最近、市況が回復したためか、株式上場を目指す企業の話を聞く機会が増えたので、株式上場の準備と労務管理について、コメントさせて頂きたいと思います。
株式上場に関していうと労務管理は主に、
1.法令順守
2.適時開示
3.企業運営の安定性
に関して審査上のチェックを受けることとなります。
1.に関しては、残業時間の管理や社会保険の加入等の「あたり前のことをあたり前にやること」が大切なのですが、事業内容や人員等の変化が激しいベンチャー企業等にとっては、意識をしていても管理が漏れてしまうことはよくあります。しかも、労務管理は企業の運用体制に関する事項であるため、審査上で問題が発見された場合、審査期間へ影響を与えることもあります。上場を目指す企業さんは、法令順守の点で労務管理に不安があれば、法律事務所による法務DDにより問題点を事前に把握し、対処しておくとよいと思います。
2.については、有価証券届出書や事業報告等にて、企業の人員や勤続年数等の情報を常に開示できるようにしておく必要があります。この適時開示のためには、人事部等の部署が中心となり、従業員の入退社や昇給等の都度、情報を正確に把握しておくとともに、これらの情報は管理が複雑となることから、正確性を確保するために開示の際には上長や他部署のチェックを入れるようにしておくことが望まれます。
3.については、退職者が多い組織は、安定した企業運営がなされない可能性が高まるため、審査上問題とされます。そこで、特に管理職等の上位者の退職が多くならないように注意するとともに、退職者が出ても組織が安定的に運営できるように、担当者の複数人化や業務マニュアルの充実化等の対策が望まれるといえます。
ざっくりとなりますが、上場審査では、以上の他にも細かい論点もありますし、企業の業種業態や置かれている状況によってはさらに多様な論点も存在します。労務管理は運用体制として審査上は重要な項目ですので、気をつけても気をつけすぎるということはないと思いますので、なるべく早期に慎重な対応をされることをおすすめいたします。