前回のブログでは,平成24年2月25日の投資信託販売にあたっての監督指針の改正についてご紹介しました。
その改正内容は,通貨選択型投資信託(ファンド)の勧誘ルール・説明義務を強化するような内容でした。そこで,「通貨選択型投資信託」とは一体どんなものなのかという点についてご紹介したいと思います。
今回の監督指針改正が通貨選択型投資信託だけをターゲットにしたものではないと思いますが,特に明記されたということにはそれなりの意味があるとは思います。
まず,通貨選択型の投資信託が結構人気のある商品ということが言えるとは思います。ここに「毎月分配型」という言葉もつくことも多いかと思いますが,毎月分配型については次回以降のブログでご紹介したいです。
①通貨選択型の投資信託(ファンド)と言っても,主要な投資対象資産は,新興国債券だったりするので,混乱しやすいのです。ですから,最初に確認すべきは,主要な投資対象資産が何なのかという点です。主要な対象が新興国債券,ハイ・イールド債だったりしますと,発行体が破綻してしまうような信用リスクや大幅な値下がりリスクを抱えるのですから,そこは慎重にすべきです。
「ハイ・イールド債」が何かというと,要するに,格付けは低いが,高利回りの債券で,元本割れのリスクをより抱えた債券と言えます。ジャンク債などと呼ぶこともあります。「yield」(利回り)が「high」(高い)ということですし,何となく名前もかっこいいのですが,リスクも高い商品であることに気をつけてください。
②次に,通貨の選択は顧客自身ができますから,例えば,豪ドル,南アフリカランド,ブラジルレアル,トルコリラなどの様々な通貨メニューから,自分で通貨を選択することになります。ここで選択する通貨と主要な投資対象資産の内容とは基本的に無関係です。単に,外国為替を使った投資だったりします(ただ,主要な投資対象資産の通貨とここで選択した通貨とが同一の場合には,為替を使ったプレミアムやリスクが出ないことになります。)。
ここでは,主要な投資対象資産の通貨(例えば,米ドル。ここは米ドルが多いです。)と選択した通貨(例えば,南アフリカランド。ここは顧客が選択できます。)との関係でのリスクが発生します。この例でいくと,米ドルの短期金利が南アフリカランドの短期金利よりも高くなってしまうと,損します。この点についてはどっちも外国の通貨となるので,購入時もわかりにくいですし,予測もしにくいところです。そういった意味では,自分で通貨を選択しつつも,判断の前提となる情報は販売会社から提供される情報に依存せざるを得ないのです。
③さらに,最後に,顧客が選択した通貨の対円レートが問題となってきます。結論だけをざっくばらんに言って,ここは円高になると顧客が損をします(為替差損)。現在の円の独歩高からすると,どの通貨を選択したにせよ,ここで損をしている方は多いのではないでしょうか。
通貨選択型の投資信託は,上記の3点でリスクを抱えるのですが,これを同時に判断するというのは結構大変なのです。それだけでも高度な判断能力が求められることになります。
販売会社が,こういった商品特性やリスクをきちんと理解するように説明すべきなのは当然であって,利回りばかりを強調して,銀行預金からの乗り換えなどを安易に勧誘しないように気をつけるべきなのです(本来は,金融庁から言われるまでもないことです。)。