁護士の「支援策の実施は、公平とは何か?ということが正面から問われる。」という言葉が印象的だった。この問題は重い。全員が納得することは出来ないだろうが、納得できる人のパーセントをどれだけ上げられるか。配分者である国や行政は、その権限に見合った覚悟を持ち、全力であたらなければ悲惨なことになるだろう。
これからどうするか
上記のとおり、まずは、行政が十分機能できるように、マンパワーの補強や行政事務の民間による肩代わりなど、直接間接に360度から支援すべきだと思う。そこをきちっとしないと、正しい方向へスピード感を持って進まないのではないか。
自分が何をできるかということになると、法律相談はもちろん、瓦礫の撤去などのガテン系作業も意義があると思う。しかし、企業の創業/成長支援が本職であり、そこが役割として一番貢献できそうなので、被災した会社の再生や、被災者の組織化による事業の立ち上げによって被災地区に雇用を生み出す手伝いをしたいと思った。
宇都弁護士には2時間くらいつき合ってもらった。彼が所属する災害復興支援委員会では、昨年9月に奥尻島に津波被害の研究に行ったばかりだったという。
宇都先生ありがとう!!!