商品先物取引(ガソリン,灯油)に関する裁判例

先物取引説明義務適合性原則

最近は原油の値動きが盛んですね。以前にもそんな時期がありました。そこで,その頃のガソリン,灯油の先物取引に関する裁判例(東京地裁平成20年6月30日判決)をご紹介します。

まず事案の概要ですが,

当時63歳の個人(原告)が,新日本商品株式会社(被告会社)に委託して,約5か月間にわたって,ガソリンや灯油などの商品先物取引を行い,結果として,約3700万円(手数料も含みます)ほど損失を出したというものです。

原告の主張内容としては,無差別電話勧誘,適合性原則違反,説明義務違反,断定的判断の提供,無断売買・実質的一任売買,新規委託者保護義務違反,無意味な反復売買,差玉向かい等の主張でしたが,

特筆すべき争点としては,被告会社との取引開始直前に原告と別会社との間で3か月以上にわたって石油の先物取引経験があったにもかかわらず,新規委託者保護義務違反が認められるかという点でした。

この点,東京地裁は,「商品先物取引は投機性が高い一方でその仕組みの理解や相場判断は一般人にとって容易ではなく,特に新規委託者は多額の損失を被る可能性があること,個々の取引は当該受託者の助言や判断によらざるを得ない側面があること等からすれば,受託者は,新規委託者に対して,商品先物取引に対する習熟期間を置いて,商品先物取引に適合するかどうか経過を観察し,新規委託者を保護する義務を負うと解される。」とした上で,

原告が別会社からの送付される書類等の見方を理解していないなど商品先物取引の仕組みについての理解を欠いており,商品先物取引に習熟していたとはいえず,被告会社の従業員もこれを認識していたといえるから,新規委託者保護義務の趣旨が妥当するとし,過大な取引の勧誘等があったとして,新規委託者保護義務違反の趣旨に違反すると判示しました。

もちろん,この件では,原告が本当に仕組みを理解していないことを示すような事情が多々あったし,原告と別会社との取引を解約させて自分と取引をさせたという被告会社担当者の行動なども窺われます。

結論としては,その他,適合性原則違反や説明義務違反なども認定し,過失割合4割とした上で,約2200万円の損害賠償請求を認めました。

現在,イラン情勢などの影響もあって,原油が高騰しています。先物取引全般に言えることですが,急騰や急落があった場合にはリスク幅も大きいものです,ご留意ください。

Category:先物取引 , 説明義務 , 適合性原則

TAGS:ガソリン , 先物 , 灯油

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