為替デリバティブ契約と中小企業が受けた損害

オプション取引スワップ取引デリバティブ取引適合性原則

平成24年6月7日付けの朝日新聞一面によりますと,2011年度の金融ADRの窓口へのデリバティブ関連のあっせんの申立ては749件ということで,2010年度(172件)の4.3倍に増えたということでした。そして,銀行が損失の3~5割を負担するなど全体の7割で和解が成立しているとのことです。

当事務所にも相談がありますが,銀行が中小企業に為替デリバティブ商品を勧誘・販売し,その後,急激な円高により中小企業が毎月多額の損失を垂れ流しているようなケースが多々あります。

その結果,本業では利益が出ているのに,営業外で多額の損失が発生し,結果的に利益が残らず,赤字になってしまうような企業が出てきています。

もともと,為替デリバティブ商品は,為替リスクを回避(ヘッジ)する必要性(為替リスクヘッジニーズ)があるような場合に購入を勧誘するような商品なのですが,実際の銀行の営業を見ていますと,そのようなことは全く念頭にないままに勧誘が行われています。

しかも,融資と抱合せのような印象を受けるような形で話を持ってくるので,金融機関からの融資に頼っている中小企業からしてみれば,なおさら断りにくい状況下にあります。

また,絶対に儲かると勘違いさせたり,不十分な説明で勧誘するため,中小企業側も「親しい銀行が勧めるのだから安心だ」「損をしてもそれほどの金額にはならないだろう」「銀行の言うことは聞いた方が得だ」などと考えて安易に購入してしまったケースが多いのです

そして,多額の損失を抱えた中小企業は,破綻に追い込まれるケースもありますので,為替デリバティブ商品を購入させられた中小企業が負った損害は非常に深刻です。

かつては,このような場合に銀行と戦おうとすると,訴訟か調停による他なかったのですが(銀行は,法令上損失補填が禁止されているため,裁判外での話し合いで,損害賠償金を支払うなどをしないのです。),最近は金融ADRという制度があります。これにより短期に解決することも可能になりました。

また,銀行側にも,為替デリバティブ商品の売り方に問題があったという認識が出始めているため,早期和解に応じるケースが増えているのです。

毎月為替デリバティブで想定外の損失が発生しているような場合,

為替リスクをヘッジする必要性がなかったような場合,

業務とは関係のない通貨であったような場合(当職が扱ったケースでは,中国と取引があるというだけで,「中国元」関連のデリバティブ商品を買わされたのですが,実際には米ドルベースでの取引であったため,中国元は関係なかったというようなことがありました。),

デリバティブの取引金額が過大であったような場合

などは,まずは弁護士などにご相談されることをご検討ください。

2012年6月25日

Category:オプション取引 , スワップ取引 , デリバティブ取引 , 適合性原則

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