この事件は、外国語会話教室「NOVA」の一部の受講生らが、「NOVA」を運営していた株式会社ノヴァの役員であった被告らに対して、受講契約当時からノヴァの財政状態は破綻していたのにそれを隠匿して受講契約を締結したことや遵法経営義務違反行為があると主張して、未受講分の受講料相当額の損害賠償請求を行ったものです。
第一審である大阪地判平成24年6月7日は、受講生らの請求を全て棄却しました。
これに対して、第二審である大阪高判平成26年2月27日は、受講生らの請求の一部を認容しました。
大阪高裁も、第一審同様に、ノヴァが企業会計原則に違反した会計処理を行うことによりノヴァの財政状態を隠匿したとは認められないと判断しています。
しかしながら、ノヴァの元代表者については遵法経営義務違反があると判示しました。すなわち、大阪高裁は、「取締役は、その職務を遂行するに当たり、法令を遵守すべき義務を負っており(会社法355条)、会社を名宛人とし、会社がその業務を行うに際して遵守すべき規定について、会社が法令に違反することのないよう、当該規定を遵守することも取締役の義務に属すると解される」と判示した最判平成12年7月7日を引用し、ノヴァが平成14年頃に特定商取引法違反について東京都から改善指導を受けていたこと、その後も全国消費生活情報ネットワークシステムへの苦情件数が増加していたこと、平成19年4月3日には特定商取引法違反がある旨の最高裁判決が出されていること等に鑑みれば、元代表者は、東京都の指導を受けた後も、マニュアルなどにより違法行為を全社的に行わせていたことが認められ、違法である旨の最高裁判決が出るまで改めなかったのであるから、故意又は重過失により遵法経営義務を怠ったと認定しました。
元代表者以外の一部の役員についても、重大な過失による監視義務の懈怠があったと認定しました。
そして、受講生らの元代表者らに対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求が一部認められると結論付けました。
本件は、契約当事者である会社自体が破産していることから、その役員に対する責任追及を求めた裁判です。破産したこと自体について役員の損害賠償責任を追及できるものではないですが、役員の遵法経営義務違反という切り口で役員の責任を一部認めた裁判例として参考になるものと思い、ご紹介致します。