「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドライン」について

労働基準法

平成29年1月20日に,厚生労働省は,労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドラインを策定しました。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

もともと使用者は賃金支払の基礎となる労働時間を把握する責務がありますが、長時間労働や割増賃金の未払は依然として根絶されていないため、労働時間を適正に把握するためのガイドラインが使用者に向けて公表されたのです。

行政が策定したこの種のガイドラインは、直接的な法的拘束力を持つものではありませんが、使用者の労働時間把握義務が履行されているか否かが裁判所などで評価するにあたって、一般的に求められる水準の一つを示すものとして参酌されることが考えられます。

使用者が善管注意義務を果たしていると認められるには、同ガイドラインに即した業務運営を行うことが望ましいといえます。

〇 適用範囲

対象となる「事業場」は、 労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される 全ての事業場とされています。

対象となる「労働者」は、原則として全ての労働者です。(労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時 間に限る。)は除かれます。

〇 労働時間

本ガイドラインでは,「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」としてこれまでの裁判例と同じ判断をしています。

 また,以下についても「労働時間」にあたると列挙されています。

(1) 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付 けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

(2) 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、 労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

(3) 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の 指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

〇 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

本ガイドラインでは,労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として,以下の項目についての記載がされました。

(1)始業・終業時刻の確認及び記録をすること

使用者は、労働者の労働日ごとの始業・ 終 業時刻を確認し、これを記録する必要があります。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の方法

始業・終業時刻の確認及び記録は、(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録する、或いは、(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎 として確認し、適正に記録することが求められています。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

5項目にわたる条件が付されておりますが、基本的に自己申告制度をとらざるをえないのでないかぎり、不正な運用が起こりうるため、利用すべきではないと考えます。

(4)賃金台帳の適正な調製

(5)労働時間の記録に関する書類の保存

(6)労働時間を管理する者の職務

(7)労働時間等設定改善委員会等の活用

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