前回のブログの続き,
平成24年9月6日に成立した改正金融商品取引法に関する説明をしてみたいと思います。
改正内容は,
①「総合的な取引所」の実現に向けた制度整備
②店頭デリバティブ規制の整備
③課徴金制度の見直し
④インサイダー取引規制の見直し
というのが大きな分類で,前回は①と②に関するブログでしたので,今回は③について触れてみたいと思います。
③課徴金制度については,オリンパスの粉飾決算事件や海外ファンドによる不公正取引などが取り沙汰されていることを背景として,
a-「虚偽開示書類等の提出等に加担する行為に対する課徴金の適用」
b-「不公正取引に関する課徴金の対象拡大」
c-「課徴金調査における出頭命令権限の追加」
といった制度に見直しました。
ちなみに,オリンパスに対する課徴金は1億9181万9994円とする決定が出ています。
a-「虚偽開示書類等の提出等に加担する行為に対する課徴金の適用」ですが,
要するに,有価証券報告書や四半期報告書等の開示書類について虚偽記載がなされた場合には,従来ですと,発行会社に対して課徴金の支払いを命ずることはできましたが,外部協力者に対しては課徴金の支払いを命ずることはできませんでした。
そこで,今回の法改正では開示書類の虚偽記載に係る不正なスキームを助言したり,実行したりした外部協力者(法律上は「特定関与者」と呼びます。)に対しても課徴金を課すことができるようにしました(改正金商法172条の12)。
課徴金の額については内閣府令で定めるとなっておりますが,特定関与者が上記不正な行為に関して受け取った報酬や手数料などがベースとなってきます。
なお,虚偽開示書類等の提出行為は刑事罰の対象でもあり,外部協力者をその共犯として刑事上罰することは従来からは可能です。過去にも,虚偽記載の有価証券報告書提出に関与した公認会計士を共謀共同正犯として有罪(執行猶予付き)とした判例があります(最高裁平成22年5月31日決定)。
b-「不公正取引に関する課徴金の対象拡大」
についてですが,今までは,インサイダー取引・相場操縦などの不公正取引について,顧客(他人)の計算(「他人の計算」とは,簡単に言うと,「他人の勘定」という意味で,その経済的効果はその他人に帰属するということです。)で行った場合,「金融商品取引業者等」であれば課徴金の対象になっていましたが,金融商品取引業者等以外の者に関しては適用外でした。
今回の法改正では,課徴金の対象を金融商品取引業者等に限定しないことにしました(改正金商法173条~175条)。ですから,プロのみを相手にしているファンドや一般個人でも不公正取引をすれば,課徴金の対象になります。
なお,課徴金の額については内閣府令で定めることになっています。
c-「課徴金調査における出頭命令権限の追加」
について,課徴金の調査は証券取引等監視委員会が行っていますが,これまでの関係者等に対して質問する権限,意見・報告を徴する権限に加えて,出頭を求める権限を追加しました(改正金商法177条)。
ついでに,従来から,金商法177条の処分に違反して陳述をしなかった等の場合には20万円以下の罰金に処すると定めています(金商法205条の3第1項)。
なお,刑事告発に向けた調査の場合には,従来から,犯則嫌疑者に対する出頭命令権限が認められています(金商法210条1項)。
平成24年9月20日