28日、抗がん剤を開発中の創薬ベンチャー canbas の株主総会があり、社外監査役として、出席した。
同社は、昨年9月に上場したが、今年6月に武田製薬との提携契約を解消し、株価も下落した。
提携解消に至った経緯などは、同社ホームページに詳しく記載されている。
株主総会では、株主のみなさんから、今後の業務提携の方針を始め、励ましを含む質問が上がったが、印象的だったのは、総会後の株主説明会だった。
河辺社長から、同社の抗がん剤の開発コンセプトが分かりやすく説明されたのが印象的だった。
細胞は、分裂するときにDNAに異常がないかを2回チェックして分裂するということが最近になってわかってきた。
がん細胞は、G1チェック(最初のチェック)は素通りし、G2段階でチェックする。反対に、正常細胞は異常のほとんどをG1でチェックがなされ、G2に引っかかるのはわずかだということもわかってきた。
そして、このG1G2のチェックが適切になされないと細胞は死んでしまう。
同社のCBP501は、G2チェックポイントを阻害するというもので、正常細胞には影響が少なく、がん細胞だけをターゲットにできるというものである。
私が関与している創薬ベンチャーには、canbas の他に、ナノキャリア
がある。
やはり抗がん剤を開発しているが、コンセプトは次のようなものである。
がんは急に大きくなっていくので、構造は雑で、掘建て小屋のようなものである。小屋(細胞や血管)には、正常細胞にはない大きな隙間が空いている。
そこで、抗がん剤を、正常細胞には挟まらないががん細胞には挟まる大きさのナノサイズのカプセルに包んで血中に流してやる。するとそれががん細胞にだけ辿りついて、そこだけを攻撃する。
夢のような話だが、実際に開発は日々進められている。
どちらの抗がん剤も、正常細胞へのダメージが少ないので、患者さんのQOLを下げないですむという大きな利点がある。
創薬ベンチャーは、多額の開発資金を必要としている。開発が成功すれば、患者やその家族など多くの人を救えるし、GDPにだって大きく貢献できる。
しかし、資金調達は難しい。その理由の一つが、ビジネスモデルの分かり辛さだと思う。いいものがあっても、伝えなければ分かってもらえない。できるだけ理解しやすい説明を対外的に発信し続けなければならないと思う。
古田