相続株式の二重課税の問題について

税務

今回は、相続株式の二重課税の問題について、調査してみました。

株式を譲渡すると、譲渡価額からその株式の取得費を控除した金額により所得税が算定されます(所法33条3項)。また、株式を相続すると、相続人は時価評価された金額により相続税を負担します(相法22条)。

しかし相続した株式を相続人が譲渡した場合、相続した株式の取得費は、被相続人の取得費をそのまま引き継ぐとされているため(所法60条1項)、相続人がたとえどれほど相続税を負担していたとしても、所得税の算定上は相続税を負担したことは考慮してもらえず、譲渡価額から被相続人の取得費を控除して所得税は算定されます。

このため、相続人は相続株式について、①譲渡時に譲渡価額から被相続人の取得費を控除した所得に対する所得税と、②相続時に時価評価された金額に対する相続税、の2つの税を重ねて負担することとなるため、二重課税の問題が考えられます。

この点、過去の最高裁判決によると、死亡後に遺族に対して定期的に支払われる年金受給権の事案では、相続時に課す相続税と、相続後の受け取る際に課す所得税については同一の経済的価値に対して課したものであり、二重課税であるため、所得税は負担しなくてよいと判断しました(最判H22.7.6)。

しかし、財務省は、この判決はあくまでも年金についてしか射程が及ばず、相続株式については二重課税の問題はないとの見解を示しているため、未だ、相続株式は相続税と所得税について重なって負担する部分があります(財務省「平成23年度税制改正の解説」)。

そこで、この問題は泣き寝入りかと思いきや、実は、現行の税制では、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」というものが設けられており、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡をした場合に限り、負担した相続税の一定の額を取得費に加算することを認めています(措法39、措令25の16、措規18の18)。

このため、相続した株式については、この特例を利用し、3年を経過する日までに譲渡することにより、相続税と所得税を多く負担させられずに済むということになるようです。

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