今回は未公開株について少しご説明いたします。
株の売買と言いますと,上場されている株式の取引を想定しますが,理屈上は上場していない未公開株であっても取引の対象になります。ただ,実際には,未公開株の評価自体が難しく,発行会社に関する情報も入手しにくく,流通性がないものですので,発行会社と無関係の人がこれを買うというのはまずあり得ません。
ところが,いきなり,知らない人から,「上場間近で,必ずもうかります」などという文言で未公開株を買うよう求めてくることがあります。こういったケースは未公開株のことが多いようですが,「社債」の場合も同じです。今回紹介する裁判例はそのようなケースで,裁判所は「詐欺的商法であることが推認される」と判断しています。
事案は,X(高齢の男性)はY社の株式2株(1株40万円)を購入するよう勧誘されました。その際,Y社は,自社は近々上場する予定であること,上場時純利益目標が10億円であることなどを説明していました。
そして,裁判所(東京地判平成23年2月3日)は,Y社の株式はいわゆるグリーンシート銘柄ではなく,正当な価格に関する情報を得にくい未公開株式であるところ,約1年後には認知症を発症しているXにおいて積極的に購入したことをうかがわせる事情がないこと,この株式を購入する動機を生じるような人的な関係があったことをうかがわせる事情がないこと,結果として情報を入手する能力のないXに対しその価値を大きく上回る価格で譲渡していることを総合すれば,顧客がこれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺的商法であることが推認されるとし,Xの請求を認めました。
そもそも未公開株の勧誘・販売においても,それを営業として行う場合には金融商品取引業の登録が必要です(金融商品取引法29条)。上記裁判例のように自社発行の未公開株購入の勧誘を受ける場合もありますが,まともな会社であればいきなり不特定の第三者に自社株を売りつけることはまず考えられません。未公開株の購入を勧められた場合にはくれぐれもご注意ください。
なお,金融商品取引業の登録を受けているかどうかは金融庁のHPで確認できます。
http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kinyushohin.pdf
http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/chuukai.pdf
次回には上記裁判例で指摘のある「グリーンシート銘柄」について紹介する予定です。
平成23年9月8日