先日の平成24年12月7日、東京地裁にて、米生命保険大手「アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー」(アリコ)は国に対して起こした課税処分約97億円の取消訴訟において勝訴しました。
この訴訟は、会計の専門家でないと分かりずらいですが、つまり、アリコ側は、外貨資産の為替換算をした際に生じた評価損を損金算入したところ(いわゆる税務上の「15%ルール」を適用)、国税局側としては、アリコがその評価損を軽減するようなリスクヘッジ取引を別途行っていたことから、その評価損はそのリスクヘッジ取引により相殺されるため、損金算入されるものではない(損失の繰延処理をするべき)と反論したものです。これについて、裁判所としては、国税局側の反論を認めなかったといえます。
この訴訟から私が感じたことは、本判決はアリコのみが対象であるようにみえるものの、海外取引が多い大企業等であれば、為替相場の変動から生じる損失(リスク)を回避するために、アリコと同様に金融派生商品を保有している企業も多く存在していると思います。そして、国税局側の指導等で、外貨資産の評価損を損金算入してこなかった企業も多数存在するでしょうし、その評価損も合計すると、多額なものと思います。
このため、今回の判決はアリコを対象としたものではありますが、他にも多くの企業も対象となり得る可能性があることから、この判決を受け、今後、リスクヘッジ取引が存在する場合における、会計や税務の実務に与える社会的影響も大きいものと感じました。
また、このような金融派生商品は、近年、複雑化しながら増加しているため、税法という法律レベルで対応していくことは困難な現状もあるように思えます。この判決を見て、今後も同様に金融派生商品を巡った税務訴訟も出てくるように感じました。