前回に引き続き、平成23年10月1日に施行される予定の東京都暴力団排除条例(以下「本条例」といいます。)より、不動産の譲渡等における措置を定めた第19条及び不動産の譲渡等の代理又は媒介における措置を定めた第20条をご紹介します。
本条例19条(不動産の譲渡等における措置)
1 都内に所在する不動産(以下「不動産」という。)の譲渡又は貸付け(地上権の設定を含む。以下「譲渡等」という。)をする者は、当該譲渡等に係る契約を締結するに当たり、当該契約の相手方に対し、当該不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めるものとする。
2 不動産の譲渡等をする者は、当該譲渡等に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
① 当該不動産を暴力団事務所の用に供し、又は第三者をして暴力団事務所の用に供させてはならないこと。
② 当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明した場合には、当該不動産の譲渡等をした者は、催告することなく当該不動産の譲渡等に係る契約を解除し、又は当該不動産の買い戻しをすることができること。
本条例20条(不動産の譲渡等の代理又は媒介における措置)
1 不動産の譲渡等の代理又は媒介をする者は、自己が譲渡等の代理又は媒介をする不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることの情を知って、当該不動産の譲渡等に係る代理又は媒介をしないよう努めるものとする。
2 不動産の譲渡等の代理又は媒介をする者は、当該譲渡等をする者に対し、前条の規定の遵守に関し助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第19条は、事業者か否かにかかわらず、都内に所在する不動産を譲渡・賃貸等しようとする者に対し、契約の相手方が当該不動産を暴力団事務所として使用するものではないことを確認する義務を課し(第1項)、書面で契約する場合には、「当該不動産を暴力団事務所として使用し又は第三者をしてかかる用途に使用させてはならない」旨及び「当該不動産が暴力団事務所として使用されていることが判明した場合、当該不動産の譲渡人等により、当該契約の無催告解除又は当該不動産の買い戻しをすることができる」旨の条項を入れる義務を課すものです(第2項)。
第20条は、不動産の譲渡又は貸付の代理又は媒介を行う者に対し、当該不動産が暴力団事務所として使用されることを知って代理又は媒介を行わない義務を課し(第1項)、当該不動産の譲渡人等に対して本条例19条の遵守に関し適切な助言等を行う義務を課すものです(第2項)。
第18条と同様、第19条と第20条も努力義務ですので、これに違反しても罰則はないものの、対応を怠って企業に損害を与えた場合、取締役には善管注意義務違反や忠実義務違反を問われる可能性があります。また、この義務を履行することで反社会的勢力とのトラブルを回避するという効果も期待できます。不動産の売買・賃貸借等に携わる方は、早急に契約条項の見直しをされることをお勧めします。
なお、国土交通省のウェブサイトにおいて、不動産流通4団体による反社会的勢力の排除のためのモデル条項が公表されていますのであわせてご参照ください。
参考:警視庁HP「東京都暴力団排除条例」の制定について」
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sotai/haijo_seitei.htm
参考:国土交通省HP「不動産流通4団体による、不動産取引からの暴力団等反社会的勢力の排除に向けた取組について(暴力団等反社会的勢力の排除のためのモデル条項の導入)」
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo16_hh_000056.html