債権法改正研修を受けて

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平成26年5月23日,公益財団法人日弁連法務研究財団主催の債権法改正研修を受けました。講師は,いずれも著名な民法学者で,内田貴氏(法務省参与),道垣内弘人氏(東大教授),大村敦志氏(東大教授)です。

今は民法(債権法)改正作業の真っ最中で,中間試案を叩き台に要綱仮案作成審議中です。今年7月末には要綱仮案を策定し,来年1月か2月には法制審議会の答申を取りまとめ,平成27年度通常国会提出を目指しています。

今回の講義内容ですが,要綱仮案の審議にあたって重要論点とされている「約款」「保証」「消滅時効」「債権譲渡」をメインに行われました。

これらの論点の何が問題となっているかについて,簡単にご説明します。

1 約款について

「約款」という概念を民法に持ち込むこと(約款を規制すること)自体に強い抵抗を示す方々もいて,そもそも「約款」とは何かという点から問題となっています。現状では,「約款」という言葉ではなく,「定型条項」という用語を新設し,定義付けすることで,解決を図っていく方向で審議が進んでいます。

2 保証

保証は以前から問題になっていた,いわゆる経営者保証について審議が行われています。特に,主債務者が個人(個人事業主)のときに,その配偶者の保証も例外的に認めるかどうかという点(公正証書による保証契約の場合には問題なく認められることになると思います。)や保証契約締結時の説明義務を債権者に負わせるか主債務者に負わせるかについて争いがあります。

3 消滅時効

債権の消滅時効は原則10年という現行ルールですが,それとは別に,より短期の消滅時効を定めた規定が多数あります(例えば,医師の診療に関する債権は3年の消滅時効等。3年のもの,2年のもの,1年のものがあります。)。こういう短期の消滅時効期間がバラバラなのは分かりにくいということもあり,統合化・シンプル化することを目指しています。

他には,人身損害の賠償金債権(例えば,交通事故)については,消滅時効期間を5年に延ばす案(現行法では,損害及び加害者を知ったときから3年)なども検討されています。「時効の中断」という現行法の用語についても変更がなされる予定です。

4 債権譲渡

債権譲渡は,かなり専門的な内容が議論になっています。特に実務的に影響のある話では,中間試案では,金銭債権の譲渡の対抗要件については登記のみによるべきという案も出されていましたところ,要綱仮案では採用されない方向になりそうです。

他にも多々議論のある点があり,今回の研修も非常に勉強になりました。もっとも,今回の債権法の改正は,ある意味歴史的な大事業とも言えるもので,実務への影響も多大です。まだまだ議論は尽きない様子で,最終的にどういう形になるかについては,引き続き学んでいきたいと思っています(弁護士 鈴木俊)。

平成26年5月23日 

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