前回のブログでも少し書きましたが,為替デリバティブ契約は原則として中途解約ができないという契約内容でありつつも,販売会社(金融機関)が了解すれば,購入者が中途解約清算金を支払った上で,解約できるという形になっていることが一般的といえます。
この中途解約ができないという流動性リスクは,商品を具体的に理解する上で,非常に重要です。つまり,普通の上場株式取引であれば,値下がりを予想すれば,その時点で売却できる(損失を最小限に抑えることができる)と言えますが,中途解約ができないということは損失がどんどん拡大していくのを指をくわえて見ているしかないということです。
ただ,上記のとおり,例外的に,中途解約清算金を支払えば,合意解約して損切りもできるということになります。
それでは,中途解約清算金とはどれくらいの金額になるのでしょうか。
これが実際にはよくわからないのです。購入時に,顧客に中途解約清算金を理解できるように説明している金融機関は皆無かもしれません。結局のところ,単純な計算式で算出できるものではないので,事前に理解してもらうには,シュミレーションを詳細にするなどして,説明義務を十分に尽くすことが必要不可欠ということになります。
ただ,今までのブログでも書いていますとおり,流動性リスクというのは金融商品を購入する上で非常に重要な部分ですが,中途解約清算金がいくらくらいになるかを顧客がまったく想定できないのでは,清算金を支払って解約した方がいいのか,このまま保有し続けた方がいいのかを顧客では判断できないということになります。
購入を決める際には,「損失が発生した場合にはどうすればいいのか」というのは重要な要素です。それがわからないままに購入している(その点を十分に説明せずに販売する)ということ自体が重大な問題と言わざるを得ません。
この点,福岡高裁平成23年4月27日判決は「本件銀行説明においては,その清算金(損害填補金)の具体的算定方法ないし概算額については全く推測もできず,顧客がいわば購入した金利スワップ契約を続行すべきか,清算金を支払っても解約の申入れをすべきか,その解約制限に基づくリスクを評価して,購入(契約締結)の可否を決定することの判断材料を与えられなかったものである。」と判示していますが,非常にもっともな判断と評価できます。
中途解約清算金を巡っては,私自身も金融機関との間でかなりの交渉をしています。それなりの妥協点が見つかることも多いです。金融ADRという制度もあります。安易に請求された清算金を払う前に,弁護士に相談するのもよいかと思います。
平成24年2月9日