先物取引被害と消費者契約法②

先物取引消費者契約法

前回からの続きです。先物取引被害に適用される消費者契約法についてのブログです。

不利益事実の不告知

消費者契約法4条2項は,事業者が消費者に対して,重要事項やそれに関連する事項についてその消費者の利益となることを告げ,かつ,当該重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げなかった場合には,その消費者がそんな不利益はないと誤信し,契約をした場合にはその契約は取り消せると定めています。

「重要事項」がどのようなものをいうかについては,消費者契約法4条4項に記載があるのですが,ざっくばらんに言えば,一般人からして契約をするかどうかの判断を左右するような基本的な事項ですね。ただ,消費者契約法4条4項1号・2号が重要事項の内容について一定の限定をかけており,これが問題となった事案については過去のブログ(「金の先物取引」)でも少し紹介しました。

いわゆるセールストークが行き過ぎれば,顧客にとって有利な情報ばかりを強調する一方で,不利益となる情報については隠したくなるものですが,これでは先物取引の素人が正常な意思決定をしたということはできませんから,これで自己責任を問うことは許されないはずです。

不利益事実の不告知が認定された事案として さいたま地裁平成22年10月12日判決があります。

この事案は,業者の勧誘により年金暮らしの女性(先物取引や投資信託の経験あり)が1600万イラクディナールを合計800万円で購入したというもので(ちなみに,当時の1000万イラクディナールの価値は約82万円程度だったようです。),

業者がイラクディナールの価値が下がる可能性もあることや当時1イラクディナールが10銭以下であることなど,顧客に不利益となる事実を告げずに勧誘したと認定し,この行為について消費者契約法4条2項を適用し,この契約の取り消しが認められるとしました。 

不実告知> 

 これは,不利益事実の不告知とそっくりで,重要事項について事実と異なることを告げることです(消費者契約法4条1項1号)。先物取引なのに「元本保証です」とかはまさにこれですね。

嘘をついて契約させるような行為が違法なことは言うまでもないのですが,そのことを定めたのがこの規定ということになります。

ちなみに,顧客に対して虚偽のことを告げてはならないというのは金融商品取引法38条1号においても規定されており,金融商品取引法198条の6第2号によれば,このような行為をした場合には,1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金,またはこれを併科するとされています。 

 

 

2011年10月25日

Category:先物取引 , 消費者契約法

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