東京弁護士会会社法部では、7月から来年1月までの定例会で取締役会をテーマに研究する。
私は、トップバッターとして、弁護士会館502ABで「特別利害関係取締役」について発表を行った。
一般に、特別利害関係取締役というと、利益相反取引、競業行為、及び代表取締役の解任の場合などを想起されると思われるが、取締役が譲渡制限株式の譲渡の承認を求める場合や、新株発行の割当てを受ける場合なども特別利害関係取締役に該当することになり、考えはじめると様々なケースが問題となってくる。
個別の概要は、ニュースレターに記載したが、昨日の定例会で議論したいくつかを紹介すると
1 多くの裁判例は、特別利害関係取締役が議決権を行使した決議は無効であるとしているが、どのように瑕疵を治癒するか?
民法108条での議論を踏まえて、適正な構成の取締役会、あるいは株主総会で追認することによって当該瑕疵は治癒されると考える。
2 金融機関やファンドの代表取締役でない業務執行役員や使用人が、投資先会社を監督するために投資先会社の役員となっている場合、これらの者は、金融機関等の代表者の手足であるから、当該金融機関等が新株を引き受ける増資議案については、当該金融機関等の代表取締役が投資先会社の取締役であった場合と同様に、特別利害関係取締役となるというべきである。
3 会社が、取締役全員に対して、それぞれ住宅資金を貸し付けるような場合(利益相反取引)は、取締役毎に議案を分けて借入を受ける役員以外の役員によって承認決議を行えばよいが、取締役全員が新株を引き受けるようなMBOを行う場合、MBOは取締役毎に可分なスキームとはいえないから、前記住宅資金のケースのような決議方法は不適切であろうという見解が多数であった。
この場合、法的には、職務代行者を選任することが考えられるものの(民事保全法23条?、24条)、現実的ではない。
実務的には、株式を引き受けない取締役を残しておいて(或いは新たに選任して)、その取締役が決議を行うことが考えられよう。
また、この問題については、企業価値研究会(経済産業省)からも報告が出ているので参考にされたい。
4 ジョイント・ベンチャーで、会社と一方の株主との取引について、当該株主から派遣されている取締役は特別利害関係取締役に該当するが、定款で法369条2項の適用を排除することができるか?
という疑問について、肯定説と、定款で定められるという規定はないので、株主間契約によるしかないという見解に分かれた。
なお、河和部長からは、特別利害関係取締役を除くと定数未満となる場合であっても、
「取締役3名の株式会社の取締役会で、2名の取締役が特別利害関係を有する事項を決議する場合、取締役全員が出席した上で、利害関係を有しない取締役1名がなした決議は有効である」(法務省昭和60,3,15民4第1603号民事局第4課長回答)
という通達の紹介があった。
古田