平成24年2月15日,金融庁が投資信託の販売・勧誘等に関する監督指針の改正を公表しました。
改正内容の詳しい内容は省きますが,主な点として,通貨選択型投資信託については投資経験のない顧客への勧誘・販売時において商品特性やリスク特性を理解した旨の確認書を受け入れることや金融ADRについての説明をすること,投資信託の分配金の一部または全部が元本の一部払い戻しに相当する場合があることをわかりやすく説明することなどが盛り込まれました。
一般的な投資信託(ファンド)の仕組みについて少しご説明しますと,
販売自体は証券会社や銀行などが窓口となりますが,その先に投資信託委託会社という実質的な運用会社がいて,その会社がたくさんの投資家から集めた資金を運用することになります。一人の投資家は少額でも,その人数が多くなればそれなりの額になりますので,そのまとまった金額を,投資信託委託会社が運用してくれるわけです。
ちなみに,投資家から集められた資金は信託銀行に信託されていて,投資信託委託会社は信託銀行に信託財産の運用指図を行うという形になります。なので,投資信託委託会社は「委託者」,信託銀行は「受託者」という立場に立つことになります。
このように「信託」という制度を利用しているから,投資信託という名称になるのですね。
ついでに,「投資信託」という言葉を使わずに,「ファンド」という商品名をつけていることもありますが,同じものだとお考えください。
投資信託(ファンド)を販売するのが銀行や証券会社なので,ついつい販売会社が運用してくれるように勘違いしがちですが,販売会社は窓口だけです。
では,実際に運用を行う投資信託委託会社ってどんな会社なのかと思いますが,「アセットマネネジメント」とか「投信顧問」などの名称がつく会社が多いですね。
一応,投資信託委託会社は「投資のプロ」です。ただし,プロだからといって損を出さないとは限りません(ですから,販売会社がどこかではなくて,投信委託会社がどこなのかを気にした方が本当はいいのです。)。
それぞれの投資信託委託会社がどのような投資信託を運用し,それらがどのようなリスクを抱えているかは,株式会社格付投資情報センターの投信評価がけっこう参考になります。
ちなみに,この投信評価で付けられている「RC(リスククラス)」の意味合いですが,RC1が最もリスクが小さく,RC5が最もリスクが高いという評価になります。
投資信託は一般的にはリスクとリターンがトレードオフ関係にありますので,リスクが高ければリターンも大きいかもしれない,リスクが小さければリターンも小さいかもしれないという形ですね。
投資信託は,銀行のように安定的な商品(預金など)を取り扱っている金融機関が販売するので,その銀行に対する信頼感やイメージで,ついつい安全な商品だと思いがちです。しかし,実際には,運用するのは投資信託委託会社で,その投資信託によってはかなりなリスクを抱えている場合も多いのです。
それをわからないまま購入したとすれば,それは説明義務違反があったと言うべきでしょう。銀行には,投資信託は元本毀損のおそれがあり,預金などの元本保証商品とは全く性質の異なる商品であることを十分に説明する義務があるのです(銀行法12条の2参照)。
商品説明は不十分にしつつ,理解しましたという内容の書類だけ徴求すればいいかのようなやり方をする営業マンも見受けられますが,そのようなやり方では銀行や証券会社が損害賠償責任を負うのは当然と言えます。
また,預金の金利の低さをことさらに強調し,投資信託の利回りの良さを際立たせて,リスクに関する理解をさせないままに,投資信託を購入させてしまう手法もよく見られます。このような販売手法も,投資家に利回りというニンジンをぶら下げて,投資信託のリスクや商品特性へ注意が向かないようにする手法であり,説明義務違反に該当するような行為と言えます。
一般消費者・投資家が安心して投資できるような環境を整備することが求められます。
平成24年3月30日