1 まとめ
第1回から第4回をまとめると次のとおりです。
(1)パブリシティ権とは
「商品の販売等を促進する顧客吸引力を排他的に利用する権利」であり、人格的利益を保護するいわゆる肖像権とは異なり、財産的利益を保護するための権利である。
(2)パブリシティ権の侵害基準
パブリシティ権が侵害されるのは、
①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(例:ポスター、写真集、等)
②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、(例:カレンダー、Tシャツ、タオル、マグカップ、トートバッグ、等)
③肖像等を商品等の広告として使用するなど、(例:テレビ広告、電車の中吊り広告、等)
専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合である。
(3)パブリシティ権の主体
パブリシティ権の主体となれるのは「自然人」であり、会社やグループ等は主体とは認められないのが原則である。
(4)パブリシティ権の客体
パブリシティ権の客体は「肖像等」(例:顔、体型、サイン、署名、声、ペンネーム、芸名、等、)個人の人物識別情報であり、「モノ」はパブリシティ権の客体とは認められない。
(5)パブリシティ権の課題
パブリシティ権の課題としては、パブリシティ権は譲渡できるのか、また相続できるのかといった未解決の課題が数多くある。
2 終わりに
今回パブリシティ権の基本事項について説明してきましたが、皆様が感じている通り、パブリシティ権にはまだまだ不確定要素が多いです。そのことは、パブリシティ権が権利として確立してから日が浅く、裁判例の数も少なくパブリシティ権について定める法令もないのであるから、当然といえば当然であります。したがって、今後はパブリシティ権に関して裁判例の積み重ねや、新規の立法が必要となってくるでしょう。
SNSの発達により個人発信が当たり前なった現代においては、今後、パブリシティ権が絡んだ問題が増えていくことが予想されます。そしてその問題はなにも芸能人に限ったことではなく、我々一般人においても直面する可能性があるものです。我々がそのような問題に直面する際、パブリシティ権について全く無知なのと、少しであるが知っているとでは大きな差があると思います。そして、皆さまが今後パブリシティ権に関する問題に直面した時、本稿のことを思い出していただければ幸いです。
以上
【参考文献】
・「判解〔最判平成24年2月2日〕」『最高裁判所判例解説民事篇〈平成24年度上〉』(法曹会、2015年)
・判例タイムズNo.1367(2012年5月15日)
・内藤篤=田代貞之『パブリシティ権概説』(第3版2014年・木鐸社)
・田村善之『不正競争防止法概説』(第2版・2003年・有斐閣)